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第389話
「以上です。お召し上がり済みましたら、内線でお知らせ下さい。下げに参ります。それでは御ゆっくりお召し上がり下さいませ。失礼します」
仲居が部屋を出て行き、テ-ブルには綺麗な器に盛り付けられた目にも麗しい創作料理が並べられた。
地元の物をふんだんに使われて、四季折々の風情を感じる料理に仕上げてあった。
日光刺身湯葉にいくら.四川風海月と蒸し鶏.公魚南蛮漬.海老芋利休焼.海鮮煮凝り.湯葉包み.霜降高原牛のすき鍋.天麩羅(海老.湯葉.たらの芽.筍)高野豆腐と蒟蒻の煮物.栃木こしひかり御飯.筍のお吸い物.漬物.苺のプチケーキ.苺のムースなど盛沢山だ。
「うわぁ、凄~い。全部、美味しそう♪」
目の前の料理に目をキラキラさせ喜ぶ。
ったく、可愛い~な。
「そうだな。どれも見た目も麗しいな。ゆっくり堪能しよう。まずは、食前酒で乾杯だ」
梅酒を手に取りミキに向けると、カチンッとグラスを合わし「乾杯。伊織さん、連れて来てくれて、ありがとう」きちんとお礼を言う所がミキの良い所だ。
「俺がミキと旅行したかったんだ。1日だけだが、名一杯楽しもう」
「はい」
グビッと一口飲むと梅の香りが鼻を通り味わいが感じられ、甘口で食前酒には程良い。
「この梅酒、美味しい♪」
「だな。後で飲むように1本持って来て貰うか?一応、白ワインは用意して有るんだが」
「う~、折角用意してくれたなら白ワインで良いですよぉ。少し飲むから美味しいんですし、梅酒って結局お酒だから油断してると酔っちゃう」
「じゃあ、梅酒飲み終わったらワイン出すな。料理と一緒に飲もう。ほら食べろよ」
「は~い♪どれから食べようかな~♪迷っちゃうな~♪」
迷った末に湯葉から手を付け口に入れるのを見ていた
「わぁ~、ふわふわして甘~い。いくらが甘さを引き立てるぅ。美味しい~。伊織さんも食べて.食べて」
残り半分を箸に取り俺の口の前に持って来た。
苦笑し、俺の前にも全く同じ品が有るんだが…
いつもそうだが自分が美味しいと思った物は、人にも分けてあげたくなるんだな、ミキの癖のようなものだ
口を開け、目の前の箸に食い付き咀嚼しながら
「ん、旨い。京都の湯葉とは絶妙に違うな」
「京都も美味しかったけど、こっちも美味しい~」
少しずつ他も味わい、その度に「美味しい~.美味しい~」と連呼し、ワインも開け飲みながら時間を掛け料理を堪能していく。
「ミキ、明日はチェックアウトは12時だ。帰りは下道を行きながら所々見ながら帰ろう。夜遅くなっても次の日は休みだ、その日は家でゆっくりしよう」
「嬉しい~。鬼怒川来る前に検索して行きたい所あったんですよね~」
「来る前に見てたな。えっと、日光江戸村?とトリックア-トだっけ?」
「そうそう、後ね。花いちもんめって植物園とか吊り橋.日光湯元温泉で日帰り温泉も有るんですよぉ、美肌効果があるって」
「植物園と吊り橋は良いが、日帰り温泉はダメだ」
「え~、どうして?掛け流しの湯で、凄~く良いお湯らしいですよ?」
「ダメだ! ミキの裸は見せられない! それに美肌効果があるって、もう十分にきめ細かい肌してるしな。入る必要無い! 白い肌で感度も十分だし何より触ってて気持ち良い」
「……伊織さん、温泉の話してるんですけど…」
「もちろん温泉の話だが、ミキの肌は敏感だから刺激が強いと肌荒れするといけないって話だ」
「……俺の為ですね、解りました」
「他は行こう。食事済んだら飲みながら一緒にもう1度検索して、どう回るか考えよう」
「はい。伊織さん、この高野豆腐味染みてて美味しい~。あ~、日本人に生まれて良かったぁ~」
「何でだ?」
「だってぇ、この高野豆腐の味は、海外では絶対味わえ無いもん。日本料理って目でも楽しめて四季折々の料理が出て、それでヘルシーでしょ?」
「ん……そうだな。確かに日本料理が海外で受けてるのは見た目と繊細な所とヘルシーさだ。……そうか、そうだな」
ミキとの何気無い会話で、仕事のヒントを得たがその事は黙っていた。
「何~?心ここに在らずって返事してぇ~」
「いや、何食べるか考えてた。どれも旨そうだからな」
「確かに~♪このすき焼きお肉柔らかくって美味しい~」
「ミキはどれを食べても旨そうに食べる」
「だってぇ~、本当にどれも美味しい~んだもん」
ミキの旨そうに食べる姿と楽しい会話で食も進む。
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