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第210話

濃密で楽しかった2人のクリスマスも終わり、街もクリスマスから年末の装いに変わってきていた。 会社でも今年も僅かになり、正月休み前で忙しい日々を過ごしていた。 恒例の月曜日の朝礼で 「今年もあと数日で正月休みになる。休み前に年末の挨拶と用件が無いか確認する事。ト-トバッグの在庫確認と発送も忘れるな。香坂は手拭いの在庫と発送も確認しておくように。後、部長主催の海外事業部の忘年会が30日にある、その日は定時に終わらせるように、時間と場所は各自のパソコンに社内メ-ルが入るから見ておくように。今週、頑張れば休みだ、気を抜くなよ。以上」 朝礼も終わり、俺も座席に戻り仕事を始めようとすると、もう3人は電話を掛けていた。 気合い入ってるな。 ヨシ、俺もやるかとアメリカ支社に電話を掛ける。 「課長、昼どうしますか?」 田口に聞かれ、パソコンをずっと見ていた目元を押しながら 「あ~、もう、そんな時間か? ん、今日は皆んな内勤か?じゃあ、4人で近くの定食屋に行くか?」 「はい。佐藤.香坂。課長も一緒に行けるから、出られるか?」 「はい」「大丈夫っす」 こうして4人で近くの定食屋で、昼食を取る事にした。 注文した定食を食べながら 「もう、今年も終わりっすね」 「そうだな。今年はト-トバッグを企画してイチから自分達でやって、何か達成感があった年だったな。これも課長のお陰です」 「いや、皆んなの力だ。お前達が個々に頑張った証だ少人数で大変だと思うが、意思疎通が直ぐに出来るしそれはそれで少人数の良さがある。これからも、力を合わせていこう」 「「「はい」」」 俺の言葉に力強く頷き返事をするのを見て、赴任してきた時より頼もしくなったなぁと思った。 「そう言えば、30日の社内メ-ルは見たか?」 「はい、確認しました」 「毎年、決まった居酒屋の大広間貸し切って7時からですよね。毎年の事なんで、もう見なくても判ってますよ、皆んな。部長の挨拶長くって」 「まあ、そう言うなよ、佐藤。部長も年1回の忘年会だけは楽しみにしてるんだ。他の課の奴とも話せる良い機会だ。そういう場でも無いと中々、忙しくって交流持てないからな」 「田口さんの言う事も解りますが、女の子が少な過ぎで華が無いんですよ。ああ、いいなぁ、5階の人は事務の子や総務.経理って、たくさん女の子いるし、華が有りますよ、華が」 「そうか?5階なんて役員室があるから、いつもお偉方と一緒だと気が抜けないと思うが。そんなに良いなら今度の人事で佐藤の事、5階の部署に推薦しておくか?」 笑いながら話すと田口もミキも俺のジョ-クに乗り、佐藤弄りが始まった。 「良いですねぇ、是非、推薦してやって下さい」 「佐藤さん、念願の女の子一杯の部署に異動出来ますよ。良かったですね」 佐藤以外はニタニタして話す。 佐藤は弄られて面白く無さそうな顔するが縋るように話してくる。 「課長、それは無いですよぉ~。役員の人達には恐れ多くて近付けないっす。華が無くても今の所に居させて下さいよぉ~。田口さんも香坂も笑えないから」 「そうか。解ってくれればいい。華なら上野さんで十分だと思うぞ。母親のように懐が広いから、佐藤も遠慮せずに甘えろ」 くっくっくっ…… 「そうですよ。私も上野さんがいるだけで十分です」 「上野さんは香坂贔屓だからな。俺の事なんて」 「それは仕方ない。香坂は素直だからな、可愛いんだろう?ま、上野さんだけじゃないからな、香坂贔屓は」 「うそぉ~、田口さんもっすか?田口さんだけが頼りなんですから、見捨て無いで下さいよぉ~」 「ま、お前次第だな」 はははは…… 「笑えないから」 佐藤を揶揄って、久し振りに皆んなで楽しく昼休みを過ごした。 佐藤は本当にム-ドメ-カ-だ。 こいつが居ると場が明るくなる、佐藤の良い所だと思いながら、午後からの仕事に向けて定食屋を後にした

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