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第408話

渋谷の駅の階段を登ってると、前方に綺麗めなカラ-のライムイエローのシャツが目に留まった。 「綺麗な色だな」 センスの良いシャツだなっと、その後ろ姿を見てるとフラフラと揺れて居る様な気がした。 「危なそうだな?」 そう思ってるとやはりユラっとし、足を踏み外し落ちそうになる所を、慌てて抱きしめた体は見た目よりずっと細く驚いた。 「すみません。ありがとうございます」 お礼を言って振り向いた顔を見て、目が見張る程また驚いた。 メチャクチャ綺麗じゃん、モデル?そんじょそこらでは見た事が無い程綺麗だった。 顔の造作もそうだが、俺の印象は元々の肌は白いんだろうが、今は青白くそれが儚さを醸し出し頼りなさそうで、何だか放っとけ無い雰囲気だった。 ボ-ッと見惚れてると立ち去ろうとしたが、今、声を掛けないと去ってしまうと、手を伸ばした所にまたフラついたその腕を掴んで離さなかった。 このままだと、またどこかで倒れてしまうんじゃ無いか?と心配する気持ちと、何とか少しでも話がしてみたかった。 何か言ってたが最もらしい話しをし、強引にカフェに連れて来た。 カフェのテ-ブルに着き、余りにも綺麗な顔を正面から見れずメニューを見ながら話し掛けた。 「さっきも言ったけど、貧血か低血糖起こしてると思うんだけど?朝、何か食べて来た?」 「……食欲無かったから…金曜の夜から食べて無い」 「はあ?丸1日以上食べて無いじゃん。低血糖だな?取り敢えず甘いの食べるか飲むかした方が良い」 「………」 「俺が勝手に決めるよ?良い?」 「……うん」 そう言えば顔色も白いのを通り越して青白いかもしれない、でも、その青白さがまた憂いがある。 店員を呼び、勝手にホットコ-ヒ-とカフェ・オ・レを頼む。 「すみません、ご迷惑をお掛けして」 「別に大した事して無いよ。丁度、コ-ヒ-飲みたいと思ってたし」 照れ臭くって誤魔化した。 そこに注文してたコ-ヒ-とカフェ・オ・レが届き俺が口をつけると、両手でカップを持ち一口飲んで「うわぁ~、美味しい~」とふわりと笑う。 その笑顔を見てドキッと胸が高鳴った。 「ねえ?何で、何にも食べて無かったの?金が無いとか?」 理由を聞くと笑顔が消え悲しそうな顔になり黙り込む 聞いちゃいけないんだな、話題変えよう。 「どっか行く所?」 「決めて無いけど、気分転換にブラブラしようかなって」 「そうなんだ。でも、今の状態だとまた倒れるかもしれないよ」 カフェ・オ・レのカップを手にして 「コレのお陰で大丈夫そう。本当に助けてくれて、ありがとう」 「いや、何度もお礼言わなくって良いよ。所で大学どこ?何年生?」 「あっ、助けて頂いたのに自己紹介遅れました。香坂美樹です。学生じゃありません。会社員です」 え~、これで会社員?やはり男だよなぁ?さっきまで半信半疑だったんだよなぁ、こんな綺麗な男居るか?男か~。 「ごめん。てっきり大学生かと思った。俺はOO大学の2年で山崎拓海です」 「今の学生は大人っぽいね。身長いくつ?」 「180です」 「大きいね。ねえ、急に敬語にならなくても…」 「俺の方が年下だし…」 「気にしなくって良いよ。その方が話し易いし」 「じゃあ、お言葉に甘えて。普段、敬語とか教授位しか話さないから、やっぱ無理」 クスクスクス…… 「そうだよね。学生の時はそんな感じ」 可愛く笑うなぁと笑い顔を見ていた。 くそぉ~、女なら口説くのに。 「香坂さん、やっぱ美樹(よしき)さんって呼んで良いですか?図々しいかな?」 「うん、良いよ。俺は何て呼べば良い?」 「ダチは、拓(たく)とか拓海って呼ぶけど」 「んじゃあ、拓海君で良い?」 「OK」 「ところで拓海君。俺とこんなに話してて良いの?どこか行くつもりだったんじゃない?」 「あっ、忘れてた。ちょっとすみません」 慌ててスマホを出し、電車でマナ-モ-ドにしてたのを解除し、着信が数件とラインが入っていた。 ラインを見ると♪*遅い♪*とか♪*今、どこ?♪*と入っていた。 ♪*悪い。行けなくなった。また今度な♪* 返信をし電源を切った。 どうせ暇潰しに会う約束をした女友達だったから別に気にしないが、相手は俺に気が有るようだから電話なり有ると煩いから電源を切った。 今はこの人となぜか一緒に居たいと思った。 「すみません。ダチと約束してたんですが、ラインがあって急に用事出来たらしく……暇になりました」 「そうなの?お友達とどこ行こうと思ったの?」 「えっと、服…そうTシャツかなんか良いやつあったら買おうと思って。特に店は決めて無いけど良さそうな所あったら……そうだ、美樹さん、良かったら一緒に買い物付き合って下さいよ」 「学生の服なんか解んないよ?」 「1人じゃあ買い物もつまらないし…美樹さんもブラブラするつもりだったんでしょ?だったら一緒に行って良い?」 「……良いけど」 「良し、決まり。ここ出て、少し早いけど昼飯食べようよ。俺、腹減った~」 クスクスクス…… 「良いよ。じゃあ出よう」 俺はこの時どうしてもこの人と一緒に居たかった。 今日、逃したら会えないと思うのと、どんな人か?どんな表情をするのか?服の趣味は?この人を知りたいと思った。 この日一緒に居て俺の感情が変化していった。

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