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第298話
先週から絵美ちゃんの事は、まだ、解決して無い。
あれからもミキの話だと水曜日に電話があって、会社の愚痴を30分程聞いたらしいが、誘ってくる事は無かったらしい。
まだ、電話だけなら我慢もできる。
後、少しで仕事も終わる。
先週の金曜は邪魔されたが、今週は大丈夫だろう。
仕事帰りに、俺のマンションに来て日曜日まで過す事になっていた。
先週はどこにも行けなかったから、今週は出掛けるか
チラッと壁に掛けてる時計を見ると、後、5分程で終業になる。
少しだけ残業して、ミキの待ってるマンションに帰るか。
明るい部屋に帰ると夕飯の良い匂いがしてるんだろうな~、そう思えば仕事も捗る。
よし、もう一踏ん張りだ。
終業時間を過ぎても週末の所為か、まだ、田口も佐藤もミキも仕事をしていた。
カタカタカタ……
パソコンの音がする中 ♪♪♪♪~……ミキのスマホが鳴る
机に置いてあったスマホを手に取り、画面を見て眉を寄せていた。
席を外し、廊下で電話に出ていた。
パソコンに向かいながら、嫌な予感がした。
暫くすると俺のスマホにLINEが届いた。
*♪すみません。今日、行く予定キャンセルさせて下さい*♪
スマホを弄ってるのをバレないように、パソコンの影でミキにLINEする。
*♪何か、あったのか?*♪
*♪絵美ちゃんが、会社の近くまで来てるらしく、電話掛かって来ました*♪
*♪飲みに、行くのか?*♪
*♪いいえ。何かあったのかも知れませんから、夕飯食べて話を聞いてきます*♪
*♪そうか、解った。明日は、大丈夫か?*♪
*♪明日、午前中には行きます*♪
*♪解った。気を付けろ。部屋に帰ったら連絡くれ*♪
*♪はい*♪
LINEを終わらせ、暫くパソコンをジッと見て考えていた。
会社の近くにわざわざ来るか?ミキもいい加減断れば良いんだ。
やはり何とかしないとな。
そんな事を考えているとミキが戻り、机の上を片付け帰る用意をしていたのが解った。
田口と佐藤に挨拶し、俺の前でも挨拶する。
「すみません。お先に失礼します」
「お疲れ」
頭を軽く下げ出て行った。
気落ちしている自分が解る。
ミキが来ないなら、早く帰っても仕方無いと仕事をして気を紛らす事にした。
会社を出て、最寄り駅の階段近くに絵美ちゃんが待っていた。
「絵美ちゃん、どうしたの?」
「先輩~。この近くの会社に、書類届けに来たので。そう言えば、先輩の会社この辺だなって思って。この時間なら帰りかなって」
「そうなんだ」
「飲みに行きません?」
「ごめん。飲みには行けないから、ご飯なら良いよ」
「解りました。ご飯行きましょう。絵美~、お腹空いた~」
「何、食べたいの?」
「ん~、ハンバ-グ。ゆっくりしたいから、ドリンクバ-があるファミレスで良いですよ」
「良いの?ファミレスで」
「はい。先輩と一緒なら、どこでも良いんですけどね~」
にこにこ笑う絵美ちゃんは可愛い。
「じゃあ、近くのファミレスに行こうか?」
「はい」
絵美ちゃんと駅の向こう側のファミレスに行き、今日は会社の愚痴は話さなかった、その代わり大学時代の懐かしい話をたくさんした。
絵美ちゃんもにこにこ笑って話し、楽しそうだった。
絵美ちゃんも男の人だけじゃ無く、誰に対してもこんな風なら悩む事も無いのにと、楽しそうに話す絵美ちゃんを見て思った。
届いた料理を食べ終わっても、ドリンクバ-で長居をしてしまった。
「絵美ちゃん、そろそろ帰ろうか?」
「はい。今日は急に誘ったのに、来てくれて嬉しかった~」
「いきなりで驚いたけど、楽しかったよ」
「絵美~。今日話してて、やっぱり先輩が1番優しいし頼れるって思いました。また、絵美の相談乗って下さいね」
「相談って、話し聞くだけだけどね」
「それでも絵美は充分です。今、絵美には先輩しか頼りになる人居ないから。この間も気分転換になって今週も頑張れました。先輩のお陰です」
「そう、それなら良かった。じゃあ、出ようか?」
「はい」
2人分の会計をして、最寄りの駅で絵美ちゃんと分かれた。
改札口で時計を見ると9時前だった。
電車に乗り、このまま自分の所に帰るか伊織さんの所に行くか迷って、伊織さんのマンションに行く事に決めた。
電車の景色を眺め
「伊織さん、驚くかな?早く、会いたい」
呟き、頭の中は伊織さんの事でいっぱいだった。
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