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第290話
1匹の大人しそうな猫を捕まえミキに差し出す。
「ほら」
猫を眺めてただけで我慢してたらしく、嬉しそうに受け取り膝の上に乗せ頭と背中を撫でていた。
あ~、俺もあの猫になりたい。
ミキの膝の上で、気持ち良さそうに寝ている猫が羨ましかった。
隣に座り、一緒に頭を撫でてると1匹の猫が寄って来て、俺の腰辺りに頭を擦りつけて膝の上に乗ってゴロゴロと甘えてくる。
「良いなぁ。何で、伊織さんには寄って来るんだろう?俺の方が猫大好きなのに~」
「ミキは構うタイプだって解るんだろう。動物って、適当な距離感の方が良いんだよ」
「そんなもんなの? 良いなぁ~.良いなぁ~」
「ん、交換するか?」
頭を横に振り
「違う.違う。その猫になりたいって思っただけ。伊織さんに甘えて良いなぁ~って」
おい、こんな所でそんな可愛い事言うなよ。
ミキの天然には、参る。
カフェって言う位だからコ-ヒ-.ラテ.シフォンケ-キを頼んでいた。
店員が持って来て「ここの猫は、捨て猫や保護猫が多いんですよ。たくさん遊んであげて下さいね。では、ごゆっくり」話し立ち去った。
「へえ~、そう言う猫達とは知らなかったな。その割には人懐っこい」
「あ~、あんな事聞いたら尚更可愛くなっちゃう」
「心行くまで、ゆっくり遊べ」
「は~い」
色んな猫と写メを撮り、猫じゃらしで遊んで、猫のおやつをあげた時だけは、ミキも大人気で大喜びしていたのが笑えた。
それから、ミキが「帰ろうか?」って言うまで、ゆったりと猫カフェで過ごした。
「また、来ます」
店員に言って猫カフェを後にし、ビルを出て
「少し、フラフラしてから焼肉屋に行くか?」
「はい」
近くに、大きめの商店街があった。
色んな店を見て歩き面白い物を見つけては笑い、コロッケ屋では「美味しそうだけど、焼肉だから我慢」と残念がり、楽しく端から端まで歩いた。
「ミキ、そろそろ良い時間だ。焼肉屋行こうか?」
「はい」
「車で少し行った所にあるから。そこ行くぞ」
パ-キングまで歩き、車に乗り込み焼肉屋に向かう。
焼肉屋の前で、ミキが立ち止まる。
「ん、どうした?行くぞ」
「伊織さん、焼肉屋さんってここ?」
「そうだが?」
「高そう。俺、もっと安い所で良いです」
「それは今度な。たまには、ミキにも旨い焼肉食べさせたい」
「伊織さんの気持ちは嬉しいです。今度だけですよ。次は、もっと安い所でお願いします」
「解った.解った」
確かに、そこそこ高いがたまには良いだろうと思ったが、しっかり者の奥さんには、もう少し安い方が良かったらしい。
席に着きメニュ-を見て目を見開き「高い.高い」
「俺には勿体無い」と言ってたが、食べて見ると納得の味らしく「高いだけあって、美味しい」「蕩けちゃう~」と絶賛して、美味しそうに食べていた。
やはり、連れて来て良かった。
贅沢をしないミキは、俺が連れてったり買ったりしないと決して贅沢はしない。
外見は、高い物を買ったり贅沢をしそうな感じって言うか、それが似合う見かけとは違い、実際は倹約かでしっかり者だ。
そのアンバランスな所も魅力だ。
それでも、やはりミキだ。
「高いから、程々に食べるのが丁度良い」と言うから「仕方無いな。今度は、庶民的な所に行くか?その方が遠慮しないで、腹いっぱい食べるんだろ?」
「うん。その時は、遠慮無くいっぱい食べちゃいます」
ミキらしいと苦笑し、高い焼肉を程々に美味しく食べて名残惜しいが、ミキを送る為車を出す。
「可愛い~」「この子、綺麗な目してる」
「あ~、癒されるるぅ~」「また、会いに行きたいな」猫カフェで撮った写メを見ながら独り言を呟く。
猫よりよっぽど、ミキの方が可愛い~。
運転をしながらチラチラ様子を見て、俺の方が癒され微笑む。
帰したく無いと思いながらも、ミキの自宅に車を走らせた。
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