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第362話

「ん、んん。伊織さ~ん、何、騒いでるの~?」 目が覚め寝ぼけ眼で、俺の顔を見て話す。 「ん、起きたか?祐一のバカが…」 「えっ、祐さん?」 キョロキョロ周りを見渡し、直ぐに俺の胸に顔を埋める。 ミキが目覚めた事に気が付いて、皆んなミキをジッと見ていたのと俺の膝に横抱きにされてる状況が解り、恥ずかしくなったんだろう。 沙織達と初めて食事した時と全く同じ状況だ。 「ミキ?起きたの?」 真琴君が声を掛けるとモゴモゴと話す。 「起きた~。やだ~、恥ずかしいよ~」 「別に、いつもの事じゃん」 真琴君が優しく声を掛ける。 「ミキは、そうやっていつも伊織に甘えてるんだな」 揶揄う祐一。 「可愛い~。可愛い~な。見てよ、あの成宮のダラシない顔。でも、解るな~、あんなに可愛くされたら、そうなるよね~」 ミキを可愛い.可愛いと連呼する優希さん、まるで沙織を彷彿させる。 「確かに、可愛いのは認める」 龍臣は、優希さんがミキを可愛いと連呼するのが気に要らないようだ。 「おっ、起きたか?可愛い寝顔じゃった。良いもん見せて貰ったわい」 おやじも、いつのまにか座っていた。 皆んなに色々言われ「伊織さ~ん、降りる」と言うから俺が退いてミキの隣に座るが、さっきまでミキが腕の中にいた重さが無くなり寂しく感じた。 「ミキ、俺以外に可愛い寝顔見せたお仕置きしないとな。あ.と.で.な」 くっくっくっくっ…… 他の奴らに聞こえない様に、ミキの耳元で囁くと顔を赤く染め 「ええ~、やだ.やだ。俺、知らないもん。不可抗力だもん」 俺にだけ聞こえる様に小さく応えた。 それを見ていた祐一が「おい、いつまでイチャイチャしてんだよ~」と呆れた様に話す。 「はあ?てめぇ~に言われたくねぇ~な~。さっきまで真琴君とイチャイチャしてた癖に、良く言うよ」 「はあ?イチャイチャは、お前の方だろうが」 俺達が言い合ってると「マコと祐さん、イチャイチャしてたんだぁ~」自分だけが恥ずかしい事してたわけじゃないと解って、ホッとした顔をした。 「まあ.まあ。美樹君も起きたことだし、飲もう.飲もう」 優希さんの1言で、今度はおやじも参加し宴会が再開した。 気心知れた集まりで良く話.良く笑い.良く食べ飲んだ。 気付くとアッという間に、時間は経っていた。 「そろそろ、お開きにするか?」 「そうだな」「もう、そんな時間?」「楽しかったね」皆、口々に話す。 「あっ、伊織さん。優希さんが帰る前に、渡さなきゃ。忘れる所だった」 革紐ブレスレッドを、まだ渡して無かった事に気付いた。 いそいそと小さな袋をバッグから取り出し、優希さんの目の前に出す。 「優希さん、改めて看病して頂いて、ありがとうございます。これ、俺の感謝の印です。大した物じゃないけど…良かったら受け取って下さい」 「え~、良いのに~。この食事会だけでも充分なのに」 受け取るのを躊躇している優希さんに俺からも話す。 「優希さん、本当に助かった。ミキの気持ちだから受け取ってくれ」 「何だか大した事して無いんだけど…返って申し訳無い感じだな。じゃあ、遠慮無く受け取るね。ありがとう」 受け取り「何かな~」と言いながら中身を取り出し「え~、良いの?カッコいい~。もしかして龍臣のもあるの?」もう1つ色違いの革紐ブレスレッドも取り出した 「はい。薄茶が優希さんに、黒の方は龍臣さんにです」 「龍臣にもありがとう。凄~くカッコいい。どこで売ってたの?他も見たいから、お店教えて?」 余程気に入ったらしく、喜んでいる優希さんにホッとした顔をしていた。 「あの…恥ずかしいんですが、それ俺が作ったんです」 「ええ~、嘘でしょ?お店に売ってるのと同じだよ?凄い.凄い。龍臣、見て~。カッコいいよね~」 「本当だ。全然解んねぇ~な。言われなきゃ、店で買ったと思うレベルだ」 早速、腕に付けて2人並べて見ている姿は微笑ましい。 「良かった~。気に入って貰って」 「大事にするよ。ありがとう」 手首を振り見せてくれた。 「俺にもありがとう。俺も大事に使わせて貰う」 喜んで貰って感動してると、マコからクレ-ムが来た。 「え~、良いな~。狡い.ずるい。優希さん達だけズルイ~。それにミキ達もさり気無くブレスレッド付けてるし~。良いな~」 「だって、マコ達は石垣島のお土産のブレスレッド付けてるでしょ?」 マコと祐さんの手首には、色違いのブレスレッドがある。 いつも着けてくれてるんだな~と嬉しくなった。 「そうだけど…」 「マコ! ミキは優希さんにお礼の意味で作ったんだから、我儘言うなって。欲しければ買ってやるから」 祐さんが宥めてるが、しょぼんとしてるマコを見て、どうにかしてやりたくなった。 「マコ。ブレスレッドじゃなく、祐さんとお揃いの革紐ネックレスでどう?他も挑戦したいと思ってたから」 ぱあっと顔が明るくなり 「良いの?作ってくれるの?」 「良いよ。その代わり初めて作るからヘタだったら、ごめんね。少し時間も欲しい」 「うん.うん。いつでも良いよ。やった~。祐さん、ミキが作ってくれるって~」 子供みたいに喜び、祐一に報告する真琴君。 「良かったな。俺が買ってやるより、ミキが作った方が喜ぶんだからな。全く、仕方ねぇ~な」 「祐さんから買って貰うのも嬉しい~よ」 「解った.解った」 言いながら真琴君の頭を愛しげに撫でいた。 「じゃあ、解決だな」俺が話すと 「変わったのは、成宮だけじゃなかったね。桐生も真琴君のお陰で変わったね。良い恋人を持って、2人共幸せそうで良かった」 龍臣に小声で話すのが聞こえた。 龍臣の友達って事と元生徒って事で気に掛けていたんだな、有難い。 「だから言っただろう。会うと2人共、惚気るんだって。それに幸せなのは2人だけじゃない、俺も優希と一緒に居られて幸せだ。この際だから言っとく。この指輪とブレスレッドに誓って……俺は優希一筋だ。余計な心配するな」 「……龍臣。色々あったけど、私は後悔した事無いから」 目を見つめ合って、2人の世界に入っていた。 普段、横暴で俺様の龍臣のまたまた珍しい姿を見たと祐一と目で話す。 そんな2人をいつの間にか皆んなが見ていた。 ミキと真琴君は感動して涙目になるし、おやじは「めでたい.めでたい」と龍臣の幸せを喜んでいた。 涙目のミキの腕を引き寄せ抱きしめ耳元で「ミキと出会えて俺も幸せだ」と囁くと「俺の方がもっと幸せです」と胸に顔を埋めて話すミキが愛おしい。 祐一も真琴君の肩を引き寄せ、耳元で何やら話していたから、たぶん俺達と同じだろう。 おやじがゴホンッと咳をするまで、店の中はラブラブモ-ドに包まれていた。

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