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第327話
会社も3月末決算で、俺も忙しくなった。
平日は9時過ぎに部屋に帰り侘しい夕飯を食べ、毎日欠かさないLINEを癒しにし、週末は金曜日に仕事帰りにミキが先に俺のマンションに来て夕飯を作ってくれ日曜日まで泊まって行く週末が続いた。
平日の暗い部屋に帰り買ってきた弁当を食べたりカップラーメンを食べたりしていたから、金曜の夜に明るい部屋に帰り美味しそうな夕飯を食べ、ミキがいる週末がどんなに俺に活力を与えてるか解らない程だ。
土曜日の午前中に書斎に入り持ち帰った仕事をこなし時折、ミキが様子見ながらコ-ヒ-を持って来てくれる
ミキは俺が仕事してる間は部屋の掃除.洗濯をし、後はアクセサリ-作りしたり雑誌を見たりしている。
午後から夕飯の材料を買うついでに散歩し、そんな何でも無い日々もミキがいるだけで癒される。
いつも通りおやすみLINEをした。
*♪ミキ、今、帰った*♪
*♪お疲れ様です。やはり3月決算で忙しそうですね*♪
*♪それも後少しだ。どこにも行けず悪いな*♪
*♪そんな事はいいですよ。伊織さんと一緒に居られるだけで充分です。余り無理しないで下さいね*♪
*♪ありがとう。まあ、程々にするから安心しろ*♪
*♪ちゃんと食べて下さいね*♪
*♪解ってる*♪
*♪じゃあ、早く休んで下さいね*♪
*♪解った。ミキもな。おやすみ*♪
*♪おやすみなさい*♪
そんな遣り取りがあった翌日はミキが業者回りと出版社の打ち合わせで直行直帰だった。
その日の夜は顔も見れなかったと、声を聞きたくなりLINEじゃ無く電話にした。
♪♪♪♪…♪♪♪♪…
「はい」
「悪いな、こんな時間に。今日は顔を見れなかったから声だけでもと思って電話した」
「ふふふ…大丈夫ですよ。まだ10時じゃないですか。こんな時間までお仕事?」
「いや、9時過ぎに帰って飯食べて風呂入った所だ」
「ケホッ.ケホッ…何、食べたんですか?」
「ん、コンビニ弁当」
「もう、そんなのばっかり食べて…ケホッケホッ」
「面倒だし。あ~ミキの飯が恋しい」
「クスクスクス…ケホッ。今度、また、鍋でも作りますね。もうすぐ季節的に食べられなくなりますからね。」
「ん、頼む。ミキ、風邪か?」
「別に熱も無いですし大丈夫です。時々、咳が出るだけで」
「早く休めよ」
「はい…ケホッケホッ…」
「電話切るから早く寝ろ。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
その日は咳が出る位で声も何とも無かったから寝てれば治ると、気に止めず電話を切った。
翌日の午前中は咳しながらも普通に仕事をしていたが午後からミキの様子が明らかにおかしかった。
田口も佐藤も気が付き声を掛けていた。
「香坂、風邪か?」
「すみません。ケホッ.ケホッ…気になりますよね」
「いや、咳はいいが顔色も良く無いぞ」
「香坂、只でさえ色白なのに青白くなってるぞ。熱は?」
「すみません、佐藤さんにまで気を使わせてケホッ.ケホッ…朝、測った時は平熱でしたケホッ.ケホッ……咳だけですから」
そんな会話を聞いて、俺も見兼ねて声を掛ける。
「香坂、今日は残業しないで定時で帰れ。早く休め」
「ケホッ.ケホッ…すみません」
「そうだぞ、早く帰って薬飲んで寝ろよ」
「咳の時はマスクして寝た方が良いって聞いた事あるぞ」
「佐藤、博識だな?」
「いやぁ~、それ程でも。あと、田舎のばぁちゃんが風邪引いた時は、ネギを首に巻くと良いとか梅干しを入れた白湯飲むと良いって言ってたぞ」
「どれも迷信だな」
「田口さん、迷信を侮れなかれですよ」
「ケホッ.ケホッ…ありがとうございます。田口さん、佐藤さん。ケホッ.ケホッ…あと少しで定時ですから、今日は早く帰りますケホッ.ケホッ…すみません」
「そうしろ」
「早く直せよ」
本人は咳だけって言ってたが、それからも怠そうに仕事をして定時で帰ったミキを自席から見送った。
その日は俺も気になり、部屋に着いて直ぐに電話をした。
♪♪♪♪~♪♪♪♪~♪♪♪♪……
なかなか出ない電話に寝てるかと電話を切ろうとした時に
「……はい」
「ミキ、大丈夫か?寝てたか?熱は?咳は?」
「ケホッ.ケホッ…伊織さん、薬飲んで少し寝てましたケホッ.ケホッ…熱は37度8分ありました。咳はケホッ.ケホッまだ出ますけど、寝たら少し楽になりました」
「そうか、ゆっくり休め。寝てた所悪いな、どうしても気になって」
「ふふふ…電話くれて嬉しかったですケホッ.ケホッ…」
「そうか、でも、もう切るな。暖かくして休め。早く直せよ」
「ケホッ.ケホッ…はい」
「おやすみ」
「ケホッ…はい」
その日は薬を飲んだしミキも大丈夫って言ってのを真に受け、俺も寝る為に風呂場に向かった。
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