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第348話
ゴォ-.ゴォ-……
風呂から上がり、いつも通りミキの髪を乾かしていた
買ってきたアクセサリー雑誌を見ているミキの背後で髪を乾かしている何ともゆったりとした、この時間が俺は好きだ。
数分もすれば濡れた髪がふわふわとなる。
「乾いたぞ」
ふわふわの頭に唇を落とす、これもいつもの事だ。
雑誌を閉じ、俺の方を振り返り「ありがとうございます」きちんとお礼を言うのも、いつもの事だ。
こんな何でも無い、いつもの事が増えて嬉しさを感じる。
そのまま背後から抱きしめ、この落ち着く感じもいつもの事だと思っていた。
「伊織さん、お願いがあるんですけど…」
「何だ?ミキのお願いなら、何でも聞くぞ」
滅多に無いミキからのお願いに、どんな難題でも叶えてやるつもりで話す。
「えっとぉ~。俺が風邪引いた時に、看病してくれた優希さんにお礼がしたいんです。寝込んでいたから、きちんとお礼して無かったし、治ってからは、伊織さんが決算で忙しそうで言えなかったから、時間経っちゃってるけど」
「気にする事無いと思うが。お礼は、あの時俺が言ったし」
「でも、俺もきちんとお礼したいから。本当は手料理でも作って、おもて成しすれば良いんだろうけど…ちょっと自信無いから、大将のお店でどうですか?でも個室無いからなぁ。どこか個室ある所が良いかな?あっ、伊織さん、お店の料金は俺が払いますからね、俺がお礼したいんだから。あと龍臣さんにも1度会いたかったので、優希さんと一緒に来られる都合の良い日程聞いてもらえますか?」
先生いや優希さんは解るが、なぜ?龍臣に会いたいんだ、出来れば龍臣とは会わせたくない。
ミキは強引なタイプに弱いからな。
俺を上回る強引さだ。
もしアイツが本気になったら、俺に勝ち目が無いのも解ってるが、それでも俺の全力で阻止するが。
龍臣は、昔は来る者拒まず去る者追わずって感じだったが、本来は美形好きだ。
ミキの事を気に入るはずだ。
今は、優希さんが居るからミキとどうのこうのなるはずが無いのも解ってるが……。
「龍臣もか?」
「はい。前から伊織さんに話しだけ聞いてて、1度会って見たかったんです。祐さんと龍臣さんは、伊織さんの親友でしょ?俺の友達ってマコしか居ないから、伊織さんの知り合いの人と仲良くして頂くのが嬉しいんです。大将も沙織さん.矢嶋さんも、伊織さんのお陰で知り合えたから。俺の中では、遠慮無く伊織さんの恋人って堂々と話せる人達なんです」
龍臣に興味があるって訳じゃなく俺の親友だから会いたいのか、それを聞いて心の中のモヤモヤが晴れた気がした。
「ありがとうな。いつも俺の周りの奴にも仲良くしてくれて。明日、龍臣に連絡してみるが。龍臣は忙しいから無理かも知れんが、優希さんだけでも会えるように言ってみるな」
「ありがとうございます。優希さんだけでも…龍臣さんは無理には言いません。また、都合の良い時にでも会えれば良いです。あ~優希さんに会ったら、聞きたい事がたくさんあるんですよ~」
「優希さんに?何だ?」
「伊織さんの高校生の頃の話しを聞きたいなぁ~って。風邪引いてた時も少し話してくれたような気がするんですけど…熱でうる覚えなんです」
ヤバい。
高校生の頃の俺は最低だったからな、先生から話されたらヤバい事だらけだ。
ミキと話す前に、先生に余計な事言わないように釘を刺すしかないな。
「大した話しは、無いと思うが…」
「でも…伊織さんの高校生の話しを聞いて見たいんです。俺の知らない伊織さんを少しでも知りたくって~、ダメですか?」
上目遣いで話され、可愛い過ぎて何でも叶えてやりたくなる。
「いや、ダメって訳じゃ無いが…」
「……聞いちゃいけない無い感じですか?それとも俺に知られると困る事でも?」
図星を指され一瞬言葉を失うが、直ぐに平静を装い頭をフル回転させどう対応するか考える。
先生には釘を刺して、当たり障り無い話しをして貰うか。
「ま、聞きたいなら別に構わないが。一応言っておくぞ。過去の事だからな。ミキには今の俺を見て欲しい」
「解ってます。伊織さんは俺の最高の恋人です」
「俺に摂っても、ミキは自慢の恋人だ」
良い雰囲気だが、今日はイチャイチャで我慢しようと強く抱きしめた。
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