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第316話
伊織さん達が打ち解けあってる間、俺とマコは、別室でやる気満々の沙織さんに圧倒されていた。
目をキラキラさせ楽しそうにテキパキ手を動かし話す沙織に何も言えず、文字通り人形の様に指示に従っていた。
「さて、マコちゃんのお化粧も済んだし、次はヨシ君ね。その間マコちゃんは、隣の部屋で下がってる服を着てね。右の方の服ね」
「……はい」
俺が沙織さんのいるドレッサーの前に座ると、部屋を出て行ったマコが慌てて用意された服を持って戻って来た。
「どうしたの?」
「どうしたの?じゃないですよ。沙織さん、これも着なきゃいけないんですか?」
「あら、当たり前よ。下に男の人の下着着てるのバレたら、周りの人に変な目で見られるわよ」
マコが持って来た物を見るとピンクのブラ&ショ-ツだった。
マコ、可哀想に。
初めは、ショックだしなかなか受け入れられないよね俺は女装2回めだからある程度予想ついていたけど……沙織さんは手を抜かないし、やるとなると徹底的にするからな~。
「僕……無理です」
恥ずかしいと俯くマコに励ましの声を掛ける。
「マコ、俺も一緒だし、マコだけじゃないからね。それに、男が女装してるとバレたら祐さんが恥ずかしい思いするんだよ。ここまで来たら沙織さんに任せよう」
俺が祐さんの事を持ち出すと暫く葛藤していたマコが渋々承諾し「……解った。祐さんに恥ずかしい思いさせたくないから」と言って隣の部屋に戻った。
俺に化粧をしながら「ヨシ君、ありがとう。どうせなら、徹底的に女の子に見せて気兼ねしないで、堂々とデ-トさせたいと思って」
沙織さんなりの俺とマコに対しての気遣いに俺も感激した。
沙織さんの趣味で楽しみたいだけと思った俺は最低だと自分で思っていたが、それは沙織さんの作戦だとは全然気付かず、沙織さんの思うままにされていた。
1時間弱掛け俺とマコの女装が終わり、沙織さんも着替えて来てた。
「さて、お披露目と参りますか?首を長くして待ってるわよ。大丈夫、2人共可愛いわよ。どこからどう見ても女の子だから」
マコは小さいし可愛いらしいけど、俺は……と思ってると「ミキは綺麗だから、何着ても似合うけど、僕は……」マコも同じ様に思っていたようだ。
「マコの方が可愛いよ。凄くポニ-テ-ルも服も似合ってる」
「何言ってんの! ミキの方が綺麗で可愛いよ」
言い合ってると沙織さんが間に入って来た。
「あら~、2人共似合ってるわよ。マコちゃんのイメ-ジは元気な女の子風で、ヨシ君は小悪魔系女の子にしてみたの。我ながら上出来よ~、ん、可愛い~」
そう言ってカシャッ.カシャッ……
「ほら、笑って」
カシャッ.カシャ…と写メを撮られた。
「ほら、本当に行くわよ。時間無いんだから」
背中を押されて、俺達は伊織さん達が待つ応接間に歩かされた。
先に沙織さんが入って行きドアの外に待たされ、マコと2人こんな格好見せてどんな反応するかドキドキして落ち着かない。
沙織が部屋に入ってきて
「お待ちどうさま。凄~く、可愛いわよ~。もう、頑張った甲斐があったわ。そこら辺の女の子より可愛い~からね。み・た・い」
御託を並べて自画自賛し焦らす沙織に早く見たいとイライラするのと、どんなミキになってるのかドキドキワクワクする。
祐一が痺れを切らし沙織に声を掛ける。
「沙織さん、早く見たいです」
「そうね~、余り焦らしても可哀想だからね」
ドアに向かい少しだけ開けて顔を出し「ヨシ君、マコちゃん。入って来て」と言ったのが聞こえドキドキ・ワクワクが激しくなった。
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