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第216話

シツコイ女だと思いながらも、顔には出さず。 「どうしたんですか?2次会行かないんですか?」 ワザと距離を置く様な話し方をする。 「あのぉ~、成宮課長。この後、2人で飲みに行きませんか~?」 はあ?何で行かなきゃなんね~んだよ、見て解んね~かな、帰る所なんだよと心で呟いていると、側で俺達を見ていた上野さんが、ミキに話してる声が聞こえた。 「香坂君。もしかして、電車で帰る事になるかもね」 「………。」 ミキは黙って聞いていた。 不安にさせまいと、少しはっきり言って置くかと口を開く。 「悪いが、明日も予定があるんで帰る所なんだ。それに、付き合ってる相手が居るんで2人っきりで行くのは、遠慮して置く」 「そんなぁ~。折角、お近付けに慣れたのにぃ~。少しだけ、付き合って下さいよぉ~。彼女いるのは知ってますけど、会社の人じゃないんでしょう?だったら、バレませんよぉ~」 ミキと上野さんの方をチラっと目だけで確認すると、黙って成り行きを見守っていたミキの頬が、ピクッと動いたのが解った。 「いや、バレるとかバレないの問題じゃ無く。付き合ってる相手に顔向け出来ない様な振る舞いは、したく無いんだ。会った時に、目も合わせられない様な事はな。それ位、大切な相手だから。そういう事だから、飲みたいならまだ、2次会に間に合うし、帰るなら他の人に送って貰ってくれ。それじゃ」 素っ気なく言い、お前の相手などしないと、それとなく言った。 「………。」 もう何も言ってこなかったから、そのまま高木から離れ 「申し訳ない。上野さん、行きましょう。香坂、帰るぞ」 「良いんですか?」 上野さんの問いに 「元々、帰る予定ですから」 そのまま、タクシ-を拾って帰る為に3人で乗り込む。 「課長、さっきは凄くカッコ良かったですよ。飲んでいても、きちんとお断りして彼女への誠意も伝わりました。課長の彼女は、幸せですね。こんなに思われて」 感心した様に上野さんが俺を褒める。 少し照れるが正直に話す。 「そうですか?日頃から思ってる事を言ったまでですが。それに、幸せを貰ってるのは私の方ですよ」 「あらあら、課長の惚気が聞けるなんてね。課長がそれ程言うなんて、どんな方なんですか?香坂君も気になるでしょう?」 ミキに振られ、少し照れてるのか?困ってるのか?頬が赤くなっていたが、上野さんには酔って赤くなってるとでも思ってるんだろうが、俺には解る。 「………そうですね」 「気になるわよね。で、どんな感じの方ですか?」 上野さんも少し酔ってるのか?いつもより饒舌になっている。 「ん…そうですねぇ。外見は綺麗なんですが内面がとても可愛い。それで、一緒にいると癒される。ずっと側にいて守って大切にしたいって思わせる子ですね」 俺の返答に、上野さんとミキは対照的な反応を示す。 「凄いですね。課長に、そこまで言わせる人なんて。綺麗なのに可愛いなんて、なかなか居ませんよ。良い方に出会いましたね。大切にして下さいね」 「はい」 上野さんは感心したように、それでいて興奮気味に話すが、ミキは俯き、頬も耳も赤くなり無言だったが、照れて顔を上げられないんだろう、そんな所も可愛い。 そんな話しをしていると、上野さんの降りる場所に近付き、上野さんにも今年の労いと感謝の言葉を述べ2人で来年も宜しくと挨拶し、上野さんはタクシ-から降りて行った。 ミキと2人になり、そっと手を繋ぎ運転手に 「このまま、恵比寿まで行ってくれ」 今日は帰すつもりが無いと、運転手を通してミキに遠回しに言うが、ミキは何も言わず頬を染めていた。

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