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第371話
「戻って来てくれたんですか?」
「ああ、悪かった。置いてきぼりにして」
「良いですよ、そんな事。それより、勝負はどっちが勝ちました?」
ニンマリ笑い答える。
「もちろん、俺だ」
「やった~。流石、伊織さんですね。高校のリベンジ出来ましたね」
両手を挙げ、自分の事の様に喜んでるミキに嬉しくもあるが、両手を離すミキにハラハラした。
「おい! 両手を離すな! 危ない!」
「あっ、つい」
舌をペロっと出し、慌てて網縄に捕まる。
「へえ~、龍臣。負けたんだ?」
優希さんの問いに、苦虫を噛み潰したような顔で龍臣は言い訳する。
「ゴ-ル近くまでは俺が勝ってたんだ。最後の最後でやられた」
「お前なぁ~、狭くって抜くに抜け無かったんだっつ-の。抜くチャンスを虎視眈々と狙ってたんだよ。結果は見えてたからな。少しは花を持たせてやったんだ」
「何だと~。抜くチャンス何か幾らでも有っただろうが。正直に、抜けなかったって言え!」
下で言い合いをしてると
「美樹君。放っといて、行こう」
「でも……」
「ガキの言い合いに、付き合ってられ無いよ。バカバカしい」
優希さんの声が聞こえ、言い合いを止めた。
「優希…。放って先行った事…怒ってるか?」
下手に出る龍臣の珍しい姿も余り見られないとニヤニヤして見ていた。
「別に。ただ、いつまでまで経っても、お前達は変わんないなぁ~って。何だか高校の時の事を思い出してた。……ガキだなぁ~って。ま、成宮と桐生といる時位、童心に戻っても良いんじゃ無いの」
「そうか.そうか。ま、俺も伊織と祐一に合わせてるからな」
「はあ?誰が誰に合わせてるって?」
「俺がお前達にだ!」
「何だと~。俺がお前に合わせてやってるんだっつ-の」
また、言い合いになると、上からクスクスクス…と笑うミキ。
「伊織さんは祐さんとも仲良しだけど、龍臣さんとも仲良しですね?」
「「………」」
ミキのとんちんかんな言葉に、俺と龍臣は言葉を無くす。
どうしたら、この言い合いをしてる2人を見て、そう思う感性が良く解らん。
「そう.そう。何やかんや言っても、仲が良いんだよ」
「やっぱり~」
「もう、本当に行こう。皆んな待ってるといけないから」
「は~い」
網縄を四つん這いで歩き出す2人に
「「今、そっち行く」」
慌てて登り始めた。
ミキと俺、優希さんと龍臣の順番で行く。
「ミキ、悪かったな。置き去りにして」
改めて話す。
「そんなに気にする事じゃないですよ。優希さんと沢山お話し出来たし楽しかったです」
俺の後ろから優希さんが
「ねえ~美樹君。楽しかったよね?美樹君の手を繋いだり、危ない時は抱きしめたりしたし~。あ~、役得.役得」
思わず後ろの優希さんを睨んで
「嘘ですよね?俺をまた揶揄ってます?冗談なら笑えない冗談です」
「優希! その手の冗談は、伊織には効かないからよせ!」
ケラケラ…笑いながら
「少し、お仕置きだ。美樹君を放って行った、お.し.お.き」
「解りました。反省してますから。で、龍臣のお仕置きは?」
「う~ん。龍には何か考えておく。何が良いかなぁ~♪」
楽しそうだ。
「……優希。変な事は、止めてくれよ」
「ん、どうしようかなぁ♪ ドンキで面白グッズ買って来ようかな~。鼻眼鏡とか?うさぎ耳のカチューシャとか?」
キャハハハ……
楽しそうだ。
俺は龍臣が可哀想になるが、ミキは「うわぁ。見てみたいかも」と言ってこちらも楽しそうだ。
「……それは止めてくれ。どこか美味しい店か.優希の行きたい所でも行こう。それで勘弁してくれ」
「う~ん、仕方ないなぁ~。ほんと私も龍には甘いからなぁ」
「優希は物分かりが良い奥さんで助かる」
何だかイチャイチャし始めた龍臣達を放って、先に行く事にした。
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