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第276話
「良し。後は冷やして固めて、また、溶かしたチョコを上から掛けてトッピングすれば終了だ~。思ったより簡単だったな」
♪♪♪ふん.ふ.ふん~♪♪ふん.ふ.ふん~♪♪♪~
丸めたチョコを冷蔵庫に仕舞う。
「冷やしてる間に、お風呂入ろう」
湯船に浸かり、今日の1日の疲れを取る。
「疲れた~」
午後からの外回りの移動の時、ふっとチョコを作ろうと思いたった。
直ぐに、スマホで簡単チョコのレシピを検索して、帰りに大型量販店でチョコの材料とラッピングする品物を買って部屋で作り始めた。
初めて作るから上手く出来るかドキドキしながら、レシピを見て何とか作れそうだ。
我ながら上手に出来たな~。
チョコを作ろうと思ったのは、朝の会社で、伊織さんが女性社員からのチョコを断った光景が凄く嬉しく頭から離れなかったから、何か俺からも……と考えた。
流石に、あのチョコ売場には恥ずかしいから行けず、スマホを見て作ろうと思った。
「カッコ良かったなぁ~ 伊織さん。チョコ喜んでくれるかなぁ~。う~、チョコだけじゃなく他も何かあげたいなぁ~。そうだ、京都旅行のお礼も兼ねて……ネクタイ良いかも。ネクタイなら沢山有ってもいいし、会社でも使って貰える。うん、そうしよう。明日、伊織さんの所に行く前に、デパ-トに寄ろう」
良い考えが浮かんで、ニコニコしてしまう。
お風呂から出て、直ぐに伊織さんに電話する。
♪♪♪♪~…
「お疲れ。今、掛けようと思っていた。グットタイミングだ」
「お疲れ様です。今、帰って来た所ですか?」
「いや、風呂出た所だ」
「俺も、今、お風呂出た所ですよ。一緒ですね」
ふふふ……
「どうせなら、一緒に入りたかったな。髪、乾かしたか?」
「……乾かしてません」
「全く、乾かさないと風邪引くぞ。ふわふわの髪が可愛そうだぞ」
「はい、すみません」
「ま、いい。今日、来てるかと思ったが外回り遅くなったのか?明日は、何時頃来られる?」
チョコ作ってたとは、言えず
「そんなに遅くには、なりませんでしたけど……。明日、昼過ぎに行きます。買物したいので」
「そうか、昼は適当に食べるから急がなくっていい」
「はい」
「じゃあ、明日待ってる」
「はい、ゆっくり休んで下さいね」
「ミキが隣に寝てくれれば、熟睡できるんだが」
「……それは、明日で」
くっくっくっくっ……
「また、揶揄いましたね?」
「ミキは、いつまで経っても可愛いなぁ~」
「んもう。じゃあ、明日行きますから。おやすみなさい」
「おやすみ」
電話を切って、雑誌やアクセサリ-本を見て過ごし、時間を確認して冷蔵庫を開ける。
「良し、固まった。後は、溶かしたチョコを上から掛けてトッピングして冷やせば終わりだ。よし、やるぞ」
また、チョコ作りを再開する。
出来たチョコを冷蔵庫に入れ、明日の朝を楽しみに眠りにつく。
起きて直ぐにチョコを確認し、余分に作ったチョコを1粒試食する。
余り甘い物を食べない伊織さんに合わせてビタ-にした
口に入れると、程良く甘くほろ苦いチョコが口いっぱいに広がる。
「ん~、良いかも。もう少し甘くっても良いと思うけど、伊織さんには丁度良いかな?喜んでくれるかなぁ~」
初めて作ったチョコが上手くいって上機嫌になる。
6粒程のチョコを小さな箱に入れ、綺麗にラッピングしリボンも付ける。
「良し、出来上がり~」
軽く朝食を食べ、デパ-トに行く準備をし、チョコを鞄に仕舞い部屋を出た。
デパートの紳士売場に行き売場をグルッと一周りし、何店舗か同じような事をし悩んだ末に決めた売場に行きネクタイ選びを始めた。
伊織さんって、結構渋めのネクタイ柄が多いんだよな。
1つ1つを見て歩き、目に止まったネクタイを手に取る
派手さは無いが、濃淡違いのある2種類の青で魅せるストライプ柄に、良く見ないと解らない程の柄もあって凄くお洒落だ。
青系も伊織さんらしく良い。
「これに、しよう」
会計しようと振り向いた時に、人と軽くぶつかった。
小柄な女性の背中にぶつかり、前のめりになるのを支えた。
「すみません。大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。私こそ、よそ見してたから」
そう言って顔を上げた女性が俺の顔を見て
「もしかして……香坂先輩?」
「?」
「解りませんか?水木絵美です。大学一緒だった」
名前を言われて、初めて気がついた。
「えっ、絵美ちゃん?懐かしい~。解んなかったよ。俺が大学卒業して以来だから3~4年振り?」
大学の時も可愛いかったが社会人になって、今流行りの化粧して可愛さに磨きが掛かっていた。
「はい。先輩も相変わらず綺麗ですね、ううん、カッコ良くなりました」
「お世辞でも、嬉しいよ」
「そうだ、折角、会えたんですもん。今度、飲み行きません?」
「良いよ。マコも一緒に」
「ええ~、園田先輩と、まだ付き合い有るんですか?」
「そりゃ、マコは、親友だからね」
「ん~、仕方ない。園田先輩も一緒で良いです。本当は、香坂先輩と2人が良かったのに~」
スマホを取り出すのを見て、俺もスマホを取り出す。
「マコも懐かしがるよ。俺は電話番号変わらないけど」
「ごめんなさい。携帯壊れて、全部消えちゃったんです」
電話交換してると会計の方から声が掛かる。
「何してる?行くぞ」
「あっ、行くから待ってえ~。じゃあ、先輩、電話しますね」
「解った。待ってるね」
男性の元に、足早に行ってしまった。
俺も選んだネクタイを会計しデパ-トを出て、伊織さんのマンションへ向かった。
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