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第358話

優希さんと真琴君は会うのは初めてだし、龍臣も真琴君をチラッと祐一の店で1度見た事があるだけで、真琴君とミキとは初対面だ。 さっき俺達と龍臣達は自己紹介したが、祐一達も来た事だし改めて自己紹介をし、徐々に酒と美味い料理に打ち解け始めた。 「そう言えば美樹君、熱で魘されてたから覚えて無いかな?」 「えっ、何ですか?何かしました?俺、殆ど覚えて無いんですよ。もし失礼な事したら、すみません」 「全然失礼な事はしてないよ、安心して。凄~く可愛かっただけ。熱で魘されて‘伊織さん.伊織さん’って、手を出してきて握ってあげたら安心して寝ちゃって。ほんとに可愛いかったな~。寝顔を可愛からずっと眺めてられたし」 「ミキ、心細くなって成宮さんを呼んだんだ?」 真琴君に冷やかされ頬を染めていた。 俺も祐一と龍臣にニヤニヤされたが、俺的には嬉しい事だったから気にも止めなかったし、寧ろ羨ましいだろうと言いはしなかったがそんな顔をした。 俺が良い気分でいると優希さんがまた話しを始めた。 「それも可愛いかったんだけど‘伊織さん、キスして’って、言われた時はどうしようか?と思ったけどね」 「ええ~! すみません。全然覚えて無い、あ~どうしよう。本当にすみません」 クスクスクス……楽しそうに話す優希さんに黙って聞いていた俺は堪らず「まさか、キスしてませんよね?あの時はそんな事、1言も言って無かったじゃ無いですか?もしキスなんかしてたら、幾ら先生でもただじゃおかない! 」 「伊織さん!」 俺が本気で先生を睨んで話すとミキが止めに入った。 俺の怒りなんて、へっちゃらな先生は龍臣に向かって「龍臣~、成宮が怖い」と笑いながら助けを求める。 「コラッ。優希、揶揄うのも程々にしろよ。この手の洒落は、伊織には洒落にならないからな。だから言っただろう?伊織は本気なんだって、今までどんだけ惚気を聞かされたか」 洒落?嘘か?俺が困惑してるとケラケラ…笑いながら「嘘.嘘。キスしてなんて言われて無いし。ちょっと成宮を揶揄っただけ。でも、龍臣が言ってた通りだね。あの成宮がねぇ~。まだ、信じられない」 「先生。いい加減にして下さいよ。ミキに関しては、俺は洒落は効きません、覚えておいて下さいよ。可愛い寝顔を見たり手を握るだけでも本当はムカつくが、お願いした立場だから許容してるだけで、今後一切無い」 「マジ。ヤキモチ妬きなんだよなぁ~。どんだけ狭量なんだよ~。ミキも大変だな?」 祐一の呆れた口振り。 「えっと。祐さん、伊織さんのヤキモチも凄~く俺嬉しいんです。俺もヤキモチ妬きなんで」 頬を染め素直な応えに、俺とミキ以外は呆れて勝手にしろってガヤガヤと話してた。 それでも周りでは揶揄ったり言いたい事言ってるが、俺達を微笑ましく温かい目で見ていたのは、2人の世界に入ってる俺達には気がつかなかった。 おやじが次から次へと出す美味しい料理と酒も進み、皆んなほろ酔い状態だった。 「優希さんって、祐さんや成宮さんの高校の担任なんですよね~」 「そうだよ、マコ。高校の頃の伊織さん達の話聞きたいよね?」 「うん。聞きたい.聞きた~い」 「良いよ。でも、担任って言っても高3の時だけだけどね」 聞きたそうにしてるミキと真琴君を遮り 「先生。龍臣が呼んでる」 俺達のテ-ブルに呼びコソコソと内緒話をする。 「先生。頼むから余計な事を話さないで欲しい」 「俺もマコには高校の頃の話は、殆どして無いから」 俺と祐一は余り褒められ無い高校生活を恋人には、隠しておきたかった。 「ああ、そう言う事ね。お前達の下半身事情ね」 「ま、そう言う事だ」 「俺は伊織より酷くは無かったが、一応な」 「てめぇ~」 揉めそうな俺達の間に入って 「まあ.まあ。俺が知ってる事って、成宮は付き合ってる相手がいても平気で浮気する事や寮に忍び込んでヤったり空き教室でヤったりとか?桐生はセックスフレンド何人か居て日替わりにセックスしてたとか?」 殆ど合ってる俺達の若き下半身事情に 「「……お願いします。ミキ(マコ)には言わないで下さい」」 低姿勢で頼み込んだ。 「お前らケダモノだったからな。恋人に知られたら軽蔑されるぞ」 はははは…… 「「てめぇ~が言うな!」」 俺と祐一は声を揃えて話す。 「本当に。龍臣には言われたく無いよね?3人の中で、1番酷かったのは龍臣なんだから。私も結構現場見たしね」 「い、いつ?」 狼狽える龍臣に俺と祐一はニヤニヤし、矛先が龍臣にいった事も安堵した。 「担任になる前かな?龍臣は転校して来て、職員室でも有名だったからね。そうそう、現場ね。屋上.空き教室.それに階段の踊り場でもシテたよね?後は寮でしょう」 「それは、優希と出会う前だろう?」 「まあね。でも、私にアプローチしてた時も、何度か他の人とヤッてたよね?知らないと思ってた?」 「それは、優希と付き合う前だろう?優希にアプローチしても全然相手にされなくって、ムシャクシャしてたから他で憂さ晴らししてたんだ! 相手も誰だか覚えても居ない。優希と付き合ってからは、1度も無い。何で?今更?今まで言った事無かった」 「んまあ。私も付き合う前だしと割り切ってたけど、成宮と桐生と話してて、思い出したから言ってみた~だけ」 何でも無いって顔をして話す優希さんは今の龍臣から愛されてる自信と2人の信頼関係が解る雰囲気だったが、当の龍臣は色々知られていた事が判明し狼狽えてる。 こんな龍臣を見れるのも珍しいと俺と祐一は顔を見合わせた。 「優希、昔の事だろう?付き合ってからは、誓って優希一筋だ」 左手を龍臣の前に見せて 「うん。解ってる。もし龍臣が裏切類ような事があったら、私は速攻で別れるつもりだから」 「何で、今言うんだよ?優希を裏切るわけ無い!」 「もしもの話。大丈夫、私は龍臣を信じてるから」 「伊織と祐一の所為で、やぶ蛇だ」 何だかあの龍臣が、先生の手の平で上手く転がされてると思った。 家での力関係が解り、笑える。 「そうそう。あんた達の下半身事情は知らない事にしておくよ。でも、高校生活の話は知ってる事は話すよ何にも知らないのも担任なんだから可笑しいでしょ?」 「変な事以外なら話しても良い」 「健全な高校男子生活って事で、よろしく」 「解った.解った。成宮も桐生も本当に大切な恋人なんだね」 「「はい」」 俺と祐一の頭を撫で、昔に戻ったみたいだった。 良い事をすれば褒め頭を撫で、悪い事をすればきちんと納得するまで叱る、そんな先生だった。 そんな懐かしい事を思い出してると 「優希さん、まだ~?」 「早く.早く。話し聞きた~い」 待ち切れないミキと真琴に呼ばれ戻って行った。 何を話されるかドキドキだが、昔の自分の素行の悪さは、今更どうなるもんじゃない。 時間は巻き戻せない。 ここは先生に頼むしか無いと諦め、俺と祐一と龍臣はおやじのいるカウンターに席を移した。

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