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第172話

「伊織、ごめん。そんなに飲んで無いと思ってたけど……。話してたら寝ちゃって、可愛いから起こさないでいたの。ほんとに可愛い寝顔ね」 「ほんと天使みたいっすね」 「見るな! 寝顔を見ていいのは、俺だけだ!」 「やぁね~。ケチ! 独占欲が強いのね」 「何とでも。それもミキ限定だ! たぶん、ここ来る前、相当緊張してたからな。緊張が解けて安心して酔いが回ったんだろう」 愛おしいと頭を撫で話す。 「伊織のそんな顔が見れるなんてね。今日、来た甲斐があるわ」 「それより、そろそろお開きだろ?」 「そうね」 ミキを起こすかと撫でていた手で、肩を軽く揺さぶる 「ミキ、おいミキ。起きろ」 寝ぼけたミキの可愛い天然振りが炸裂する。 「…伊織しゃん?…ねむ……だっこ」 そう言って両手を出す。 どうやら、俺の部屋と勘違いしてるらしい。 首に手を回させ横抱きにし、俺の膝の上で座らせ抱きしめる。 俺の胸に顔を埋めてくる甘えモ-ドのミキが愛おしい。 「大ちゃん、見た.見た?萌えよ萌え。可愛いすぎぃ~だっこだってぇ~」 「沙織さん興奮し過ぎですよ。見ました。俺も今のは萌えです」 ミキを起こさない様に、ヒソヒソ話す2人の会話は俺にしっかり聞こえた。 「見るな! 忘れろ!」 「そんな大きい声出したら、起きるわよ」 「……解った。10分だけ寝かせてやってくれ」 「何分でもどうぞ。伊織、良かったわね。ヨシ君と出会って」 「ん、幸せだ」 「本当に、ヨシ君と出会って無かったら、あんたなんて今だにロクな者じゃないわよ。ヨシ君のお陰ね」 「確かにな」 「ん~」 頭を押し付けてくるミキの姿を見て 「あら、あら。伊織に体預けて、安心してるのね」 「本当に、成宮さんを信頼してるんですね」 2人の話を聞いて愛しさが増すが、こんなミキの可愛い姿を見せて溜まるか。 「ほら、ミキ。そろそろ起きろ、帰るぞ」 少しは酔いが覚めたかと思い、帰る為に耳元で囁く。 「ん~……帰る…の?……お家」 目を擦りながら周りを見渡して、自分の状況に慌てて 「えっ、えっ。伊織さん! 降ろして.降ろして」 バタバタ暴れるミキに 「自分からだっこしてって、言ったんだからな」 うん、うん、と頷く沙織と矢島君を見て、俺の言った事が本当だと解って恥ずかしくなったのか、俺の胸にまた赤らめた顔を埋める。 「……や、忘れて下さい。お願いします」 あんまりの可愛いさに、沙織と矢島君は声を揃え 「忘れたわ」「何も見てません」 その声を聞いて、俺の胸元からチロッと顔を出した。 それを見て、沙織が興奮する。 「大ちゃん、あの上目遣い可愛い~。萌えよ.萌え」 「沙織さん、今のはヤバいです。俺も萌えです」 また、勝手な事を言い合う2人に呆れた。 それから、ミキが落ち着いたのを見計らって、沙織が呼んでくれたタクシ-に乗り、沙織達とは店の前で分かれた。 帰りのタクシ-の中では上機嫌で 「沙織さんって、綺麗な人なのに気さくで話し易いですね。矢島さんは俺と同じ位なのにしっかりしていますね」 2人と打ち解けて嬉しいのか?楽しそうに話すミキに「そうだな」と相槌をうって聞いていたが、部屋に入っても2人の話ばかりで、俺は臍を曲げた。 「ミキ、今日泊まれよ。明日の朝、車だすから」 「はい、伊織さんが良ければ」 「よし、決まりだ。疲れただろう?風呂に入ってゆっくりしよう」 「はい」 俺の魂胆も解らず、素直に返事をするミキ。 風呂場で1回。 「可愛い寝顔を見せた」「2人の事より俺を構え」と言い掛かりを付けてベットで1回。 それでも、明日は仕事だとミキの体を考えて、手加減したのは言うまでも無い。 手加減のお陰か意識のあるミキに拗ねられたが 「寂しかったんだ」「ミキ不足だった」 半分本音.半分言い訳だったが、素直なミキは俺の頬を撫で 「伊織さん、俺はいつも伊織さんが1番です。離れません、側に居させて下さい」 ミキは俺のご機嫌を取るのが上手い。 そんな嬉しい言葉を素直に話すミキが愛しい。 もう1回……は無理か。 ギュッと抱きしめる事で我慢した。

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