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第261話
「マコちゃんは、私達がお家まで送って行くから、大丈夫よ」
と店を出て沙織に言われ、真琴君を頼んでミキとタクシ-に乗る。
「楽しかったぁ~。また、集まりた~い」
「ミキ、少し酔ったか?」
言葉が怪しい。
「え~。酔って無いで~す。伊織さ~ん、来てくれて、嬉しい~」
酔ってるようだ。
「そうか。少し寝ろ、着いたら起こすから」
「ん~、眠くな~いの」
と言いながら、俺の肩に頭を乗せその内にス-.ス-……寝息が聞こえ出した。
「余程、楽しかったんだな。珍しく酔ってる」
頭を撫でマンションに着くまで、そのままでいた。
タクシ-を降りて「ねむ~い」と言い、体を預けてくるのを支え歩き、エレベ-タ-では、抱きついてくるしで可愛い酔っ払いを抱え、どうにか部屋に辿り着いた。
「ほら。ミキ、部屋に着いたぞ」
コ-トと上着を脱がせソファに座らせる。
「水、いるか?」
「ん~、飲みた~い」
冷蔵庫からペットボトルを持って来て手渡す。
「伊織さ~ん。キャップ」
キャップを開けて欲しいと出され、開けて手渡すとゴクゴク……と半分近く飲む。
俺もコ-トと上着を脱ぎながら、零さないか気にして見ていた。
水を飲む喉元が色っぽいな。
隣に座ると直ぐに、首に手が回り抱きついて来たのを受け止めて、ソファにそのまま横になる。
俺の胸に顔を埋めた可愛い酔っ払いが、話し始めた。
「楽しかったねぇ~。伊織さんが来てくれて、すご~く楽しかったな~」
「そうか。良かったな」
「うん。大将も沙織さんも矢島君もマコもいて、皆んな楽しそうだったしぃ~」
「沙織は、迷惑そうだったが」
顔を上げ、俺の顔を覗き込み
「そんな事ないよ~。沙織さんも喜んでたよ。そうだ。マコ達との旅行も楽しみ~」
「余り、期待するなよ。祐一と日程が合わないかも知れないからな。どっちにしろ、暖かくなってからの話だ」
遠回しに断るように話し、先の話だと先延ばしにするが、酔って察しの悪いミキには解らないようだ。
「5月か6月?大好きな伊織さんとマコと祐さんと行けるなんて楽しみ~」
ミキも真琴君も、こんなに楽しみにしてると断り辛いなんとか祐一から断らせよう。
「おいおい、真琴君は解るが、祐一も大好きだとは、聞捨てならない」
「え~、だってぇ。祐さんは、学生の時からお世話になってるしぃ~。側(はた)から見れば、外見だってカッコいいし~、伊織さんとは違った魅力がありますよぉ~」
「はあ、あいつのどこに魅力があるんだ?」
「ん~、強いて言うなら、伊織さんは西洋的な正統派な男前って感じで、祐さんは日本男子って言うか武士的な(?)寡黙な男らしさ…かな?」
「どこが寡黙か解らん。あいつは、ただのムッツリスケベだろ」
「祐さん、何考えてるか解らない寡黙さと多くは語らないけど、さり気ない優しさのギャップが魅力的ですよね~」
「寡黙って言うが、あれは他人に興味が無いんだよ。さり気無い優しさ?それは計算だろ?あいつは、昔から利害が無いと動かない奴なんだ。……まさか?昔、祐一の事好きだったなんて事は、無いだろうな?あいつは、だめだ」
「何?言ってるんですか~。祐さんはマコの恋人ですよ~。マコが、どれだけ祐さんの事好きか知ってますよ。それに、俺は、祐さんより伊織さんの方が、外見も内面もタイプです」
「当たり前だ。あいつなんかと比べるな」
クスクスクス……
「何だ?」
「だってぇ~。祐さんにヤ.キ.モ.チ?」
「ふん、余りにも祐一を褒めるからな」
クスクスクス……
「可愛い~伊織さん。祐さんにヤキモチ妬くなんて~。可愛い~」
俺の事を、可愛いなんて言うのは、ミキ位だ。
今日は、酔っ払いの戯言と思う事にした。
「可愛いなんて言われた事無いぞ。カッコイイとは、良く言われるがな。俺の事を可愛いなんて言うのはミキ位だ。俺からすれば、ミキの方が何百倍も可愛いがな」
「俺の事を可愛いって言うのも、伊織さん位ですよぉ~。惚れた欲目?」
クスクスクスクス……
「まあな。俺は骨の髄まで、ミキに惚れてるからな」
「伊織さ~ん。大好き~」
俺の顔にキスの雨を降らす。
ちゅっ.ちゅっ.ちゅっ.ちゅ……
「くすぐったいぞ」
酔ってるとは解ってるが、ミキの可愛い行動にデレデレしてると、急に電池が切れたように俺の胸に顔を埋める。
「ふあ~、ねむ~い」
ス-ス-と寝息を立て始めた。
「おい、ミキ?」
返事が無い。
珍しく酔ってたしな、相当楽しかったんだろうな、疲れが一気に出たか?
はあ~。しかし、この体勢は生殺しだ~。
あんな可愛い事して寝るなよな~。
今日は、仕方無いと諦め、ここでは風邪を引いてしまう、暫くこのまま寝かせて少し経ったらベットに運ぶとするか。
顔をスリスリとし、甘えて俺の胸に顔を埋めるミキが愛しくって仕方無い。
ミキの寝息を聞きながら、明日は最後の休みだ、ミキと何をして過ごすかな。
そんな事を考えるのも楽しみの1つだ。
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