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第299話
田口や佐藤が帰っても、仕事をして遅くなった
マンションに入りエレべ-タ-に乗って部屋に行く最中も本当なら、今頃ミキとイチャイチャしてただろうと思うと、今更ながら絵美ちゃんが憎らしく思う。
部屋の前で鍵を取り出し、暗い気持ちで鍵を回しドアを開けた。
玄関ドアを開けると良い匂いとリビングからの微かな明るい光が廊下を照らしていた。
まさか、ミキか?
期待と嬉しさで、さっきまでの暗い気持ちが吹き飛ぶ
足早にリビングのドアを開けるとキッチンから
「お帰りなさい」
部屋着のミキがエプロンと向日葵のヘアピンを着けてそこに居た。
居ないと思っていたミキがいつもの姿で、この部屋にいる事が凄ぇ~嬉しかった。
鞄だけその場に置いて、キッチンのミキの元に行き、抱きしめて額を合わせ顔を見つめ話す。
「来ないと思ってた」
「会社に居た時は、時間が解らなかったから来ないつもりでいました。絵美ちゃんとファミレスでご飯だけだったから9時頃に駅で分かれて、そのまま会いたいから来ちゃいました」
えへへ……って照れて笑う。
「今日は会えないと思ってたから、凄え~嬉しい」
「伊織さん、仕事し過ぎですよ。もう、帰ってると思ったのに~」
「悪い。ミキが来ないなら早く帰っても仕方無いと思って、仕事をキリが良い所までして来たこんな事なら早く帰れば良かった」
「連絡すれば良かったかな~。帰りの電車で思い立ったから、それと伊織さんをびっくりさせようと思ったのに~」
「いや、びっくりしたがそれ以上に喜びの方が上回ってる」
「ふふふ……夕飯は?」
「まだだ」
「俺は食べて来ちゃったけど、明日食べようと思ってシチュ-にしました。食べます?」
「ああ、食べる。ミキのシチュ-は旨いからな」
「じゃあ、着替えて来て下さい。その間、用意して置きますね」
「解った」
置きっぱなしにしていた鞄を持って、ウキウキしながら寝室に行く。
部屋着に着替えて食卓に着くと、テ-ブルにはシチュ-.サラダが置かれていた。
「旨そう。食べて良いか?」
「はい、召し上がれ」
クスクスクス……
「ん、旨い.旨い」
甘く優しい味のシチュ-は、本当に旨かった。
「ん、さつま芋?甘いと思ったら、さつま芋か~」
「さつま芋の方が甘くって、ホクホクしてシチュ-に合うんですよ。後、コ-ンもたくさん入れました」
「確かに、旨い。コ-ンも良いアクセントになってる。旨い.旨い」
「シチュ-だけじゃ無く、ご飯も食べて下さいね」
「忘れてた。シチュ-が旨くって」
クスクスクス……
やはりミキが居ると和む。
俺との約束してた今日から泊まる予定が反故されたと思ったが、きちんと守ってくれた。
俺と一緒に居たいと考えてくれた、そういうミキが好きだ。
俺が食べてるのをにこにこしながら見てる、その笑顔だけで心が癒される。
仕事は基本的に好きだが、週末にミキと過ごせると思うと平日の仕事にも張りが出る、いや週末ミキと過ごす為にも休日出勤や休日仕事しないようにしている。
週末を楽しみにしている俺達の所に、図々しく入り込んで来ようとするならば、俺にも考えがある。
この大切な時間を誰にも邪魔はさせない。
ミキとの穏やかな2人っきりの週末を守る為にも……。
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