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第187話
「実は……祖母に貰ったんです」
祖母?おばあさんから?
祖母と聞いて安心した。
「祖父の形見です。祖母が亡くなる前に、おじいちゃんの腕時計だけど、物が良いから高校生になったら、大切に使いなさいと貰ったんです」
「そうか、そんなに前から大切に使ってるのか。確かに、年代物だが良い品だな。おじいさんは、ミキと一緒でお洒落なんだな」
「そうですか?修理に出しては大事に使ってたんですけど、次に壊れたりしたら、もう部品が無いって言われて……。でも、最後まで使いたいから」
「その時計は別格だ。他の時計と一緒になんて出来無いに決まってるだろ。大事に使ってやれ、おじいさんも喜ぶ」
「はい、ありがとうございます」
俺の話しに嬉しそうに返事をしていたな。
おやじとミキを見て、そんな事を思い出していた。
「おり…伊織ってば。何、見惚れてんの」
沙織に呼ばれてるのに、気付かなかった。
「ああ、悪い。何だ?」
沙織もミキの方を見て
「本当に良い子ね、ヨシ君って。綺麗で性格も良くって、なのに可愛いんだから。今回もあんたの気持ちを優先に考えてあげたんでしょ?」
「ま、そうなるか」
「ったく。あんたには、ほんと勿体無い位よ」
「そんなことありませんよ。成宮さんと2人並ぶと圧巻です。美男美女って言うか」
「そうか、ありがとう矢島君。じゃあ、ミキの事をヨシ君って呼ぶのを許すよ」
「ええ~、すみません。沙織さんが呼ぶから、つい……」
「良いのよ、大ちゃん。名前呼ぶのに許可いるなんてどんだけ許容範囲が狭いのよ!」
「はっ! 他はどうでも良いが、ミキ限定だっつうの」
「わっ! 凄え愛してんですね。感動します」
「まあな。矢島君も素直で良い奴だな、沙織には勿体無い」
仕返しとばかりに話す。
「何、言ってんの! 大ちゃんの方が私にメロメロなんだから」
「その通りです!」
「凄え~、自信と即答かよ」
3人で笑って話してると、ミキが戻って来て
「楽しそうですね」
仲間に入れて欲しいって顔をして話す。
「今ね。大ちゃんが私にメロメロって話してたのよ」
「解ります! 沙織さん、綺麗なのに気さくで優しいから、そんな所が好きなんですよね。矢島さん」
「ヨシ君、その通り。僕には高嶺の花です」
「じゃあ、萎れるまで飾っとけ」
「伊織さん! 女性に、なんて事言うですか?」
「そぉよね。ヨシ君、さっきから伊織が虐めるのよ」
ミキの肩に顔を埋める仕草をし、ミキも良し良しと頭を撫でるから、ミキの腕を掴み引き剥がす。
「沙織! 甘える相手違うだろうが! ミキも相手にするな!」
「ケチ! 大ちゃん、伊織が虐めるぅ」
俺に舌を出し、今度は矢島君に甘える。
それを見て、俺は鼻を鳴らしたが
「うわぁ、沙織さん可愛い。綺麗なのに甘えて」
どこが可愛いのか解らん、沙織のは計算してやってるのが解って無いミキに呆れるが、もう1人……。
「ですよねぇ。たまに、こうやって甘えて来るんですよ」
沙織の頭を撫でる矢島君。
素直な2人に呆れて笑いが漏れる。
料理を食べ酒を飲み楽しい会話で、あっという間に時間が過ぎ、店内が混み始めたと店を後にする。
駅で沙織達と分かれ、俺のマンションに2人で向かう。
最寄りの駅からマンションまで、人通りの少ない所は手を繋ぎ歩く。
あぁ、幸せを感じる。
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