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第277話
午前中は仕事をして過ごし、そろそろ来るかとソファに座りテレビをつけて待っていた。
♪♪♪ピンポン~
「ミキか?合鍵持ってるのに、律儀だ」
玄関に向かいドアを開ける。
「寒かっただろ?早く入れ」
「はい」
リビングのドアを開けると
「暖か~い」
荷物を床に置き、コ-トを脱ぎソファに掛けるミキの背後から抱きしめる。
「こんなに冷えて、風邪引くぞ」
体を振り向かせ、温めるように背中を摩る。
「伊織さん。暖か~い」
俺の背中に手を回しギュ-.ギュ-と抱きついてきて可愛い~。
頬擦りし、俺も強く抱きしめる。
「い、伊織さん?痛いよ~」
「悪い.悪い。ほら、こっち座れ」
リビングのラグに座らせ、俺は寒いだろうと熱いコ-ヒ-を2つ持ちテ-ブルに置き、ミキの背後に回りいつもの体勢をとる。
背後から抱きしめミキの匂いを嗅ぐ。
フ-.フ-と息を吹きながら、コ-ヒ-を少しずつ飲む姿が可愛い。
「ん~、温まるぅ~」
「こんなになるまで、どこほっつき歩いてたんだ?」
「あっ、荷物」
思い出した様に、ソファの近くに置いた荷物をキッチンに持って行き、冷蔵庫に仕舞って戻ってくる。
また、俺の腕の中に収まり
「今日、寒いから前に言ってたキムチ鍋にしようと材料買って来たんです。明日は、日曜だし臭くっても大丈夫ですよね?2人一緒なら、匂いも気にならないですよね?」
「ミキと一緒なら、臭くたって良い」
クスクスクス……
「それなら、安心して食べれます」
「俺が1番食いたいのは、ミキだがな」
クスクスクス……
「伊織さん、エロ親父になってますよぉ。俺の大好きなカッコいい伊織さん、帰って来てぇ~」
クスクスクス……
「聞き捨てならないな。俺はエロ親父でもカッコいいの」
「ん~、間違い無い」
「やっと認めたか?」
「だって、どんな伊織さんでも大好きなんだもん」
「ん~、可愛い奴」
ギュっと抱きしめてイチャイチャタイム突入だ。
薄暗くなり始め頃に
「伊織さん、お腹空きません?お昼何食べました?」
「適当に、食パン焼いて食べた」
「そんな事だと思いました。俺も朝食べただけだからお腹空きました。夕飯早く食べませんか?今から、作れば5時過ぎには出来ます」
「頼む。実は、腹が減って仕方無かった」
「んもう、早く言って下さいよぉ~」
「キムチ鍋も魅力だが、ミキとこうしてる魅力には抗えない」
「俺もですけど。直ぐに作りますね、待ってて下さい」
俺の腕の中から抜け出し、エプロンを付けキッチンに立つ。
冷蔵庫を開け、食材を取り出しトントントン……とリズミカルな音が聞こえてくる。
その音を聞きながら横になってると、眠気が襲ってきた。
「いお…伊織さん。キムチ鍋出来ましたよ。起きて下さい」
揺り動かされ、いつの間にか寝ていたらしい。
「ああ、良い匂いだ。ん~、早く食べよう」
テ-ブルに着き、ミキがよそったキムチ鍋を食べる。
「う~、旨い。辛さも丁度良い」
「体も温まるし。豚肉ばっかり食べないで野菜も食べて下さいよ。この豆腐はス-パ-じゃ無くお豆腐屋さんのお豆腐なんですよ」
「へえ。どれどれ、ん~この豆腐旨い。夏はここの豆腐屋で買って冷奴もいいな」
「もう、夏の話ですか?」
クスクスクス……
「まだ、早かったか?」
「まだ、春も来てませんよ?」
クスクスクス……
鍋を囲みハフ.ハフ…しながら美味しいキムチ鍋を食べ、ミキの可愛い笑い顔で心も体も温まった。
粗方食べ、汁だけが残った鍋を見て
「ミキ、明日は雑炊か?」
「雑炊とおうどんと、どっちがいいです?」
「ん~、雑炊」
「おうどんも買って来たので、お昼は雑炊で夕飯は焼うどんにしますね」
「楽しみだ」
皿をシンクに持って行きリビングに戻り、片付けを始めたミキの後ろ姿に、料理上手な奥さんで俺は幸せだと眺めていた。
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