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第288話

♪♪♪♪ピンポ~ン♪♪ ミキか? 時間を見ると丁度10時頃だった。 「毎回、律儀に……合鍵、持ってるのにな」 呟き、可愛い恋人を迎えに玄関に向かう。 ドアを開けて中に入れてやると直ぐに、勢い良く抱き着いて来た。 「おはよございます。凄く、会いたかった~」 数歩後退り抱きしめ、甘えてくるミキが可愛くデレデレする。 「ん、どうした?」 俺の胸に顔を埋め擦りつけてきて、甘える猫みたいだ 「ん~、だってぇ。昨日から、会いたかったから」 頭をぽんぽんし「そうか.そうか」とデレデレした顔で話し、リビングに連れて行く。 リビングでコ-ヒ-を飲みながら、いつもの体勢で寛ぎ昨日の飲み会の話しを聞く。 「昨日、疲れた感じだったけど、どうだったんだ?」 俺に甘える様に、後頭部を擦り付けてきて 「ん~、疲れました。マコと3人で会ったのは、失敗だったかなぁ?でも、マコ以外には、一緒に行ってくれる人居なかったし」 その言葉で、俺の為に2人で会う事を避けたのが解り、ミキの気遣いに感激した。 「何かあったのか?真琴君も知ってる後輩なんだろ?」 昨日あった事を大まかに、伊織さんに話した。 大学時代の絵美ちゃんの男関係の事、マコが余り良く思って無い事など。 「そうか。だったら、気を使って疲れるのも解るな」 ミキが間に入って右往左往してるのが目に浮かぶ、気を使うミキだからな。 「大学時代は気が合わなかったかもしれ無いけど、お互い社会人になったから大丈夫だと思ってたけど……。マコも思った事を直ぐ言っちゃうから、それで絵美ちゃんもマコに対抗するしで」 「じゃあ、余り大学時代と変わって無かったって事か?」 「外見は大人っぽくなったし、絵美ちゃんって良く言えば余り周りを気にしないんですよ。天真爛漫って言うか、そこが可愛い所でもあるんですけどね」 「空気読まないタイプか?ま、いるな。そう言うのは周りのフォロ-が大変なんだよな。でも、本人は解って無いからな」 「そうなんですよ。悪い子では無いんですけど……。あっ、ごめんなさい。伊織さんの顔見たら安心して、昨日の愚痴言っちゃたぁ~」 「愚痴位、いつでも聞くぞ」 「うん、ありがと。でも、言ったらすっきりしました」 頭をぽんぽんして「そうか、お疲れさん」と労をねぎらうと「えへへ」と可愛く笑う。 肝心な事を聞かないとな。 「それで、今後も誘われたら飲みに行くのか?」 「ん~、あの感じじゃあ、もう誘われ無いとは思うけど、3人で行くのはこりごりです。マコにも断った方が良いと言われてますし、誘われても断りますよ」 その話しを聞いて、一安心した。 「ま、その方が良いな」 ギュッと背後から抱きしめ、ミキの首筋の匂いを嗅ぐ クスクスクス…… 「くすぐったいです~」 「昨日、一緒に居られなかったんだ。少しだけ好きにさせてくれ」 「どうぞ、俺で良ければ」 昨日の分を補充する様に、強くミキを抱きしめた。 昨日は疲れただろうとゆっくり部屋で、俺の持っていたDVDを見て過ごした。 夕飯はミキが作ってくれたパスタとサラダ、野菜たっぷりス-プを美味しく食べていると、リビングにあったミキのスマホが鳴った。 ♪♪♪♪ 箸を置き「ん、マコかな?」と言いながらスマホを取り画面を見て「絵美ちゃん?どうしたんだろう?」 電話に出るミキを、俺は少し離れていた所から眺めていた。 「もしもし、絵美ちゃん?どうしたの?」 「ううん、こっちこそごめんね。気にしないでね、マコも悪いんだから」 ミキの受け答えの声しか聞こえ無いが、昨日会ったお礼とお詫びらしい事は何となく解った。 「えっ、今?今は、恋人と一緒に居るよ」 きちんと恋人と居ると話すミキに安心した。 心のどこかで、自分では感じて無かったが不安だったのかも知れない。 「うん」「うん」「うん」相槌を打つミキ。 挨拶にしては、長い電話だと思っていた。 「えっと、来週は仕事が忙しいから、ごめんね」 「うん」「うん」「そんな事無いよ」「うん」 「じゃあ、わざわざありがとう。またね」 やっと終わったらしい。 スマホを置いて、戻って来て 「絵美ちゃんからでした。昨日のお礼とお詫びの電話でした」 「そうか。それにしては、長かったな?」 「始めは挨拶って感じだったんですけど、ちょっとマコの事を愚痴られて、悪いけど聞き流してました。だって、どっもどっちだから」 「ま、そうだな。それで?」 「来週位に、また、飲みに行きませんか?って誘われたけど、忙しいって断りました」 概ね、俺が漏れ聞こえた事と一緒だった。 「そうだな。疲れるなら断って正解だな」 「はい。でも、ちょっと心苦しいような気がしますけど……」 「ミキが、気に病む事は無い」 「ん~、そうですね。暫くは連絡来ないと思うし」 俺は席を立ち、ミキの座ってる背後から抱きしめて 「ミキは優しいからな。少し聞こえたが、きちんと恋人がいる事を話してくれて嬉しかった」 俺の腕に手を掛け、安心させる様に撫でて 「当たり前です。昨日、飲んだ時にも聞かれたので、付き合ってる人いるって話しましたよ。でも、彼氏とは言えませんでしたけど……」 申し訳無い顔をするから 「付き合ってる人がいるって、言ってくれただけで充分だ。ありがとう」 頭をぽんぽんし、顎を持ち口付けをした。 今は、それで充分だ。 ミキの覚悟が決まるまで、いつまででも待つ。

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