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第328話
次の日会社に出勤するとミキの姿が見当たらなかった
ボ-ドを見ても直行とは書いて無かった。
遅刻か?珍しいと思ったが、まだ就業時間には10分程時間がある。
田口も佐藤も自席に座り朝から話しをしていた。
♪♪♪♪~♪♪♪♪…
「あら、香坂君。そうなの?大丈夫?」
「解ったわ、課長には話して置くから病院行きなさいよ。はい、お大事に」
上野さんが取った電話は、会話からしてミキからのようだ。
「上野さん、香坂からですか?」
気になり堪らず先に声を掛ける。
「そうです。今日、体が怠いからお休みさせて欲しいって。何だか、声もいつもの声じゃ無いし、咳も出てるようだから病院行くように言いましたけど。今、熱が上がる風邪が流行ってるから、大丈夫かしら」
「熱が上がる風邪ですか?」
「うちの子達の学校でも、何人か熱が上がって休んでる子がいるみたいで」
「そうですか、解りました。有給があるはずだし、出勤した時にでも有給届け出すように話して下さい」
「はい、解りました」
「香坂、風邪か~。やはり外回りで移されたのか?昨日、顔色悪かったし悪化したか?」
「俺のばぁちゃんのネギか梅干し試したかな?」
「試すわけねぇ~だろ。今の時代薬局で薬も良いの売ってるしな」
ごちゃごちゃ言ってる2人に「ほら、時間だ。仕事.仕事。お前達も風邪に気を付けろよ」声を掛け仕事を開始したが、気持ちの上では心配でしょうがなかった。
昼休憩の時に寝てると悪いと思いLINEしたが、3時過ぎても既読も返信も無い。
寝てるのか?それとも病院か?
何でもいいが早く連絡だけ欲しいと、仕事も手につかない程気になり出した。
決算書類等あるが、このまま仕事しても気になって仕事も捗らない。
定時になるのを待って机の上を片付け、田口と佐藤に声を掛け先に課を後にする。
背後から「珍しい」とか「彼女とデ-トじゃないんですか?」と聞こえたが、無視し足早にエレべ-タ-に乗った。
乗ってる電車の中でもLINEを確認するが、やはり既読にもなって無かった。
気持ちが焦ってる俺だが電車はいつも通りのスピードで走り、その擬かしさに焦りと妄想が倍増する。
最寄りのコンビニで念の為にスポーツドリンクとゼリーやレトルトのおかゆを買い、ミキの部屋に走った。
ピンポン♪.ピンポン♪……
「出ないか、それとも居ないのか?」
合鍵を取り出し玄関を開けリビングには居なかったが、テ-ブルには病院に行ったらしい薬と冷えピタ.水が置いてあった。
「病院には、行ったのか」
ここに居ないとすれば寝室しかない。
寝室のドアを開けると、ベットの布団がこんもりと盛り上がって人が寝ているのが解った。
「ミキ?」
声を掛けるが反応が無い。
ベットの側に近付き顔を覗き込むと、熱がある所為で真っ赤な顔をして、額には冷えピタを貼りマスクをしているミキの顔が見えた。
寝ている息遣いも荒くゼイ.ゼイしていた。
「こりゃ、結構熱が出てるな」
辛そうなミキの寝顔を見てそう思った。
ここに1人で置いておけない。
タクシーを呼び、その間に熱を計り声を掛ける。
「39度5分か~、高いな。ミキ、解るか?辛い所悪いが移動するぞ。取り敢えずスポーツドリンク飲め」
体を起こし支え、少しずつスポーツドリンクを飲ませる。
コクッ.コクッ.ゴクン。
「…あれ、伊織さん?」
「ああ、俺だ。病院行ったんだな。偉いぞ」
頭をぽんぽんすると赤い顔でふわりと笑う。
「夢?……伊織さん、大好き」
熱で夢と現実が混雑してるらしいが、それでも俺を見て‘大好き’と言うミキが愛おしい。
「夢じゃない。タクシー来るまで少し寝てろ」
また、布団に逆戻りだ。
ゼイ.ゼイ呼吸しながら目を閉じた。
薬.冷えピタ.買って来たスポーツドリンクとマスクを纏めてると、外からプッ.プッとクラクションの音が聞こえた。
直ぐに外に出て、纏めた荷物をタクシーに乗せ運転手に声を掛ける。
「すいません。もう1人連れて来ますから待ってて下さい」
直ぐに部屋に戻り、ミキに厚手のカーディガンを掛けお姫様抱きで玄関に向かい、そのまま鍵を閉めタクシーに乗せ俺のマンションに向かった。
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