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第241話

「伊織さん。王道だけど、金閣寺か清水寺のどっちかに、行きませんか?」 「王道だな。行った事位あるだろう?」 「ん~、インタ-ナショナルスク-ルの時に行った事あります。あの時は、まだ子供だったから、お寺の良さが解らなかったけど、大人になると段々と、あの神聖な感じとか建築の素晴らしさとかの良さが、解るようになるんですね」 「そう言えば、俺も中学の時に行ったっきりだな。王道過ぎて行かないもんだな。それで、どっちに行きたい?」 「ん~、金閣寺も綺麗だけど……伊織さん、見て.見て清水寺の本堂北側に縁結びの神様がいるみたい。この"恋占いの石”って、見てみたい」 「縁結びって、もう相手いるのに、行っても意味あるのか?」 「相手がいない人は、良縁に恵まれる様に。相手がいる人は、ずっと一緒にいられる様にって感じ?」 「乙女チックだな。じゃあ、行くか。この先、永遠にミキと一緒に歩んでいける様に、頼んでおくか」 「伊織さん……俺も頼みます」 おっ、良い雰囲気だ。 「ミキ」 キスしようと近寄ると 「後は、この織成舘に行ってみたい。西陣織の手織りと帯の製織工程が見られるんですって」 わざとか?避けてる? 「仕事の一環みたいだが、見ておくのもいいかもな」 「東映太秦映画村も楽しそう」 「おいおい、そんなに回れないぞ。東映太秦映画村は明日チェックアウトしてから行こう」 「良いんですか?」 「大丈夫だ、少しズラして出発したほうが、混まないだろうから」 「嬉しい。伊織さん、大好き」 余程、嬉しかったのか俺に抱き着く。 俺もミキの腰に手を回そうとした時に、パッと離れ急かす。 「じゃあ、出発しましょう。伊織さん、早く.早く」 ん?やはり、避けてるのか?それともまだ、拗ねてるのか?いや、あの調子だと、拗ねてはいない様だ。 もしかして、焦らしてるのか?ミキの意図が解らず困惑するが、楽しみにしてるミキを見ると、取り敢えず出発する為の準備をする事にした。 車を走らせ清水寺に向かった。 「うわぁ~、凄い。京都の街を見下ろせますよ」 清水寺で拝観後に、寺の上まで登って景色を見ていた 「前は、何にも無いから、本当に、ここが清水の舞台から落ちるって言う事だろうな。あんまり身を乗り出すな、危ないぞ」 手摺りから身を乗り出し、はしゃいで見てるから危ない。 「俺達、あっちから来たのかな?」「前の木々が雪景色で綺麗ですね」「ここは、秋の紅葉も凄いみたいですよ」 子供みたいだ。可愛い。 「流石に、冬でずっとここにいると寒い、中に入ろう」 「はい」 階段を下り、ミキが言ってた本堂北側にある鎮守社に歩いて行く。 俺達は知らなかったが、結構な参拝客がいたのには驚いた。 「へえ~、結構、人気あるんだな。それとも皆んな良縁を期待した寂しい人なのか?こんなに、人がいるんなら、ここで出会いがあっても良い感じだな」 「んもう、伊織さん。口が悪いですよ。皆んな幸せを求めて来てるんですから。あっ、あれが"恋占いの石"ですよ」 ご丁寧に、石に飾りをしてある。 「えっと、一方の石から目を閉じて歩き、反対の石に無事に辿りつければ、恋が叶う。ですって」 ミキが話した通り、何人かやってる人がいるが「もう少し、右」「そのまま真っ直ぐ」声を掛けてる人もいて、何だかスイカ割りの様で可笑しかった。 なかには、必死でやってる人もいるんだろうと思うと益々可笑しく思える。 「伊織さん、やってみませんか?」 「……俺はいい。もう、恋は叶ってるしな。やりたいなら、ミキやれよ」 「ん、やってみようかな」 そう言いながら、ヤル気満々なのが解る。 一方の石に行き、手を合わせ、こちらの石の場所を確認して、目を閉じ歩き始める。 真っ直ぐ歩いていたが、段々と右に逸れて行く。 「ミキ、右に行ってるぞ、左に2歩寄れ。そこから真っ直ぐだ」 気が付いたら、俺も声に出していた。 ヤバッ。 俺も回りからスイカ割りみたいだと、思われたな。 そんな俺のアドバイスも効いたのか?ミキは無事に辿り着いた。 目を開け「やったぁ~」辿り着いた石を撫で喜ぶ。 全く、可愛い奴だ。 そのまま清水坂~二年坂までの観光ストリ-トを探索した。 土産屋.和雑貨.和スイ-ツと店が並んでおり、どこも観光客で賑わっていた。 土産屋を見て周り、和雑貨では真剣な目で物色し定員に「外国の方は、どんな風な物を買われますか?」と質問する所なんか多少は、仕事が入ってる気がするが俺も興味深く品物を見てしまうのは職業病かも知れないと思った。 甘味処を見つけ「熱いお茶と本場の抹茶ぜんざいを食べたい」と言うから、店に入ると女ばかりで、男2人で座ってるのは、少し居た堪(たま)れ無かったが、ミキはこういう時は全然気にしないのが不思議だ。 抹茶パフェと抹茶ぜんざいと迷っていたようだから2つ注文し、交換で食べたのも恥ずかしかったが、ミキの美味しそうに食べる姿を見られるだけで、店に入って良かった。 そんな風に、ミキの事を優先に考える事が当たり前になってる、でも、それが俺の幸せだと感じて、ミキの美味しそうに食べる姿を、熱いお茶を飲みながら自然と微笑んでしまう。

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