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第424話

「じゃあ、悪いが先に上がらせてもらう。田口も程々にして帰れよ。お先に」 「はい、お疲れ様でした」 残って居た田口に挨拶して会社を出た。 逸る気持ちを抑え、自然と速足になり駅まで向かう。 ミキは、もう着いて待ってるだろうか? 久し振りにゆっくり話せる。 自然と緩む頬。 早く会いたい。 ホテルのロビ-をキョロキョロと見回す。 見つけた。 ソファで座ってスマホを弄っていた。 「ミキ、待ったか?」 「俺もさっき着いた所です」 「そうか、じゃあ食事に行くか」 「はい」 エレベ-タ-に乗り込みレストランまで上昇していくと同時に、俺の気持ちも高ぶってきた。 やっと2人っきりで会えた。 ボ-イに予約していた旨を話し、席に案内され窓際の夜景が見れる良い席だった。 座って直ぐに景色を眺め「素敵ですね」と言うミキの嬉しそうな顔を見て俺も満足した。 出来れば窓際で目立たない所を予約していた甲斐があった。 「コ-スを頼んでる。ワインは赤で良いか?」 「お任せします」 アミュ-ズと食前酒が届き食事が始まった。 「美味しいですね」 少しずつ口に運ぶミキの美味しそうに食べる顔を久し振りに見たような気がした。 「ああ、旨いな」 オ-ドブルと頼んでいた赤ワインが運ばれて 「「乾杯」」 チンッと軽い音を鳴らし、口に含むと芳醇な香りが鼻を通り、深い味わいが咥内に流れてくる。 「旨いな」 「はい。濃いって言うか深いって言うか飲み過ぎちゃうかも」 「飲むのも良いが、食事も味わえよ」 「はい」 ス-プ.ポワソン(魚料理).ソルベ(口直し)と運ばれ赤ワインと会話も進む。 メインのアントレ(肉料理)が運ばれ食べながら 「ミキ、俺と会わなかった休日は何してた?」 「う~ん、ウインドゥショッピングとか、ご飯食べに行ったり?」 拓海君と会っていた事は、何となく言わない方が良い気がして濁してしまった。 それに拓海君との出会いは偶然だし、伊織さんには関係無い事だし……。 伊織さんはあの人の事で……余計な心配は掛けたく無かった。 「そうか。何か買ったりしたのか?」 「ううん、フラフラ見たり、気分転換に出掛けただけだし。伊織さんこそ観光どこに行ったんですか?」 「久し振りの日本だから、あっちこっち連れ回された浅草.軽井沢.お台場とかな。人が多くって俺は疲れたが喜んでいた」 「そうですか。日本に居た時とは、変わってる所も多いから驚いてたでしょうね。何年振りの日本何ですか?」 あの人の事が知りたいから、さり気無く聞いてみた。 「ん~、3~4年?忘れた。スカイツリ-とかお台場とか自分が居た時には無かったり変わっていて驚いてたな」 「日本料理も久し振りに食べたんでしょう?」 「ああ、蕎麦はやっぱり日本で食べる蕎麦が1番とか言ってたし、天丼とかも好きだからな‘美味しい.美味しい’って食べてた。……波瑠の事はもう良い。折角、2人で会ってるんだ、違う話しをしよう」 「はい、すみません。ただ、どの位日本に居るのかなぁって」 聞いちゃいけなかったのかな?最後に、これだけは聞いておきたかった。 「たぶん、今週末には迎えに来ると思う。一緒に日本に来たのが、仕事で立て込んでたから暇を持て余して俺の所に来たんだ。2週間程って言ってたし連絡来る筈だ。寂しい思いさせて悪かったがもう少しだ。済まんな」 「そうですか……寂しかったけど…」 「悪かった」 「いいんです。謝らないで下さい。今まで休日をいつも伊織さんと過ごしてたから」 「そうだな、俺も休日にミキが隣に居ないと変な感じだった。今までミキの休日を全て独占してたんだ、真琴君や沙織も気兼ねなく誘えて喜んでただろう?」 「えっ、あっ、はい」 伊織さん、マコや沙織さん達と出掛けたりご飯行ったりしてると思ってるんだ、確かに最初の方は行ったりしてたけど……。 「それももう終わりだな。またミキの休日は俺が独占するからな、また沙織に睨まれる」 はははは…… 「……そんな事ないと思いますよ」 そこにボ-イが来て「お済みですか?料理下げてもよろしいですか?デザ-トとコ-ヒ-お持ちしますが」 俺は殆ど食べ終わっていたが、ミキの皿には肉料理が小さく刻まれ残っていた。 「ミキ、食べられ無いのか?」 「……ちょっと、もうお腹いっぱいかな?デザ-トとコ-ヒ-は頂きます」 いつも勿体無いと言って、余り食べ物を残さずいつも「美味しい.美味しい」と言って食べるミキにしては、少し変だと思ったが、デザ-トは食べると言うから気の所為か?とも思った。 この時ミキの微妙な変化に気づくべきだった。 デザ-トが運ばれると「美味しい」「このケ-キほっぺが落ちそう」と、いつもの美味しそうに可愛く食べるミキを見て、やはりミキと居ると癒される。 食後のコ-ヒ-を飲み、夏休みどこに行くか?と言う話しになり「海で、またシュノ-ケリングしたい」と言うから、海のある場所に行く事に決定した。 南の島か?思い切って、海外でも良いか? ミキは英語も話せるし……でも外国人は積極的だし……悩む所だ。 どこに行くかは、2人でパソコン検索して探す事になり楽しみが増えた。 こうして久し振りに2人で会えて、疲れていた俺の心に潤いが持たされた。

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