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第300話
♪♪♪♪~.♪♪♪♪~………
携帯の電子音で起こされた。
俺のか?とサイドテ-ブルに置いといたスマホを手に取り画面を見ると真っ暗だった。
「俺じゃ無いって事は、ミキのか?」
隣で寝てるミキに声を掛ける。
「おい、ミキの携帯鳴ってるぞ」
そう言ってる間に、しつこく鳴っていたが1度切れ、また直ぐに鳴る。
♪♪♪♪~.♪♪♪♪~……
ミキの携帯を手に取り手渡す時に‘水木絵美’と名前があった気がした。
まさかな、昨日も会っていたしな。
それは無いかと直ぐミキに手渡した。
頭が覚醒して無いミキは、相手を確認せずに電話に出た。
「えっ、絵美ちゃん。どうしたの?」
隣にいた俺の顔をチラッと見て、困った顔をしていた
体を起こしベットで座りながら話すミキの腿に頭を乗せると、微笑み撫でてくれた。
絵美ちゃんの声はボソボソと聞こえるが、何を言ってるか解らない。
ミキの声だけは、はっきり聞こえる。
「うん。こっちこそ昨日は、ありがとう」
「えっ、ハンカチ?わざわざ返さなくって良いよ」
「うん、うん。今から?」
チラッと俺を見て
「悪いけ……」
断ろうとした気配で、話を遮られたらしい。
「えっ、そんな事無いよ。うん、うん」
ミキの声が小さくなり、困って眉が下がっていた。
「絵美ちゃん、そんな事無いから泣かないで、うん、解ったから。話し聞くからね。だから、泣かないで」
どうも話の内容を推測すると昨日、何らかでハンカチを借りたから返したいと口実つけ、ミキに会いたかったが、ミキが断ろうとしたのを察して、相談という形に変えて泣き落としに入ったようだ。
今は俺との大事な時間だ、行くなよミキと言いたい所だが……。
「うん。解った。話し聞くだけだから午前中だけで良い?」
「じゃあ、この間待ち合わせた品川駅近くのカフェで」
「うん。今から向かうからね、先に着いてたら入ってて。うん、じゃあ。moda-caffeで」
品川駅のmoda-caffeか、どこでもある一般的なカフェだ。
電話を切ったミキが上から俺の頭を撫でながら眉を下げ困った顔で話す。
「……伊織さん。すみません、絵美ちゃんと少しだけ会って来ます」
「……行くなって言っても、ミキは放っとけ無いから行くんだろう?」
「すみません。絵美ちゃん、泣いちゃって。断ろうと思ったんですが……先輩しか聞いてくれる人が居ないとか先輩だけが頼りなんですって言って泣くんです」
「……今度こそ、昼頃には戻って来るんだろう」
「はい。必ず」
「解った。待ってるから行け」
「すみません」
そう言って、ベットを降り出掛ける準備を始めるミキをベッドから眺めて考えに耽っていた。
「い…伊織さん?」
「あっ、悪い。ボ-としてた」
ふふふ……
準備が出来たのかベッドの縁に座り
「まだ、眠いなら2度寝してて下さいね。なるべく、早く戻って来ますね」
チュッ.チュッと2回、俺の唇にキスする。
「おはようと行ってきますのキスです」
ふふふ……
手を伸ばそうとした時に、ベッドから立ち上がり歩き出し寝室を出る間際に振り向き
「なるべく、早く戻りますから」
もう1度話し、笑顔を向けて出て行った。
ミキが部屋から居なくなると途端に、シ-ンとした静けさに変わった。
「何なんだ、あの女!」
ミキが居なくなり、絵美ちゃんに対して腹が立ち悪態をつく。
2~3分程イライラしてたが、こうしては居られないとスマホを手に取り電話を掛けた。
こう何度も2人の時間を邪魔されて、以前から考えていた事を行動に移す事にした。
♪♪♪♪~.♪♪♪♪~……
頼みの綱の相手は、あいつだな。
「早く、出ろ!」
耳元で鳴る電子音にイライラした。
伊織さんの部屋から出て、絵美ちゃんとの待ち合わせのカフェに向かう途中で、俺は密かに決意していた。
頼って来てくれる絵美ちゃんは確かに可愛いけど………伊織さんと過ごす時間を削ってまで、会う必要があるんだろうか?
俺が絵美ちゃんを甘やかしてるから、他の人に相談しないのかも知れない。
少し距離を置いた方が、絵美ちゃんの為なのかも知れ無い。
前にも話したけど、今日こそは絵美ちゃんに女友達を作って相談出来る人を作った方が良いと
真剣に言ってみよう。
少しキツめに話した方が良いのかなぁ~。
出来るか解らないけど、誰にも邪魔されず伊織さんとゆっくり過ごしたい、その為にも頑張ろう。
そう決意して絵美ちゃんとの待ち合わせ場所に向かった。
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