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第293話
「待った~?」
「絵美も今、来た所です」
「そう、良かったぁ~」
待ち合わせたカフェに、絵美ちゃんは既に来て待っていた。
向かいの席に着くと直ぐに絵美ちゃんから
「先輩、お休みの所すみません」
「急で驚いたけど……」
絵美ちゃんの顔を見ると目が赤かった。
電話では泣いてたけど…実際会うまでは半信半疑だった。
「絵美ちゃん、目が赤いよ。泣いたの?」
泣く程悩んでいるのか。
「解ります?蒸しタオルしたんだけど……」
絵美ちゃんの前にはラテが置かれていた、俺も店員さんにコ-ヒ-を頼み、1口飲み話し始めた。
「それで、どんな悩みなの?」
「……絵美、何も悪く無いのに」
「絵美ちゃんが悪いかどうかは、悩みを聞かないと解らないよ」
「……皆んなで、絵美の悪口言う」
電話と同じで、なかなか相談事を話さない絵美ちゃんに困り果てる。
ん~、話しが進まない。
「絵美ちゃん、ゆっくりで良いから、始めから話してね」
優しく諭すように話すと少しずつ話し始めた。
「……会社で同じ課の先輩と仲良くしてもらってたんですけど……」
「うん、仲の良い先輩がいたんだね。それで」
「その先輩達と他の課の男性社員の人達と飲む事になって……」
「うん。それで」
「その時は、楽しく飲んでいたんです。何日か後に、たまたま帰りが一緒の男性社員がその飲み会の時に居た人で、挨拶したら夕飯を食べに行こうって誘われて食べに行ったんです」
「うん、夕飯位は別に良いじゃない?」
「……で、仲良くなって、その後も1~2回誘われてデ-トにも行ったんです」
「それで?」
「……その男性社員は、仲良かった先輩の…」
雲行きが怪しくなってきた。
「仲良かった先輩の?」
「……彼氏だったんです。それを他の子が教えてくれたんですけど……」
何かマズい展開かな?
「それで?」
「……先輩は何も言ってこなかったし、その男性社員も普通にご飯とかデ-ト誘うから、絵美は誘われたから行ってただけなんだけど……」
「絵美ちゃんは、先輩の彼氏って解っても誘われたからデ-トしてた訳だ」
「……はい。別に絵美は、何とも思って無いし……。それを仲良い先輩にデ-トしてるのバレて、その先輩が他の子達に絵美の悪口言って……」
展開が読めた。
大学時代から変わらない絵美ちゃんに少し呆れるが、泣きそうな顔の絵美ちゃんに強くは言えないな。
「それで、会社の子達に無視されてるって事?」
「……はい。それもあるけど…。絵美、面倒臭いから先輩と元に戻りたいと思って、次に誘われても断ったんです。で、他の人に誘われたからそっちとデ-トしたりして何人かとデ-トして、もう、先輩の彼氏とは会ってませんアピ-ルしてたんですけど……」
何か、どんどんマズい展開になってる気がする。
「それで?」
「……何故か、色んな男性社員に色仕掛けしてるとか男ったらしとか陰口や悪口言われてるみたいで……」
「絵美ちゃんのやり方が余り良く無かったと思うよ。ちゃんと仲良かった先輩に彼氏とは知らなかったと説明して、会って無い事も話した方が良かったんじゃない?」
「……だってぇ~、絵美、知らなかったし~、絵美から誘った事無いのに~。他の人も絵美から誘ってないですよ?絵美、悪く無いのに~」
被害者意識が高いな。
絵美ちゃんの天真爛漫で人懐っこい所は、男には人気があるのは大学時代からそうだったけど……大学時代から、この手の事で良く相談に乗ったり彼氏の事で相談に乗ったよなぁ、全然成長して無いな。
絵美ちゃんはその気が無いとは話すけど、思わせ振りな態度をとってた事は大学時代もあったから、たぶん今回もそうなんだろうな。
「絵美ちゃん、男の人より女友達作った方が良いよ。絵美ちゃんは彼氏なんかその気になれば直ぐに出来るんだから、その前に本音を話せる友達作った方が良い」
「……絵美だって、作ろうとしてるけど……初めは女友達もできるのに段々と皆んな離れていくの。絵美、友達にも何もして無いのに~」
泣き始めた絵美ちゃんにハンカチを貸し、回りから変な目で見られ、カフェに居づらくなってきた。
時計を見ると昼近かったから場所を変えようと
「絵美ちゃん、取り敢えずお昼食べに行く?奢るよ。場所変えよう」
泣いていた絵美ちゃんが顔を上げ笑顔で「うん、行きた~い」と答えたから、少しは気分転換になれば良いとランチをする事にした。
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