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第253話

旅行最後の露天風呂を満喫(?)し部屋に戻り、くたくたに疲れているミキの背後から抱きしめて座っている。 「まだ、チェックアウトには時間がある。少しゆっくりしろ。寝てもいいぞ」 頭を横に振り 「寝たら起きれない。このままの方がいい」 案に遠回しに、俺と一緒の方がリラックスできると聞こえ微笑んでしまう。 「そうか。俺もこの方がリラックスできる」 「伊織さんも?一緒だね」 ふふふ…… この笑顔に癒される、俺の好きな笑顔だ。 たわいもない話しをしていると、ミキからの返す言葉が少なくなり始め、遂に返事が無くなり体を俺に預けてきた。 「ミキ?」 顔を覗き込むとス-.ス-と寝息を立て、幸せそうな顔で寝ていた。 「疲れたか?少し寝かせてやるか、それにしても、寝てても綺麗な顔だ。幸せそうな顔をしてる」 頭のてっぺんに唇を落とし、ミキのまだ火照った体を抱きしめて、規則正しい寝息に俺の眠気を誘う。 まだ、1時間位は寝られると逆算し、映画村を楽しみにしているミキの為に置いてあったスマホにアラ-ムを掛け、俺もミキを抱きしめて暫しの休息をとった。 12時にチェックアウトして旅館を出て、東映太秦映画村に着いた。 京都東映撮影所というだけあり、忍者やお侍.町娘が道を歩いていたり、そこには江戸の町の世界が広がっていた。 可笑しかったのは、江戸の町なのに、子供達の為か?仮面ライダ-と戦隊ヒ-ロ-のアトラクションがあるのは、ここでは浮いていた。 パンフレットを片手に、江戸の町の撮影セットの中を歩き話す。 「伊織さん、結構、色々アトラクションもあるんですね。あっ、良く時代劇に出てくる長屋とか問屋とかあるぅ」 「そりゃ~そうだろう。ここは、実際の時代劇の撮影に使われてるセットなんだからな。へえ~、テレビで見るより、実際の方が細部に渡り再現されてるなぁ~」 「本当ですね。テレビに映らない所もしっかり作られて、江戸の雰囲気が解りますね」 2人で撮影用セットを関心しながら見て歩く。 途中、忍者やお侍と擦れ違うと 「わぁ~、初めて忍者とお侍さん見た~」 「おいおいミキ、実物じゃ無いぞ。俳優が演じてるんだからな」 「解ってますよぉ~。でも、ここにいると、タイムスリップしたみたいに、本物に見えるから不思議。……伊織さん、郷には郷に従えですよ。現実的な事を言わないで下さいよ。夢を壊さないで下さい」 「はい、はい」 「………ハイは、1回です。学校で習いませんでした?やぁ、町娘さん可愛い。また、舞妓さんとは違った京都らしさって言うか、素朴な可愛さがありますね」 「……はい」 「偉い.偉い。良くできました」 クスクスクスクス…… 楽しそうなミキの顔を見て、俺も楽しくなってきた。 パンフレットにあるカラクリ忍者屋敷に行って見る事にした。 「入ってみるか?」 「楽しそう~」 忍者屋敷には"どんでん返し""隠し通路"など沢山のカラクリを利用し、出口まで脱出するというアトラクションだった。 忍者屋敷に入り出口を目指す。 「伊織さん、こっちに隠し扉がありますよぉ~」 「こんな所に」「凄いですね」「わぁ、びっくりしたぁ」 出口に到着するまで、1つ1つに驚き.感心し.発見すると喜び、そんなミキを見てるだけで俺は楽しかった。 大きく無い忍者屋敷たが、からくりを楽しみ出口まで辿り着く。 「はぁ~、楽しかったぁ。昔の人は、発想が豊かで凄いですね」 「そうだな。あの流れで隠し部屋や隠し金庫が、未(いま)だにあるのかもな」 ミキの素直な感想に俺の捻くれた感想を話すと 「成る程ね。そう言う事か~」 俺の捻くれた感想にも素直に受け止めて、俺には無い、この純粋な穢れを知らないミキが眩しく感じた。 園内には、忍者に扮装している子供を見て「見て.見て。可愛い~、忍者とくノ一がいる~」と言って、可愛い.可愛いと連呼していた。 「ああ、確かに可愛いな。でも、ミキの町娘も可愛いと思うが。ミキも扮装してみるか?」 「嫌ですよぉ~。何で?町娘何ですか?それなら伊織さんは悪代官ですね」 クスクスクス……。 可愛い憎まれ口に、俺も揶揄う。 「ふ~ん、そう言う事を言うのか。じゃあ、俺は悪代官でミキを手篭めにするからな。ミキは帯を‘あれ~’って言って、クルクル回るんだな」 くっくっくっくっ……想像すると面白い。 「やだぁ~。伊織さん、時代劇の見過ぎです。今時、そんな発想するなんて、親父ですよ。お.や.じ。本当、悪代官」 「親父で結構。悪代官大歓迎だ。よ~し、丁度、着物も扱ってる会社だし、今度、帯を持ってきて、ミキを‘あれ~’って言わせて、クルクルするか?」 くっくっくっくっ…… 「止めてくださいよ。本当に。伊織さんなら、やり兼ねないから。やらないですからね、絶対」 プイッと横を向き、怒った振りをするミキが可愛い。 「解った.解った。冗談だから、怒るなよ」 顔を覗き込むと「もちろん、冗談だと解ってます」ふふふ……と笑う。 「でも、今度のお仕置きに使えるな」 揶揄うと「やめてぇ~」と慌てるミキが可愛い。 周りでは、そんな馬鹿な話しをしてるとは思わないだろうが、2人の間ではイチャイチャしながら歩くのも楽しかった。

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