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第209話

「ありがとう。俺もミキに渡す物がある。少し待ってろ」 俺も正方形でリボンが付いた箱を、ミキの目の前に出す。 「俺からのクリスマスプレゼントだ。気に入ると良いが」 ガサガサと箱を開け中身を確認して、俺を仰ぎ見た。 「別に、嫌味で買ったわけじゃない。ミキが持ってる時計は、おじいさんの以外は全部無くなっただろう。おじいさんの時計もいつ止まるか解らないって言ってたから。だったら、止まった時に、他でも無い俺が買った物を身に付けて欲しかったからだ。直ぐじゃなくても良いんだ、おじいさんの時計を大切に使って、1年でも2年先でも構わない、その時に俺のを使って欲しい」 俺がプレゼントに渡したのは、スイス製の腕時計。 シンプルだが、会社にも普段にも使えそうな感じの物にした。 値段も少し高めだが、ミキが一生使ってくれるなら安いもんだ。 涙を溜め、泣き出しそうな顔で話す。 「ありがとうございます。伊織さんの気持ちがとても嬉しいです」 「泣くな。笑ってくれ」 目を擦り、泣き笑いをする頭をぽんぽんとし 「明日は仕事だ、そろそろ寝るか?」 「はい」 ミキをお姫様抱きで寝室に運び横たえ、俺も隣に横になる。 「伊織さん…素敵なクリスマスでした。ありがと」 「俺こそ楽しかった。ありがとうな。来年も再来年もずっと2人で過ごそうな」 頭のてっぺんに誓いのキスをする。 「はい。約束です」 ふわりと笑う。 「もう、寝よう」 「はい、おやすみなさい」 「おやすみ」 今日は俺の胸に顔を埋め、腕の中で眠についた。 俺も抱きしめて眠りについた。 俺の人生で、初めてこんなに楽しかったクリスマスはこうして過ぎた。 朝、目を覚ますと隣にミキは居なかった。 ベットを抜け出しリビングに行く。 「おはようございます」 キッチンから顔を出し挨拶され、朝からミキの顔を見れる幸せを感じていた。 「おはよう。早いな」 「今、起きた所です。簡単に朝食作りますから待ってて下さい」 ミキが持って来たコ-ヒ-に口を付け携帯を弄る。 昨日は誰にも邪魔されたく無いとマナ-モ-ドにしていた。 解除すると、INEが3件来ていた。 祐一と真琴君と沙織からだった。 取り敢えず、祐一のLINEから開く。 *♪楽しんでるか?マコからミキの写メ見せて貰った。お前も大変だな。精々、取られない様に頑張れよ。離すなよwww。今度、マコにも女装させて4人で出掛けるか?*♪ チッ!祐一の奴。面白がってやがる。 返信する。 *♪すんげぇ楽しかった。羨ましいだろう。誰にもやらん。ミキは俺のだ。離すわけねぇだろ。真琴君に女装させるなり何なり勝手にしろ。巻き込むな♪* よし。祐一は終わった。 次は沙織か? 大々の内容は解るが、一応LINEを開くか。 *♪メリ-クリスマス🎄どう?凄く綺麗だったでしょ?ヨシ君。私達4人からのサプライズプレゼントよ。時計のお礼だから気にしないで。また、ヨシ君貸してね*♪ そうか4人からか?粋なプレゼントだった。 お陰で気にしないでイチャイチャできたし、感謝のLINEするか。 *♪プレゼントありがと。矢島君にもお礼言ってくれ。お陰でイチャイチャ出来たし、ミキは綺麗で見せびらかしたぞ。頻繁には貸さないぞ。だが、また頼むかも知れないから、その時はよろしくな*♪ よし。沙織も終わった。 最後は真琴君か。 *♪ミキと楽しんでますか?ミキ、凄い綺麗だったでしょ?前に、言われてた学生の時の劇の写メを、ミキに内緒で送りますね。じゃあ、ミキと仲良く*♪ 添付された写メには、ミキの大学のサークルだと思うが、お姫様の格好した今より幼い感じのミキの姿があった。 手作りで作った安いドレスを来ているが、どこからどう見てもお姫様だった。 昨日のミキは大輪の花って感じだったが、大学時代のミキは綺麗だが、まだ蕾で咲き始める前って感じだ。 これから、綺麗な大輪の花が咲くのが感じさせる様な 「大学の時も変わらず綺麗だな。少しだけ、幼いか?」 小さく独り言を呟く。 真琴君に感謝だな、ミキには内緒にしておこう。 思い掛けないプレゼントで宝物が増えた、1人でニヤける。 返信するか。 *♪ありがと。ミキの大学の写真を見れるとは、思わなかったから嬉しい。相変わらず綺麗だったんだな。昨日も凄く綺麗だった。ありがと*♪ よし。これで全員に返信したな。 「伊織さん?朝食出来たけど」 グットタイミングだ。 「ありがと。今、行く」 4人からの気持ちが嬉しかった。 ミキも俺も友達に恵まれたと思いながら、ミキが作った朝食を幸せな気分で食べ始めた。 後日談だが。 このクリスマスから数ヶ月後に大切にしていたミキのおじいさんの腕時計が止まった。 年代物で修理は不可能で、ミキは俺の腕の中でワンワン泣いて悲しんだ。 まるで、俺がミキに腕時計を渡すのを待っていたかの様に止まった。 これから、ミキを頼むと言われた様に感じた。 そして、ミキは俺がプレゼントした腕時計を身に着けミキを見守る様におじいさんの時計は、透明な正方形の箱に入れミキの部屋に大事に飾ってある。

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