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第170話

「今日は、大ちゃんとお礼したかったからお食事会開いたの。それと、伊織がヨシ君の惚気話するから、会って見たかったのよ。でも、ごめんなさい。伊織から聞いたわ。変な誤解させちゃったみたいで……。だから、お礼とお詫びも兼ねた食事会になっちゃった。ヨシ君、本当にごめんなさい。辛い思いさせちゃって」 軽く頭を下げて謝る沙織さんを見て矢島さんも 「すみませんでした」 2人に謝られて、沙織さんの気遣いと優しさが伝わり、慌てて話す。 「沙織さんと矢島さんの所為ではありませんよ。俺が伊織さんに聞けば良かったんです。俺が悪かったんですから、気にしないで下さい」 「大ちゃん、性格も凄く素直で健気で可愛い~。どうしよう、家に持って帰りたぃ~」 「それは止めましょうね。成宮さんが怒ります」 「んもう、冗談よ、冗談。睨まないでよぉ。大ちゃん、伊織が恐い~」 沙織さんと矢島さんの漫才のような掛合いに、ついつい笑ってしまう。 ふふふふ「仲良いんですね」 俺が笑うと2人はジッと俺を見て 「きゃあ~、大ちゃん見た?可愛い、凄く可愛い~」 「はい、しっかり見ました。俺も同感です。目を奪われました、ノンケの俺でもクラッときました」はははは 「ダメよぉ~、大ちゃん。私と言う者がいるんだからぁ。でも、解るわ。私もクラッときたもん」 「ですよねぇ」はははは 「おい、いい加減にしろ。ミキを見るな、触るな。」 「やぁね~、男の嫉妬は見苦しいわよ」 「見苦しくって結構だ。これもミキ限定だ」 「ね、聞いた?大ちゃん、惚気と開き直り」 「はい、聞きました。成宮さんに負けない位、俺も沙織さんの事を想ってますから」 沙織さんも微笑んで、2人イチャイチャし始めた。 沙織さん、幸せそうで良かった。 とても綺麗な人なのに飾らず面白い人で、矢島さんも爽やかな青年って感じで、しっかりしてそうだ。 お似合いの2人だな。 そんな風に考えてると沙織さんが、俺の側に来て 「ヨシ君、食べてる?飲んでる?」 「はい、どれも美味しいです」 「そう、良かったわ。この間、電話掛けた時に途中から2人で、私を放っといてイチャイチャし始めたから驚いたわ」 笑って話されたが俺は思い出して、顔から火が出る程恥ずかしくなって、チラッと伊織さんを見ると矢島さんと話しをしていた。 恥ずかしくって頬に手を当て 「沙織さん、お願いですから忘れて下さい」 「や~ん、照れてる顔も可愛いぃ。けど、忘れられ無いわ。だって、あの伊織があんな事するなんて衝撃的だったもの」 「?」 「伊織って、家庭環境があまり良く無い所為で、物心ついた時から人とは割り切った付き合いしかしないし、境界線があるって言うのかな。自分の懐には誰も入れないし、相手にも深く関わら無かったのよ。だから、あんなに自分の全てを曝け出して、イチャイチャしてるのなんか信じられなかったわ」 「家庭の事情は聞きました。それで女の人がダメな事も人との付き合い方も……」 「そう。伊織が話したのね」 コクンと頷く。 「今回の発端は父が私にお見合いの話を持ってきたのが、元々の原因なの。初めはお見合いなんてしないって突っ撥ねてたんだけど、パパもシツコクって。それで付き合ってる人がいるから会ってって話すと、今度は意気地が無くなったのか?時間稼ぎに、伊織に先に会って貰って伊織の評価で会うか会わないか決めるって言い出したの。伊織にとっても飛んだ災難だったわ」 「そうですか。専務も会っちゃうと認め無い訳にはいかないと、苦肉の策に出たんですね」 「ありがとう。優しいのね、ヨシ君。それで、居ても経っても居れず直ぐに、伊織と食事がてら相談して大ちゃんに会って貰う日を決めたり、久しぶりだったから昔話したりしたの。で、土曜に大ちゃんと3人でホテルのレストランで食事して、大ちゃんの人柄.会社状況を伊織に見て貰ったのよ」 「矢島さん、会社経営してるんですよね。若いのに社長ですか?凄いですね」 「大学時代から、将来は企業したいって頑張ってたからね。私も卒業してOLしてたけど、本格的に会社経営するならって、今は手伝って仕事一緒にしてるのよ。お陰様で軌道に乗りつつあるわ。大ちゃんの努力家と行動力のある所が好きなの」 矢島さんのこと話す時に、少し照れて嬉しそうに話す沙織さんが少女みたいで可愛いかった。 「あっ、話が逸れたわ。それで、伊織が何とかパパに話してくれたみたいで会ってもいいって言ってくれてどんな話したか聞きたかったからと、お礼も兼ねて会社帰りに食事に誘ったの。その時も、ヨシ君の惚気が凄くって、あの伊織をこんなにベタ惚れにさせる人って、どんな人か会って見たかったの。そしたら、あの電話でしょ?伊織が幸せそうに笑ってるんだもん」 事の真相を事細かく話してくれた沙織さん。 俺と伊織さんの為に話してくれたんだと解った。 「沙織さん、ありがとうございます。話してくれて。俺、今回の事で伊織さんの1番の幸せを考えて、別れた方が良いと頭では考えたのも本当です。でも、離れられ無い.側に居たいと心ではずっと思ってました。これからは、何があっても離れません」 「良かったわ。ヨシ君みたいな優しい子で、伊織の事お願いね。それと私もお友達になって、ヨシ君を見てるだけで癒されるのよぉ」 「はい、俺こそお願いします」 また、伊織さんの知り合いと親しくなれたと喜びを感じた。

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