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第414話
「お腹いっぱ~い。回って無いお寿司ってやっぱり全然違うよねぇ~。ん~どれも美味しかった~。江戸前鮨って一手間掛けてすっごく美味しい~。アメリカでもお寿司を食べるけど、やっぱり日本で食べるのが一番だねありがと、伊織」
「それは良かった。波瑠でも江戸前鮨の良さが解るんだな。連れて行った甲斐があった」
「僕だって日本人なんだから、寿司のネタの良し悪し位解るよ~だ」
「そうか.そうか」
今日は仕事帰りに、波瑠と待ち合わせて銀座の寿司屋に連れて行った。
波瑠に強請られ「美味しい、お寿司食べた~い」と言うから、おやじに前に紹介して貰った寿司屋で、何度か日本に居た時に接待でも使った事があるカウンターのみの隠れ家的な寿司屋で、雰囲気も良く江戸前の寿司は職人が腕によりをかけて工夫してある仕事ぶりで、格別に美味い店だった。
波瑠も「美味しい.美味しい」「柚子の風味が堪らない」「ヅケが最高♪」と喜んで食べていた。
俺の所に来て1週間が経とうとするが「アンディから1度も連絡が無い」と拗ね、少しずつ気分が低くなっていく波瑠に「まだ1週間だぞ。俺には2週間頼むと言われた。来週末には仕事の目処も立って連絡くれるだろう」と励まし無理矢理に納得させた。
それもあって寿司屋に連れて来たが、こんなに喜ぶなら早く連れて来れば良かった。
「ほら、寿司が美味いからって、酒も少し飲み過ぎだぞ。大丈夫か?」
「だってぇ~、お酒も美味しかったんだもん。こうして帰りは伊織と同じ所帰るんだし、少し位飲んだからって良いじゃん」
甘える様に腕を組んでくる。
「もう少しでマンションだ。誰が見てるとも限らないから」
腕を外そうとすると、今度は首に手を回し抱き着き甘える。
「誰が見てたって良いじゃん。伊織、大好き~♪」
酒で少し気分が良いらしい、余り邪険にも出来ず首に回した腕を解き頭を撫でてやる。
「解った.解った。ほら、行くぞ」
「帰ったら、一緒にお風呂入る~?」
「馬鹿か~?」
「お風呂ダメなら、一緒に寝る~」
「それもダメだ」
知らない人が見たら、イチャイチャしてる様に見えるだろう。
マズいな、マンション前だ。
住人が出て来て見られても困ると思い歩き出すと、また、腕を組んで来たが言っても聞かないと波瑠の好きなようにさせ、急いでマンションに入って行った。
「ルンルン…♪♪んん~♪♪♪♪…」
気分が良いのか?音程外れの鼻歌を歌う波瑠が可愛いとそんな目で見ていた。
そんな俺達を見てる人が居るとは思わなかった。
部屋に入りやっと寛ぐが、波瑠は酔いもあるせいか?なかなか風呂にも入らず、さっきから俺の側を離れずずっと喋りっ放しだ。
俺としては、もうゆっくりしたかったが、はしゃいでいる波瑠を見ると何とも言えず、適当な相槌を打つ事でやり過ごしていた。
寿司がどれだけ美味しかったのか熱弁され、明日と明後日はどこに行くか?アメリカの話まで持ち出され、なかなかお喋りは終わらなかった。
その内話が途切れ.途切れになり、頭がこっくり.こっくりと揺れ出し、等々俺に寄り掛かり寝てしまった。
「はしゃぎ過ぎだっつ-の」
昔と変わらない寝顔を見て、起きてる時は我儘や喜怒哀楽が激しいが、寝ていると生意気な口も気の強そうな目も閉じ、可愛い寝顔があった。
「ったく、しょうがねぇ~な」
波瑠を横抱きし寝かせる為に客間に連れて行った。
波瑠のお喋りに付き合った所為で、結構な時間が過ぎていた。
もう寝たかも知れないな。
そう思い、この日はミキにラインするのは止めた。
ミキが俺からのラインを待っていたとは知らず、この事がまた1つミキに不安を与えていた事も……。
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