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第388話
「はい。皆さん船乗されましたね。では、出発します」
船頭さんの声で川下りが始まった。
船を漕ぎながら船頭さんは、説明と鬼怒川の訛りを交えた会話を面白可笑しく話す。
川水はグリーンやタ-コイズブル-と色々な変化を見せ.5月と言う事もあり、川の両端の木々は緑で自然の中と言う感じだ。
変わった形の巨石に接近したり、楯岩と呼ばれる巨石は100mを超える程で迫力があった。
ゆったりと周りを見渡しながら船頭さんの話を聞いたり、川の勢いの良い所はそれなりに揺れ水飛沫も多少浴びたが、思った程浴びなかった。
40分程の川下りは、大自然が作り出す圧倒的な渓谷と船頭さんの話の面白さを満喫した。
「気を付けてお帰り下さい。本日はありがとうございます」
パチパチパチ……パチパチ…
拍手で船頭さんを労った、1つの船に乗った全然知らない人達だが、同じ時間を共にし何だか変な団結感があった。
「ミキ、気を付けろよ」
「はい」
船を降り「どうする?そろそろ宿に行くか?少し奥にあるからな。今から行けば一風呂浴びれるし」
「はい、そうします。結構歩いたし少し濡れちゃったし」
「じゃあ、また車まで探索しながら戻るとするか?」
「はい」
停めてあった車に乗り込み鬼怒川駅附近を後にし、車を走らせ奥地に向かう。
どんどん店も無くなり、静寂の中で自然が豊かな景色に変化して行く。
20程走らせ宿が見えて来た。
川も近くにあり緑に囲まれた静かな宿。
案内した女中も居なくなり、畏まっていたミキもやっとホッとした顔をし部屋を見回して
「旅館の入り口やホ-ルはそうでも無かったけど……お部屋凄い高そう。それに……離れで露天風呂付き……伊織さん、俺はどこでも良かったのに…また、伊織さんに無理させたようで…」
申し訳無いって顔をして話す。
「言っただろう、空いてる所が無かったって。それに金の事気にしてるんだろうが、俺はそんな甲斐性無しじゃないぞ。これくらいは出せる」
「そんな…甲斐性無しなんて思ってません。ただ、高そうだなって」
「飛び石でもGWだからな。ま、普段よりは割り増しだが、もっと高い所も有ったがそこは止めたんだ。そんな事より折角来たんだ、楽しもう、そうだ露天風呂入ろう。直ぐに飯の時間になる」
「そうですね。少し濡れちゃったから、服掛けて置けば乾きますよね」
「だな。そうと決まれば」
立ち上がり服を脱ぎ始めた。
「い、伊織さん。ちょっと…」
「何だミキ?俺の裸なんて何回も見てるだろうが」
くっくっくっくっ……
そっぽ向いて話す姿が可愛い~。
初々しさは相変わらずだな。
「そうだけど……明るい所でなんて…」
「ったく、可愛すぎだろ。ほら先行ってるからな。ミキも早く来いよ」
平常時でもデカイモノをぶら下げ、スタスタと全裸で露天風呂に入りに行く。
暫くすると露天風呂の少しだけある脱衣所に、俺の浴衣を持って現れた。
「伊織さんの浴衣と下着置いときますね」
「ああ、良い湯だぞ。早く入れ」
「はい」
ミキは部屋で浴衣に着替えて来ていた。
スルスル~と帯を解き、浴衣を肩からスルスル~脱いでいく姿が何とも色っぽい。
思わずジッと見てしまった。
恥ずかしそうにタオルで隠して露天風呂に入って来る
「わぁ~、良い気持ち~♪」
「だろ?もっとこっち来い」
「はぁ~い」
側に来て2人で景色を見て露天風呂を堪能した。
「夕暮れ時ですけど緑が鮮やかですね。夜はまた星とか綺麗なんでしょうね?」
「都会に比べれば星も見れるんだろう。近くに川が流れてるから音が聞こえるぞ」
「……本当だ~。川の音って不思議とゆっくり寝れるんですよね~」
「夜、少し窓開けて寝るか?」
「良いかも……でも、朝寒く無いですか?」
「そうだなぁ。止めておくか。どっちにしろ夜は川の音を聞いて寝れないしな。ま、寝かせないけどな」
「い、伊織さん」
「窓、開けてミキの可愛い声も聞かせられないしな。やっぱ窓は閉める」
離れで声は聞こえないが。
くっくっくっ……
「や、止めて~」
可愛いミキを少し揶揄って
「さて、そろそろ夕飯になるから上がるか?」
「はい。夕飯楽しみ~♪」
「だな」
街をふらふらと探索し少し疲れた足が楽になり、ミキとの露天風呂を堪能し部屋に戻った。
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