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第320話

「伊織さん、アレ乗ってみませんか?」 ミキが指さす方を見れば、カラフルな可愛い見た目の2人乗りの小さなジェットコースターだった。 マット・マウス? 子供が乗る様な感じか?これなら楽勝だな。 「解った、乗ろう」 乗ってから俺は後悔した。 見た目に反して、右に左に急旋回の連続だ。 マウスってねずみがあっちこっち動き回るって事か~、くそ~.見た目に騙された~。 隣のミキは、キャッ.キャッと笑って楽しそうだ。 乗り物を降りて何でも無い顔を保ち話す。 「見た目よりハ-ドだったな」 「そうですか~?凄く~楽しかった~」 ここにはハ-ドな乗り物しか無いのか? これならDLシィ-の方がマシだったか? 「伊織さん、次はアレ乗ろう」 今度は何だ? アンティ・アンズ? 10m程の空中ブランコか~、ま、これならイケるか。 「乗るか」 乗ってみると高さが10m程で徐々にスピードを上げ、浮遊感と風を切って回る爽快感で結構面白かった。 「結構、面白かったな」 「うん」 「次は、乗り物じゃないのも行こう」 パンフレットを見て 「伊織さん、これは?」 富士飛行社? ふ~ん、座ってられるのか。 「良いな。そこに行こう」 巨大スクリーンに富士山周辺をフライト映像で楽しめ座席も連動し吹き抜ける風.湖面の飛沫や花の香りと仕掛けがしてあり楽しかった。 今までのアトラクションでは、ここが1番良かった。 「良かったな」 「富士山の周辺も行かなくっても行った気分になって得しちゃった感じですね」 「そうだな、仕掛けも工夫してたし飽きなかった」 これで気分も一層出来、調子に乗ったのが悪かった。 「次は?ミキは、どこに行きたい?」 パンフレットを見て悩んでいたが 「これは?さっき伊織さんも楽しそうだったし」 鉄骨番長?はあ~、なんつ-ネ-ミングだよ。 パンフレットには、50mを超える空中ブランコ型アトラクションとあった。 マジかよ~。 「行こう。もう時間無いから~」 腕を組まれ連れて行かれる。 実物を見て溜息が出た。 4本のワイヤーに取り付けられたブランコが上昇や下降を繰り返し水平回転していた。 ゲッ、高え~な~。 「伊織さん、凄い高いですね。なんか不安になってきました」 不安気な顔をするミキに「大丈夫、俺がいる」とついついカッコつけてしまった。 「伊織さん、隣に乗って手握ってて下さいね」 可愛いお願いに、手でも何でも握ってやると思った。 「解った、握っててやるから安心しろ」 「はい」 安心したのか、ふわりと微笑んだ。 あ~、可愛い。 そこまでは良かったが、隣同士で並びアトラクションがスタートする前に、約束通りにミキの手を握る。 高く上がり下で歩いてる人が小さく、豆粒みたいに見える。 マズい、乗ってみると思ったより高い。 下を見るなと自分に言い聞かせ、横のミキを見る。 「伊織さん、凄~く高いですね」 「ああ、そうだな。ミキ、足をブラブラするな、危ないから」 「は~い」 あんなに不安そうだったのに、足なんかブラブラして余裕みたいだ。 アトラクションがスタートすると、そのまま飛ばされるんじゃ無いかと思う程の浮遊感と風を強く感じ息苦しい。 繋いだ手をギュっと握り締める。 「凄~い.凄~い」 隣の声に反応出来ない。 さっきのが空中ブランコなら、これはスカイダイビングだ~。 やっと地上に着いた時は浮遊感でフワフワし、足が地に着いて無い感じだ。 「凄~く高かったですね~。でも、空が近くって気持ち良かった~」 あんなにスタートする前は不安がってたのが、嘘見たいにニコニコして話す。 「そうか、良かったな」 「あっ、伊織さん。時間.時間」 2人っきりの時間は、終わるようだ。 チラッと回りを確認して、素早くミキの唇にチュッとキスし、俺の予想外の行動に驚いた顔をしているミキに「ほら、時間無いぞ」手を繋ぎ歩き出すと、今度はミキが足を止め背伸びし「伊織さん、大好き」と耳元で囁かれた。 抱きしめたいのを我慢し「俺も」と言って、待ち合わせ場所に手を繋ぎ歩いて行く。 可愛い~事をするミキに骨抜きにされた。

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