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第255話
帰りはミキと交代で運転し、サ-ビスエリアで休憩がてら立寄り、もちろん来る時の事があったから、トイレにも1人では行かせず常に側にいた。
お土産や飲み物.食べ物などを見たり、車の中で手を繋ぎ仮眠を取ったりと、長い道中もミキとなら楽しく過ごせた。
京都を10時頃出て、東京着いたのは朝の9時近かった
高速を降り「ミキ、疲れたか?」
「大丈夫です。伊織さんこそ、運転して疲れたでしょ?」
「ミキと交代で、運転して来たからな。帰りは、行きより楽だった。運転も随分慣れたな」
「はい。こんな事なら、行きももっと代われば良かったって後悔してます。今度、遠出する時は、任して下さいね」
次の旅行を楽しみにしてる言い方に、俺も微笑む。
「マンション帰る前に、1ヶ所だけ寄りたい所がある。付き合ってくれ」
「はい。どこですか?」
「ま、その内に解る。そうだな、ここからなら、1時間か1時間半位かな。着いたら起こすぞ、寝てて良い」
「解りました。眠くなったら寝ちゃいますね」
そう言いながらも、眠い目を擦り一生懸命に話し掛けてくる。
車を走らせて、何となく雰囲気で解ったのか?
「伊織さん。この道って……」
「ああ、そうだ。ミキの家族が眠ってる所だ。新年のご挨拶に来た」
「伊織さん……ありがと」
涙を溜め、お礼を言うミキが愛おしくなる。
「馬鹿だな。ミキの家族はオレの家族って言ってるだろ?挨拶は当たり前だ。泣くな。皆んな心配するぞ。どうせなら、幸せですって安心させてやれ」
涙を拭き泣き笑いで「はい」素直に返事をするミキが愛しい。
近くの24時間ス-パ-でお花と線香を買い、お墓に向かう。
ここに来たのは、半年前のお盆の時期だったから、少しだけ掃除をし、花を挙げ手を合わせるミキの背中を背後で眺める。
「伊織さん、どうぞ」
今度は、俺が墓の前で手を合わせ、心の中で
(お久しぶりです。なかなか来れずすみません。
この半年、色々ありましたが、ミキとは仲良くやってます。安心して下さい。この先も、順風満帆とはいかないかも知れませんが、その度に2人で解決し、この先の人生を共に歩んでいきます)
改めて家族に誓う。
それから、2人で無言でお墓を見ていた。
ほんの少しの滞在時間だったが、挨拶出来て良かった。
「ミキ、2人でまた来よう」
「はい」
ミキの家族が (寂しがり屋のミキの側に、ずっと居てね。また、2人で来て、幸せそうなミキを見せてね。頼んだよ)って言われてる気がした。
また、来る事を約束し別れの挨拶をし、帰り道は手を繋ぎお墓を後にした。
マンションまでの道中は、ミキの家族の思い出話を聞かせてくれた。
家族で動物園に行った話しだった。
涙は無い、楽しそうに懐かしそうに話すミキ。
ミキの哀しい部分が、俺が愛する事で少しでも薄れていればいいと思った。
完全に無くなるとは思わないが、不安にさせないように、これからもイヤって程愛して.甘やかして.愛し抜く事で、払拭してやりたいと懐かしい思い出を話すミキを見て心で思った。
マンションに着き荷物を持ち、ミキはドナルド&デイジ-に別れを告げ部屋に戻り、荷物をドサッと置きソファに凭れる。
「はあ~、やっと着いたな」
「やはり、京都は遠いですね」
言いながら荷解きをしようとするミキ。
「何、やってる?」
「洗濯物とかお土産とか出して、バック空にしないと」
「そんな事は、後でいい」
立ち上がりミキの腕を掴んで寝室に行き、服を着たままベッドに横になる。
「少し、休め」
「ん、でも…」
「ミキが動いてると俺も気が休まらない。俺の為だ」
「すみません。解りました」
無事に着いてホッとしたのか目を瞑り、そのままミキを抱きしめたまま意識が遠のいた。
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