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第306話

「何だか、疲れたな」 部屋に着きソファにドサッと座ると、一気に疲れが出た感じがした。 俺の側に寄って来たミキが神妙な顔で立ち尽くす。 「すいません。伊織さんにまで迷惑掛けて」謝ってくる。 「ほら、そんな所立ってるな。こっち来い」 ミキを呼び寄せ、ソファからラグに座りミキを背後から抱きしめた。 「はあ~、やっぱりこの体勢が落ち着く。ミキ、何度も謝るな。ミキは悪い事は何にもして無いんだからな」 頭をぽんぽんしてやると 「……伊織さんとの過ごす時間が大切なのに……俺、絵美ちゃんに頼られて少し嬉しかったのも本当です。こんな俺でも頼って来てくれて……だから、直ぐに、はっきり言えなかった……伊織さんはいつも俺の側にいてくれるからって、俺、伊織さんに甘えてたんだと思う。だからって伊織さんとの時間削ってまで会う必要無かったのに……俺が頼られて自惚れてたんです」 ギュッとミキを抱きしめ 「誰だって、頼られたら嬉しくなる。何度も言うが絵美ちゃんがミキの優しさに漬け込んだのも本当の事だ確かに、ミキと会えない時間やこの部屋を出て行った時は怒るとか嫉妬なんか縒り寂しかった…かな?絵美ちゃんにミキを取られるとは、全然思わなかったしそれは本当だ。余裕とかじゃなく、俺がどれだけミキを愛してるか?誰よりもミキの事を想ってるか?それはミキが1番解ってるという自信があるからな。そうだろ?」 振り向き、涙を溜めてる目を拭きながら 「はい。俺が1番よく解ってます。だから、甘えてました」 「解ってるならそれで良い。今日と明日で寂しかった分取り戻すからな。覚悟しろよ」 話題を変え明るく話すと、ミキも泣き笑いで答える。 「はい。俺にたくさん甘えて下さい。今から明日いっぱいは、この部屋から出ないで伊織さんとずっと片時も離れず側にいます」 「良い考えだな。だが、今はキスが先だ」 ミキの顎に手を掛け、軽くチュッと唇に落とす。 「ふう~。何だか、疲れたな。少し昼寝するか」 「昼寝って。もう、夕方ですよ。今、寝たら夜寝られなくなりますよ?」 外は薄暗くなり始めていた。 絵美ちゃん騒動から沙織の趣味込みのお願い事と、色々あり過ぎて疲労困憊だ。 「ん~、どうせ夜は寝る暇無いし、今のうちに体力回復しておかなきゃな。ミキも休め。夜は寝かせ無いからな。そのつもりでな」 俺の言ってる意味が解り、頬を染めて恥じらう仕草をする。 「え~、程々でお願いします。ベットで寝ます?ここで?」 いつもの台詞に笑いが漏れる。 くっくっくっくっ…… 「ベットだと本格的に寝ちまうからな~」 「じゃあ、ここで少し寝ましょう」 俺がラグに横になるとミキも隣で横になり、俺の頭を胸に抱え込む。 「この体勢も2回目だな。ミキの匂いがして落ち着く」 「京都旅行の前に日以来ですね。俺も伊織さんの胸に顔を埋めると安心してゆっくり寝られるから、伊織さんもそうかと思って」 ミキのアルトの声が心地良く聞こえ心臓の音.ミキの匂い.眠気を誘う。 「本当だな。安心出来る」 「伊織さん、ありがとう。大好き」 俺の背中をゆっくり寝かせつけるように撫でて気持ち良い。 「大好きって何度も言ってくれ。凄く安心して眠れる」 クスクスクス…… 「何度でも。伊織さんが眠るまで言い続けますね」 「……ああ…」 話していても目蓋が閉じ直ぐに眠れそうだ。 「伊織さん…大好き……優しい所が好き……男らしい所が大好き……仕事出来る所も大好き……○△□…き…………すき……… 俺の好き所を話してくれるミキの声をもっと聞いて居たいが……だめだ……ねむ…。 柔らかいアルトの声を遠くに聞き、幸せな気分のまま眠ってしまった。 ……大好き…イチャイチャしてる伊織さんも大好……き……伊織さん?…」 そっと顔を覗くとス-.ス-と寝息が聞こえた。 「幸せそうな顔してる。本当に大好き」 俺も伊織さんの頭を抱え、髪の匂いを嗅いで自然と眠りについた。

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