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第361話
「先生のあの頭を撫でる癖変わんねぇ~な」
ミキと真琴君が頭を撫でられていた。
「ああ、あれな。尊にもしてる。自分では癖だと解って無いようだ」
「お前もまだやられてんのか?」
「……たまにな。でも、優希に頭撫でられると安心するんだ」
ニヤニヤと俺と祐一は笑ったが「解る気がする」と同意した。
「実は俺な。……龍臣はミキを気に入ると絶対思ったもちろん優希さんが居るからどうのこうの成るとは思って無いが……」
「ふ~ん、だから首元からチラチラ見える色違いのネックレスとか色違いのブレスレッドして来たのか?服装も似てるしな」
「解るか?ネックレスは元々お互い日頃から着けてるが、今日はわざと服装も似せたしブレスレットも付けた。お前、高校の時に俺が付き合ってた奴とヤルような奴だからな。前科がある。まあ、お互い付き合っても浮気はOKにしてたが、何で浮気の相手にお前に行くかな?お前も俺と付き合ってるの知っててヤッテるし俺はお前と同じ孔使うのヤダから、速攻で別れたけどな」
「お前バカだな?お前の付き合ってた相手は、お前に本気だったんだよ。でも、お前本気じゃ無いだろう?浮気するし。それで、わざとお前のダチの俺にコナ掛けて来たんだよ、お前の気を引く為にな。俺はお前が誰とも本気じゃ無いのは知ってたから、据え膳は食うタイプなんで、遠慮無く食っただけだ」
「ケダモノ」
祐一がボソッと呟く。
「そうか。それは知らなかったな」
「本当に男心が解って無い奴だよ。で、美樹君の事か?ま、正直、優希が居なくてお前の恋人じゃ無かったら俺の者にしてたな。けどな、優希が看病行って帰って来てから‘綺麗で人形かと思った’‘寝顔が可愛い’って言って相当気に入ってたからな、興味はあった。男には全く興味無い優希が興奮してたからな。終いには‘龍臣が居なかったらアプローチしてたかも’って言われたら、少しは嫉妬もするさ。会ったら、優希が言ってた事を納得したがな。伊織も大変だな」
「それも言われ慣れ過ぎだ。さっきは弱音吐いたが、誰にも渡すつもりも無いし離すつもりも無い。もしミキが他の奴に心を奪われても、また確実に取り戻す自信はある、何年掛けても」
「まあ、ミキはお前が裏切ら無い限り離れる事は無い心底尽くすタイプだからな」
ミキの事を解ってる祐一が話す。
「俺が裏切る事は絶対無い。これから先、ミキ以上の奴に出会う事は無いだろう。どこを探してもあんな奴は居ない」
「マジ、ベタ惚れだな?前回もそう思ったが、前より上回ってねぇ~か?」
「日々、ミキへの想いは募っていく。今日より明日とな。俺がこんなに人を愛せるとは、自分でも思わなかったからな。本気の恋をした事が無かったから、時々戸惑う事もある」
「龍臣。こいつは、ある意味ミキには異常だ。ベタ惚れの度を越してる。まあ、良いんじゃね~。伊織が本気でミキを幸せにしてくれるなら」
何だか熱く語ってしまった。
誰かに聞いて欲しかったのかもな、俺のミキへの想いを……。
「成宮さ~ん」
真琴君の呼ぶ声で振り向くと手招きされ、俺達がテ-ブルに行くとミキが真琴君の肩に頭を置いて寝ていた。
「ミキ、話してたら寝ちゃって。優希さんの話が面白かったから結構飲んでたかも」
「成宮、可愛い寝顔だね」
「見るな。真琴君、悪いな。引き取る。ミキ、寝るなって」
優しく頭を撫でてから肩を揺さぶると、頭を起こし目を擦り俺を見つめた。
「伊織さ~ん」
こりゃ~、酔ってるな。
寝ぼけてトロ~ンとした目で両手を広げる。
抱っこしてって意味だと解るが、俺は良いがミキが起きた時にまた恥ずかしい思いするんじゃ無いかと躊躇したが、ミキの可愛さに抗う事は出来ない。
甘えモ-ドのミキは最強に可愛いからな。
どうせ気心知れた龍臣と祐一だと考え
「ほら。抱っこしてやるから、首に掴まれ」
「ん~」
首に手を回したのを確認して抱き上げ、ミキが座っていた席で横抱きにし抱っこして座る。
そんな俺の一連の動作に、真琴君以外は驚いた顔をしていた。
俺と真琴君は酔うとミキが甘えモ-ドになる事は知ってるから、いつもの事だと何とも思って無かった。
「ミキが酔うと甘えモ-ドになるってマコに聞いてたが、前より酷くなって無いか?前は、ここまで酷く無かったぞ」
「祐さん、ミキは1人では飲まないようにしてるし、僕と飲む時も前よりセ-ブしてるよ。成宮さんと一緒じゃないと酔う程飲まないしね。安心して飲むのは、成宮さんと一緒の時だけ」
真琴君の話を聞いて、俺の胸に安心して顔を埋めるミキが愛おしい。
「本当に可愛い子だね。全身全霊で成宮に全て預けて……あの安心しきった顔。可愛いね」
「外見も良くって性格も可愛いなんて、なかなか居ないぞ。マジ、可愛いな」
龍臣の脇腹を肘で突っつき
「龍! 幾ら可愛いからって、浮気はダメだからね。龍臣は見境無いからね。欲しい物は、どんな事をしても必ず奪うからね。成宮、気を付けろよ。美樹君をケダモノの餌食にしないように、目を光らせておかなきゃ」
「優希~。幾ら俺でも伊織の本気の相手は奪わねぇ~って。それに誰がケダモノなんだよ! 心外だっつ~の。俺ら夫婦だよな?旦那の事そう言う風に言うか?普通」
「夫婦だから言うんだよ。龍臣の事はよ~く知ってるからね」
龍臣を揶揄ってケラケラ…と笑う。
しっかり尻に敷かれてんな~。
龍臣と優希さんを放っといて、俺と祐一と真琴君で話していた。
「もう、ミキったら弱い癖に飲むんだから~」
「俺がいる時は構わない。それより真琴君は強いな?酔ってる所見た事無いが」
「マコも始めは余り強く無かった、ま、弱くも無かったが。ミキと一緒に飲む事が多かったからな。自分がミキの面倒見なきゃって、自然に強くなったんだよな?」
「だって~、ミキは天然だから、大学の打ち上げとか飲み会の時に狙われてるの解って無いんだもん。僕が散らかしておきましたからね、安心して下さい。成宮さん」
「本当に真琴君には助かってる。昔からミキを守ってくれて、ありがとう」
ミキが俺の胸に顔をスリスリして来て可愛い。
「そんなの当たり前です。僕はミキが大好きですし、憧れでも有るんです。ミキが僕の友達になってくれた事が誇らしいんです」
「マコは友達思いで、そこが良い所の1つだ。ある種、ミキの信者でもあるがな。あんなに力説してミキの事大好きって大っぴらに言われて、俺は2番かな?」
「……どっちも同じくらい好きです……でも、ミキは成宮さんに任せられるから……祐さんの方がちょっと上です」
真琴君の頭を撫で、愛しい目で見つめる祐一に照れる真琴君。
祐一はさっき寂しい思いさせてるって言ってたが、この分じゃ祐一の思い過ごしだろうな。
祐一の気持ちは、ちゃんと真琴君には解ってるようだ見た目に反して真琴君は大人だ。
「こらこら、イチャイチャするな! 家でやれよ」
「はあ! 何ほざいてんだよ! てめぇ~の今の格好がイチャイチャしてねぇ~のかよ。ミキを胸に抱いて」
忘れてた、いつもの事だから気にして無かった。
「悪いな。いつもの事だから忘れてた」
「てめぇ~、何惚気てんだ?あ~、バカらしい~」
「そう言うなって。ミキも後10分程で目が覚めるはずだ」
「はい.はい。可愛い寝顔でも堪能しますよ!」
「見るな!」
「祐さん、ミキの寝顔見ちゃだめ~。ミキの寝顔見たら、僕の寝顔見せられないよう~」
「余計な心配するなって。マコの方が可愛いに決まってるだろ?」
余りそう言う事を言わない祐一が言ったもんだから、頬を染め照れる真琴君。
「はあ! 聞き捨てならねぇ~な。ミキの方が可愛いに決まってる!」
「いや、マコだ!」
「ミキだ!」
いつもの様に言い合いをしてると騒がしかったのか?ミキが身動ぎし目が覚めたようだ。
目が覚めて、今の状況を把握した時のミキの態度が見ものだ。
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