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第260話

「おっ、オヤジ元気か?今年も元気でいろよ」 「ったく。久し振りに来たかと思えば、憎まれ口をきく。今年も元気に働ける事を祈るよ。お前もせいぜい頑張れ」 俺とオヤジの気安い挨拶に、ミキは慌ててオヤジに謝る。 「伊織さん! 何て事言うんですか?すみません、大将。伊織さんったら、照れてるんですよ」 俺のフォロ-をするミキに、オヤジは目尻を下げ 「本当に、ヨシ君は良い子だ。お前には、勿体ない。なんだかお前の嫁みたいだなぁ」 「だろ?良い奥さんなんだ」 俺とオヤジの会話にミキは頬を染め、他の奴らは目が点になり呆れていた。 立ち直りの早い沙織が、口火を切る。 「恥ずかしくも無く、堂々と良く言うわね」 「いやあ~。あんなに、はっきり言われると返ってスッキリするって言うか、尊敬に値します」 「ミキ、愛されちゃってるね」 3者三様の反応が返ってきたが、相手にせず 「ミキ、酔って無いか?帰りは、一緒だから飲んでも大丈夫だぞ」 「ありがとう。伊織さんは、祐さんの所でたくさん飲みました?」 「いや、話が盛り上がって、あまり飲んで無いな。チビチビやりながら3杯位だな」 そこに、空気を読まずに割り込むのが沙織だ。 「ねぇ.ねぇ。2人の世界に入らないでよ~。萌えなんだけど……家でやってくれない?」 「あっ、すみません。伊織さんも座って」 沙織の言葉に照れて話すミキが可愛い。 真琴君が退いてくれて、ミキの隣に腰を下ろす。 「そう言えば、沙織.真琴君.矢島君。クリスマスプレゼントありがとう。最高のプレゼントだった。後、今年も宜しくな。ミキと程々に仲良くしてくれ」 「成宮さん、今年も宜しくお願いします」 きちんと頭を下げ、律儀に挨拶する矢島君。 「成宮さん、祐さん共々宜しくお願いします」 ここに居ない祐一の事も交えて挨拶する真琴君、なかなか甲斐甲斐しい。 「さぞや。熱いクリスマスの夜だったでしょうねぇ。あんなに綺麗なヨシ君だもん。あ~、思い出しただけでも萌えだわ。一応、今年も宜しく」 嫌味ったらしい沙織の挨拶。 「思い出すな! んで、何を騒いでたんだ?」 「あっ、今、ミキに京都旅行のお土産を貰って話を聞いてて、今度4人で旅行に行かない?って話してたんです」 嬉しそうに話す真琴君を前に、顔には出さず心の中では、ゲッ! 祐一達とどこかに行くとロクな目に合わない、2人で行けよな。俺はミキと2人が良いんだ。ったく、祐一の奴、真琴君を旅行位連れて行けよなと、思いながらも笑顔で話す。 「旅行は、祐一と2人の方が良いんじゃない?祐一、旅行に連れて行かないのか?」 「忙しいのに、年1回位連れて行ってくれますよ。1度、ミキとミキの恋人と4人で、旅行に行きたかったんです。祐さん、プライベートだと知らない人とあまり話さないから、折角、祐さんのお友達でミキの恋人の成宮さんが一緒なら、祐さんも4人で楽しく旅行に行ってくれるかなって。それにDLも楽しかったし」 そのDLで、祐一達と行くのは懲り懲りになったんだがなぁ、何と言って断るかだなと思っていると、沙織が口を挟む。 「私は、6人で旅行に行こうって言ったのにぃ~。大ちゃんが、男5人に女1人は、だめって言うのよ。ヨシ君とマコちゃんなら私は全然、平気なのに~」 こいつ、ミキを女友達と勘違いしてんじゃねぇのか?恋愛感情が無いって事か?それならそれで安心だが。 「矢島君の言う通りだ。恋人なら当然の考えだ」 「そうですよね。ね、沙織さん。旅行は諦めて下さい」 「じゃあ、デ-トは?マコちゃんの彼氏にも会ってみたいしぃ~。トリプルデ-トしない?」 「しない」 即答で断った。 「もう、少しは考えて返事してくれても良いじゃないの。あ~ん、大ちゃん、伊織が虐めるぅ~」 矢島君に、わざと甘える沙織の芝居掛かった行動に、矢島君が「よし.よし」と頭を撫でて、デレデレしていたのは無視だ。 「真琴君。その件は、おいおい祐一と話してみるが……。祐一と日程合うかどうか」 やんわり断るが、真琴君は気付かず 「それなら、日.月の祝日絡めた日に1泊で近場なら大丈夫じゃないのかな?」 「………祐一と相談してみる」 乗り気の真琴君に強く言えず、祐一からそれとなく断ってくれるよう頼むか。 「僕からも祐さんに、話してみますから」 嬉しそうに話すから断り難いと思ってると、黙って話を聞いていたミキが真琴君に諭す。 「マコ。伊織さんも祐さんも忙しい人だから、余り無理強いは、しちゃだめだよ?」 「解ってる。だめ元で言うだけなら良いでしょ?」 そんな事を言われると叶えてやりたくなるが ……いや、やはりロクな事にならない。 一応、その話しは、そこで終わりになり、客も少なかった事もあり、一段落したオヤジも交えて楽しく食べて飲んで話した。 ミキも楽しいんだろう、いつもより酒が進み甘えモ-ドが出始めると、それを見た沙織が一々「萌え~だわ」「可愛いぃ~」「大ちゃん、お家にお持ち帰りしても良いかしら。ずっと見ていたい」馬鹿な事を連発していた。 それに対し 「確かに、萌えですね」「可愛いのは、解ります」「それは、成宮さんに怒られるので、止めましょうね」 矢島君に言われ、本気で残念がっていた。 真琴君とオヤジは、にこにこして眺めていた。 多分、いつも3人でいる時も、こんな感じなんだろうなと思って見ていた。 「すみません、成宮さん。沙織さん、ヨシ君のファンなんです。この間の女装から、更に拍車が掛かって……。ファン心理ですから怒らないで下さい」 「解ってる。ミキの事を知れば知る程魅了されるのは、俺が1番経験して解ってる。沙織も一人っ子だから、弟みたいな妹みたいで可愛いんだろ?だが、行き過ぎた場合は、しっかり釘を刺すから」 「すみません。あんな沙織さんの楽しそうな顔見てるだけで、俺も楽しくなるんです」 「その気持ち、良く解る」 恋人の楽しそうな顔と笑顔を見てそう思うのは、皆んな一緒だな。 楽しそうにしてるミキ達を見て矢島君と語り合った。

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