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第354話
「伊織さん、これで良いですか?どこか変じゃないですか?」
Vの白のロンTに黒のスキニーパンツ.腰に巻いた青系のチェックシャツとシンプルだが、お洒落で決め過ぎずカジュアルにしていた。
それに薄茶のコ-ディガンを羽織っていた。
Vの白のロンTから赤のシ-グラスのネックレスが見え隠れしていた。
「ミキに良く似合ってる」
「本当?良かった~。あっ、伊織さんも着替えないと…」
「ああ、俺も着替えて来る」
ミキが着替えるのを待って、ソファでテレビを見ていた。
寝室のクロ-ゼットを開け、少し迷ってから決めた服に着替えリビングに戻る。
「伊織さんも凄~く似合ってますよ」
「ありがとう」
俺の服はやはり紺のVのロンTにデニムスキニーパンツを合わせ、黒のテ-ラ-ジャケットを羽織ってる。
俺はわざとミキに合わせVのロングTシャツを着る事にした。
もちろん俺の首元にも、ミキからの青のシ-グラスネックレスが見え隠れしている。
さり気なくペアネックレスを見せる為にVのロングTにした。
そして手首には、ミキも俺も紐皮ブレスレッドを着けてある。
所々、よく見れば解るように、色違いのお揃いの物をわざと合わせた。
必ず龍臣がミキを気に入る事は、長い付き合いの俺には手に取るように解る。
ま、優希さんがいるから大丈夫だと思うが、念の為に牽制しておく事にした。
コイツは俺の者だと解るアピールだ。
我ながら子供っぽい事をしてると思うが、これも俺と龍臣の関係を拗らせ無い為だ。
昔のあいつを知ってるから尚更だ。
欲しい物は、何としてもどんな手を使っても手に入れる事を、イヤって程見てきたからな。
今のあいつは優希さんしか見てないのも解ってるが、ミキの魅力は老若男女問わない程破壊力があるからな
万が一を考えての対抗策だ。
そんな浅ましい考えをしてると思って無いミキは、俺の姿を見てさっきから「カッコイイ」「似合う~」「あ~、また皆んな伊織さんを見るんだろうなぁ~」と自分の事を棚に上げて、解って無いミキに苦労させられる
「ほら、余計な心配してないで。そろそろ出掛けよう電車で行くんだろう?帰りはタクシーな」
「段々と俺の考えてる事が解ってきてますね。帰りは飲んでるしタクシーで帰りましょう」
頭をぽんぽんし
「それだけミキと長い時間一緒に居るって事と、俺が常にミキの事を考えてるって事だな」
「お互いの事解り合えるって、嬉しいですね」
「そうだな。そろそろ本当に出掛けよう。主役が遅れたら洒落になんねぇからな」
そんな遣り取りをして、おやじの店に向かった。
電車の中でもミキを見て、ヒソヒソ話す女子高生やOLそして男か確認するようにジッと見つめる男達と周りは騒がしいが、当の本人は周りの事など気付かないから不思議だ。
本人に‘綺麗’だとか‘美人’だとかの自覚が全然無い。
俺は周りをさり気なく牽制しながらも、ミキの話を聞いていた。
「伊織さん、ドキドキしてきた~」
胸に手を当て可愛い仕草をすると「可愛い~」「男?女?どっちでも良い~。可愛い~」「綺麗、ずっと見てられる~」と聞こえるか聞こえないかの声で話声が聞こえた。
「そんなに緊張するような奴じゃないぞ。いつも通りのミキで大丈夫だ」
「はい、解ってはいるんですけど……会うまでは緊張します」
「今から緊張してたら、保たないぞ」
「そうですね」
にこっと笑うと周りが、またザワザワした。
ミキの行動を一々チェックされ、ゆっくり話も出来ない。
あ~、早く着かねぇ~かなぁ。
こんな所でイチャイチャも出来ず、ミキに触りたい気持ちを抑えていた。
おやじの店に行ったら気にせずイチャイチャしてやる
周りのウザさに、うんざりしていた。
俺はそう思っていたが、実は周りでは俺とミキの2人が男同士のカップルじゃないか?それでもお似合いの2人だと、温かく見守られていた事は知らなかった。
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