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第270話
「シャワ-浴びて来ました」
ドライヤ-を持ちながら歩いて、直ぐに俺の前に座る。
ドライヤ-を受け取り乾かしていく。
ゴォ-.ゴォ-.ゴォ-……ゴォ-……
ミキの髪が手触り良く、ふわふわになっていく。
ドライヤ-を止め「乾いたぞ」ふわふわの髪に1つ唇を落とすと、俺の腹がグ-っと鳴った。
「腹、減ったな」
「お腹がお知らせしてますよ。直ぐに作りますから、少し待ってて下さい」
クスクスクス……
「疲れていたら、後でも良いぞ。その位は、待てる」
「大丈夫です。昼のお鍋に、ご飯入れて雑炊にするだけですから、直ぐですよ」
立ち上がりキッチンに向かう。
キッチンで手早く料理を始め、アッと言う間に出来たようだ。
テ-ブルに着くと、鍋から装ってくれた器を見ると雑炊では無かった。
てっきり雑炊と思っていた俺の顔は不思議な顔をしてたんだろう、その顔を見て
「雑炊にしようと思ったんですが、この間もしたし、チ-ズあったから、リゾットにしてみました。あまり変わらないんですけど」
「へえ~、旨そうだな」
熱々のリゾットを一口食べると、チ-ズが蕩けて凄く旨かった。
「うまっ。熱っ」
水を渡しながら「火傷しないように、気を付けて下さい」褒められて、嬉しそうだった。
2人で「熱っ、熱っ」「うまっ、旨い」と言いながら美味しく食べた。
家庭的なミキと一緒に居られたら、毎日幸せだろうな
そんな事を考えていたら、自然と聞いていた。
「あのマンションの契約は、まだあるのか?」
「えっと、確か後1年位で更新かな?」
「ミキの住んでるマンションは、長いのか?」
「えっと、大学入ってから、そのまま住んでますよ。探すのも面倒だし、通勤もそんなに遠く無いから、引っ越すタイミング失っちゃって、そのままずっとですね」
「大学生で、あのマンションは、結構家賃も高かったんじゃ無いのか?」
「両親の遺産があったので、学生の時はバイトもちょこちょこしながら、学費とか家賃はそこから出しました」
「そうか。バイトは?」
「頼まれた時に、カフェとか家庭教師とか」
カフェか?ミキ目当てに来た客は、多かっただろうな。
「ふ~ん。で、家は処分したのか?」
広い家に1人で居られないと言ってたからな、どうしたのか?気になった。
「1人で居るには、思い出が多過ぎて辛かったけど、やはり処分は出来ません。不動産屋さんに話して借家として貸してます」
「家賃収入もあったのか」
「それもあり学生の時は、随分助かりました」
「そうか」
前のミキなら、家族の話をすると少し辛そうな顔をしていたが、今はそんな顔もしなくなった。
俺と居る事で、寂しさが埋められて居れば、俺も嬉しい。
やはり、今日も離れられない。
長い休みを毎日一緒に居ると、次の日仕事で、自分の部屋に帰らないとならないのは解ってるが、離れ難くなるのはいつもの事だ。
「ミキ。今日、ミキの部屋に泊まってもいいか?」
ちょっと驚いた顔をしたが、直ぐに嬉しそうに笑い。
「伊織さんが良ければ、どうぞ」
「明日の準備して、ミキを送りながらそのまま泊まる明日は、車で会社行こう」
「はい。もう1日一緒に過ごせるんですね」
ふんわりと嬉しそうに笑う。
ああ、俺の好きな笑い顔だ。
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