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第398話
温室のドアを開けるとムッとする様な湿気と温かさと所狭しと咲いてる花の匂いが充満していた。
「すっご~い、綺麗♪ ここも凄い数の花ですね」
「ああ、匂いも凄いな」
「伊織さん、ここって‘ベゴニア’って花だけらしいです。でも、これだけ花が咲き乱れてると圧巻ですね」
「確かにな。どれも綺麗だな」
「色の種類も凄いですね。同じベゴニアでも品種が違うみたいです」
温室の中は赤.ピンク.オレンジ.白.黄色と色彩豊かな花
横を見ても足元にも寄植えが有り、天井から吊るされた花々は本当に圧巻だった。
「薔薇とは違うけど大きい花ですね。凄~く綺麗です」
「そうだな。ベゴニアなんて知らなかったが…見映えも良い花だ」
「本当ですね」
「植物園の温室は色んな種類の花々や珍しい花があるもんだと思ってたが、逆に1種類の花で飾ってるのも良いなぁ~」
「俺もそう思ってました。あの天井から吊るした花々は見る価値有りですね」
「だな」
話をしながらゆっくり品種.色など違いを見て回り写メも撮りまくった。
園内で、天ぷら蕎麦とベゴニアアイスを食べ土産を見に行く事にした。
売店もそこそこ広く、花いちもんめのオリジナル商品と栃木県限定の土産として、やはり‘とちおとめ’の名の苺商品が多い。
お菓子.ロ-ルケ-キ.饅頭.……ベゴニアの球根.鉢植え.花.入浴剤.ポプリ……。
「う~ん.どうしようかなぁ?」
「真琴君に土産か?」
「うん。マコだけじゃ無く沙織さん達.優希さんの所と大将にも」
「そんなにか?誰にも言ってないんだ。真琴君だけで良いだろ?」
「え~、だってぇ~いつもお世話になってるし」
そう言いながら物色し始めた。
初めての旅行の時は、真琴君だけに土産を買っていたが、この1年で土産を渡す人が増えたようだ。
律儀に渡さなくとも良いと思うんだが。
ミキらしいと苦笑いして頬を緩めた。
散々悩んで、ポプリ6個を買った。
レジを済ませ俺の側まで来て
「買っちゃいました」
「6個も?」
「はい。マコと沙織さん達.優希さん達.大将の所でしょ~、あと伊織さんの玄関先に飾って、俺の玄関にも」
「俺の所もか?」
「はい。匂いが無くなっても、そのまま飾りとして置いといてもお洒落じゃないですか~」
「ミキに任せる」
花って柄じゃ無いが、玄関先にあると癒されるかも知れ無いし、ミキが居心地良い部屋にして欲しい。
「さてと結構時間経ったからな。時間的に、江戸村かトリックア-トのどっちかになるなぁ~。どっちが良い?」
「えっと~、どうしよう~」
「決められ無いなら、トリックア-トにするか?江戸村は似たような感じで京都でも見たしな。それに鬼怒川が近いのが解ったし、土日の休みにでも来れるし、その時でも良いだろう?」
「わぁ~い♪ また連れて来てくれるんですか?」
「ああ、いつでも」
「じゃあ、トリックア-トにします」
「よし、行くか」
行先をトリックア-トに決め出発した。
外観は然程広いとは思えないが、ミキは興味あるようだが俺は然程期待していなかったが、館内に入り正面から見ると平面の本がある角度から見ると飛び出して見えたり、宙に浮いてる石.覗くマンホールの絵.壁から恐竜が口を大きく開けてるような絵.様々なトリックに写メを撮りまくった。
恐竜に食べられるミキ.絵から飛び出てるサイに踏まれるミキ.窓に見える絵.石遊びをしてるミキと、ポ-ズと微妙な角度を指示し沢山の写メを撮った。
「今度は、伊織さんね」
俺もトリックア-トを使って面白い写メを撮りまくられた。
周りでも似たり寄ったりで、他の人のポ-ズを真似たりとなかなか思っていたより楽しかった。
帰り道に、工場直売の土産屋に寄り、試食したりまたまた土産を買うミキに呆れた。
「今度は?」
「お饅頭です」
「もう、お土産は買うなよ」
「は~い」
下道から高速に乗り、途中で夕飯を食べ部屋に辿り着いた時には9時過ぎていた。
「ミキ、疲れたな」
「ごめんなさい。結局伊織さんにずっと運転してもらちゃった」
「それは構わないが、少し休んだら今日は寝よう。片付けは明日にして」
「は~い」
帰って来て、なんと無くホッとし疲れが出た。
「ミキ、明日はゆっくり過ごそう。DVD見たりス-パ-に散歩がてら歩いて行くか?」
「はい。少しだけ片付けて、それからゆっくりします。お天気良いといいなぁ~」
たわいも無い話しをし、明日の予定を決め寝室に向かう。
ベットに入ってミキを背後から抱きしめ安心感からか?直ぐにお互い眠りついた。
仲間とのBBQ、1日だけだが2人っきりの旅行。
この経った1日の旅行が返って濃密な旅行となった。
改めて2人で居る幸せを感じた。
この幸せな時間がいつまでも続くと信じていた。
この時の俺は暫く経って、突然厄介な人物が遠い海を渡って現れ俺達の仲を引っ掻き回し、これまでの中で一番の危機になろうとは、幸せ絶頂の俺には思ってもいなかった。
大きな嵐がそこまで来ていた。
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