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第372話
急な登りの時は先に行き上から手を差し伸べ、不安定な所では声を掛け注意するが、俺の心配を他所にぴょんぴょん跳ねたり「うわぁ、不安定~」と言いながらもふらふらとこなして行く。
見てるこっちがハラハラする。
「ロ-プしっかり捕まれ」「そこ滑るぞ」「疲れないか?」
急な斜面や不安定な場所とその度に声を掛ける。
「は~い」「大丈夫で~す」
本人は、楽しんでる。
背後から見ると四つん這いになったり屈んだりしてプリプリと小さな尻が目に付くが俺しか見てないから`良し'とした。
いつもの俺ならそんな可愛い尻を見たらニヤニヤしたり妄想する所だが、そんな事を考えるよりハラハラする方が先に立つ。
そんな俺達の遣り取りを後ろで見ていた龍臣達は、ニヤニヤと笑っていた。
「おい、過保護過ぎるんじゃ無いのか?」
「大切にされてるねぇ。羨ましい限りだよ」
「優希、それじゃ俺が大切にしてねぇ~みたいじゃねぇ~か?」
「んまぁ、それなりにね」
「何だよ、それなりにねって。伊織みたいに一々言われたくねぇ~だろ?俺なりに優希の事は心配してるんだ」
「解ってるよ。私の後ろから来るのも前に居る私が良く見えるからなんだろ?何かあったら直ぐに手を差し伸べられる様に」
「……解ってんじゃねぇ~かよ」
「まあ、龍の優しさは解り易い時と照れて解りずらい時があるからね。でも、長年一緒に居るんだから、解るよそれくらい」
「……」
照れてボリボリ頭を掻く。
「成宮の、あの過保護っぷりも凄いよね」
「異常な位だな。でも、伊織もそうする事が当たり前みたいだし美樹君も嬉しそうだから、良いんじゃねぇ~。伊織も1人の人をあんなに心配したり想ったり構ったりと出来る事が楽しくって仕方ねえ~みたいだし、伊織のあんな姿を見れるとは誰も思ってなかったしな。何より2人共幸せそうだ」
「本当だね。こうやって一緒に居ると成宮の真剣な想いが伝わってくるね。美樹君と出会えた事が成宮の人生変えたね。良かった.良かった」
背後でそんな話をしてるとは思いもせず、俺はミキだけをハラハラしながら見ていた。
何とか最後のタ-ザンの所まで来た。
「もう、終わりですね。あ~、楽しかったなぁ。伊織さんとアスレチックするなんて夢にも思わなかったです」
「取り敢えず無事に終わりそうだな。俺の心配は余計だったみたいだな。ミキ、見かけより運動神経良かったんだな?」
「何ですか?見かけよりって。普通ですよ。伊織さんが心配性なだけですよ。行きますよ」
「ちゃんと足をしっかり乗せろよ。不安定だからな」
「ほら、心配性」
クスクスクス……
「行ってきま~す♪」
ミキが出発したのを確認して隣のレ-ンから俺も出た。
到着すると祐一達.沙織達が待ち構えていた。
「やっと来たな~」
「ミキ~」
「ヨシ君、大丈夫だった。怪我無い?」
「成宮さん、お疲れ様です。どこら辺で会いました?」
「矢島君達の2~3個後位の所に居た。直ぐに龍臣達も来る」
口々に話してると龍臣達も到着した。
「お帰り、優希さん。大丈夫ですか?」
「ん~、疲れた~」
「疲れたよねぇ~。良く運動もしたしお腹も空いたでしょ?戻ってBBQにしましょう」
「「やった~」」
「「腹、減った~」」
「沢山、食べますよ」
沙織の許可が出た所で、本来の目的であったBBQをする事になった。
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