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第369話
先に走って行った伊織さん達を見送り、残された俺以外の人は、呆れた目で見ていた。
「マコ。バカは放っといて、俺達も行くか?」
「うん」
マコは祐さんに誘われて、嬉しそうに後を着いて行く。
「全く、伊織も龍臣さんも困った人達ねぇ。これじゃあ、何の為にカップルで来たか解んないじゃないの?ねぇ、大ちゃん」
「まあ.まあ。男は勝負事になると燃えるんですよ。さて、俺達も行きましょうか?」
「そうね。先に行くわね、ヨシ君.優希さん」
「いいですよ。私達はゆっくり後から行くから。ね、美樹君」
「はい」
「じゃあ、お先に。大ちゃん、行きましょう」
「はい。沙織さん、余り無理しないで下さいよ」
「大丈夫よ。大ちゃんが居るんだもん」
沙織さんに言われて、嬉しいのか尻尾を振って喜んで着いて行く。
「さて、皆んな行った事だし、私達も行こうか?美樹君、先に行って。美樹君に何か有ったら成宮に怒られるからね。だから、後ろから着いて行くから」
「はい、宜しくお願いします」
こうして、俺と優希さんとでアスレチックに行く事になった。
網縄や網梯子などをこなして行きながら、背後の優希さんと色々話しをした。
「優希さん。伊織さんと龍臣さんって、いつもあんな感じ何ですか?何か子供みたいでしたね?」
「そう.そう。高校の時からあんな感じ。2人共負けず嫌いだからね。大体、龍臣が勝負吹っかけて、成宮が受けて立つって感じ?会社の人が、今の龍臣見たらびっくりするだろうねぇ」
「伊織さんもですよぉ。会社では、冷静で行動力が有って頭が切れる上司って感じですもん。何か、龍臣さんと居る時の伊織さん、子供みたいで可愛い~。祐さんと居る時とは、また別ですね。祐さんとは仲良しで、良く漫才みたいに言い合いになってますよぉ」
クスクスクス……
「成宮を可愛い~何て言うの、美樹君ぐらいだよ」
キャハハハ……
「まあ、龍臣も会社では、冷徹で強引な人って見られてるらしい。でもね、そうしないと社員を養っていかなきゃならないし、酔っ払った客からお店の子を守ったり、余り太刀の良くない人も中には居るからね。あの強面の顔で威嚇してんだよ。そういうの知ってる人も会社には居るから、皆んな龍臣の事悪くは言わないよ、あれで人情深い所あるからね。まあ、あの2人は体を使った勝負事好きだしね。桐生はいつもバカだなぁって見てるよ。でも、桐生もトランプとかオセロとかそう言うインドアな勝負事には熱くなるよ」
「へえ~、祐さんの意外な一面聞いたかも。優希さんは龍臣さんの良い所解ってるんですね」
「まあね。じゃなきゃ誰が男と何て結婚すると思う。男とか関係無く、龍の……、まあいいや。成宮は?2人の時は、会社とは別人?」
龍の……と照れて言わないけど、多分愛してると言おうとしたんだろうな。
「伊織さんは、会社とプライベートは分けてますよ。2人の時は、すご~く優しいです。言葉や態度にも表してくれるし、俺の事をいつも1番に考えてくれてる事も解ります。俺……伊織さんが居ないとダメなんです」
アスレチックに手間取って、沙織さん達と離れてしまったが話しは止まらない。
「そんなの皆んな同じだよ。やはり好きな人と居るのが一番なんだから。2人で居る時は、いつも笑って過ごす、これが大切」
「はい。肝に命じます」
クスクスクス……
キャハハハ……
「それにしても、結構疲れるね?」
「はい、もっと楽だと思いました。伊織さん達どの位先に行ったんでしょうね?」
「どっちが先にゴ-ルするか勝負してるんだから相当先まで行ってるんじゃないのかな?明日、龍臣、筋肉痛確定だな」
「伊織さんもかも。だって、ジムとかとは別の筋肉使うじゃないですか?明日、マッサージしてあげよう」
「本当に良い子だね。成宮には、勿体無い子だよ」
「そんな事無いです。伊織さんの方が俺には勿体無い人です。もっと伊織さんに相応しい人になりたいんです」
「そのままの美樹君で充分だよ。気負い過ぎると疲れるからね。自然に.ありのままの自分で良いんだよ」
「……そうかも、伊織さんに相応しい人になろう.なろうと思ってました……けど優希さんと話して気が楽になりました」
「そう.そう。そのままの素直な美樹君が成宮は良いんだからね」
「はい」
「美樹君、そこ滑りそうだから気を付けて」
「はい」
お喋りしながらも、俺の事を良く見ていてくれた、やはり元先生だけあって良く見てるし、世話好きなのかもしれない。
こうして優希さんに気を使われながら、何とか中盤まで来ていた。
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