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第244話

北野天満宮の鳥居を出て直ぐに老舗豆腐屋の生湯葉丼を食べ、それから車で、今回の旅行の目的である“貴船神社”に向かう事にした。 着いた時には、丁度夕刻の時間だった。 運良くライトアップされた参道石段の両脇に、朱塗りの貴船の灯籠がびっしりと立てられ印象的だ。 雪景色の白と貴船の灯籠の朱で、何とも言い難いコントラストが現れていた。 「伊織さん、とても綺麗ですね。前回は、5月か6月でしたよね。その時と、また違った雰囲気で雪景色の中ってのも凄くいい」 風景に感動したらしく、興奮して話すミキを見て、連れて来て良かったと思った。 「貴船神社のまた違った雰囲気をミキに見せたかった。秋も紅葉で綺麗だが、俺は雪景色の方が情緒があって好きだな」 「俺も」 「上に行って見よう。滑り易くなってるから気を付けろよ」 「はい」 手を繋ぎ歩き出す。 いつものミキなら咎める所だが、この雰囲気と旅行先と言う事で何も言わず手を繋ぎ歩く。 本殿で参拝し、少し見晴らしの良い所で見下ろすと、雪景色に赤い灯が点々と点り綺麗だった。 「あの灯の道を通って来たんですね。上から見下ろす景色も良いですね」 夕刻時で薄暗いしスヌ-ディ-でミキの顔半分は見えないから誰も男とは思わないだろうと、景色を見てるミキの背後から抱きしめ肩に顎を乗せ話す。 「だろ。この貴船神社は、ミキとの思い出の地だ。知ってるか?ここは水の神でも有名だが、縁結びとパワ-スポットとしても有名なんだ。初めて2人で来たのも貴船神社だ」 「あの時は、まだ上司と部下で仕事で京都来てたんですよね。それが、今は恋人として来れるのなんて、あの時は思わなかった」 「ミキは、俺にバレて無いと思ってたしな」 くっくっくっくっ…… 「本当、恥ずかしいです。でも、あの時、祐さんのお店に行って良かったです。じゃなかったら、伊織さんと出会ってなかったし、会社での俺も気付かなかったかも知れないですね」 「ん、確かに、祐一の店で会った時に外見で一目惚れしたが、その時会わなかったとしても、いずれ会社で会っただろうし、外見が違ってもミキの性格の良さを知れば外見じゃなく中身で惚れただろうな。どっちにしろ、会うのも惚れるのも必然だったんだ」 「伊織さん…。この貴船神社の縁結びのご利益も有ったのかも。そう考えると、2人の思い出の場所って事ですね」 「これから色んな思い出の場所が増えるがここは特別だな。また、何回でも来ような」 「はい、何回でも来ます。連れて来て下さい」 ミキの返事にギュッと、暫く抱きしめる。 それから水占いをしてみようとなり、おみくじを買って水に浮かべると字が浮かび上がってくる。 「不思議」「面白い」と、おみくじでは、珍しい水占いに感心していた。 「もう少し先にも中宮の結社がある。行ってみるか?」 「はい」 上に500m程にある小さな神社で、鳥居が奥にあるから看板が無ければ見過ごしてしまう様な所だ。 「伊織さん、ここが縁結びの神様です。へえ~、"恋を祈る神”ですって。縁結びも色んなのがあるんですね」 スマホ検索し話す。 「そうだな。さっきの北野天満宮の牛神もそうだしな」 「牛神様にお願いしちゃったから、ここでお願いしたら、喧嘩しないかな?」 「逆に、結びが太くなるんじゃねぇ~の。良い方に考えよう。神様がたくさん味方してくれた方が心強い」 「その伊織さんの考え方好きです。お参りしましょう」 ふふふふ……ふわりと笑う。 2人で手を合わせ、願い事は一緒だろう。 見せたかった冬の貴船神社も堪能したし 「ミキ、宿に帰るか。丁度良い時間だな。帰ったら飯にしよう。腹が空いた」 「はい。俺も良く歩いたのでお腹も空きました。寒いけど、体はポッカ.ポッカです」 「よし。景色見ながら車まで、下って行くとするか」 「はい」 滑るからと言い張り、手を繋いで下りた。 車に乗ったら、食事も楽しみにしてるだろうから、宿に電話して食事の用意して貰って、それから露天風呂に入り、昨日出来なかったあんな事やこんな事をして…………早く宿に帰るか。 頭の中は、昨日出来なかった分妄想が膨らむ。

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