430 / 858

第430話

「伊織~、おはよう。朝まで一緒に居てくれたんだ~」 伊織の優しさが嬉しかった。 「ああ、昨日の波瑠は、流石に側に居てやらないと。夜中に目が覚めて何するか解んねぇ~からな」 泣き過ぎて赤く腫ぼったい目が痛々しい。 「ありがとう。伊織が側に居てくれて良かった」 「昨日は、何も食べて無いんだろう?食パンでも焼くから少しは食べろよ」 「……うん」 波瑠の狭い布団から抜け出しス-ツを持ち、パンツのまま部屋着に着替えに寝室まで行き、波瑠の為に目玉焼きとト-スト.コ-ヒ-を用意する事にした。 キッチンで料理とは言えない朝食作りを始めてると、波瑠が部屋から泣きながら出て来た。 「ん、どうした?」 ついさっきまでとは、様子が違う。 「伊織~、アンディから。伊織に代わってだって」 涙を流しスマホを渡され、部屋に戻って行った。 @「アンディ?どうした?迎えか?」 @「イオリ、すみません。仕事でトラブル起きて、今からまた行かないと…。イオリ、ハルの事、もう少しお願いしたい」 @「……そうか。仕事だったら仕方ないが、波瑠が限界かも知れん。トラブルが解決したら、1日も早く迎えに来てくれ」 @「ありがとう。もう、行かないと。ハルの事よろしく頼む」 @「解った。仕事頑張れ」 正直言って ‘マジか~’ と思った。 波瑠が日に日に元気が無くなり、我儘を通り越して八つ当たり気味になったり、落ち込んだりと見てられなくなってる。 それに ‘寂しい’ ‘早く帰って来て’ ‘側に居て’ ‘見捨てないで’ と、俺に対しても束縛と言うか執着が濃くなっていくのが…俺もキツイが……波瑠を見捨てる事など出来ない。 さて、どうすっか? 波瑠はアンディと話して解ってるだろうが、少しは、今日か明日の休日には迎えに来てくれると期待してた筈だ、それが無残にも外れて泣いてるんだろうな、宥めに行くか。 「波瑠?」 声を掛けるが、布団の中で泣いてる様だ。 ガバッと布団から出て、俺に抱きつき大泣きした。 波瑠の背中を摩って黙って愚痴を聞いてやる。 「伊織~…ヒックヒック…アンディ…ンック…来れないって…グッ…ンック…仕事…ヒックヒックヒック…トラブル…も…いい。…ンック…アンディなんて…知らない…ン…グッ…僕には…伊織が居れば…いい…ヒックヒック」 完全に自暴自棄になってる波瑠。 「…波瑠。アンディも仕事なんだ。解ってやれ。トラブルを早く解決して1日も早く迎えに来るって言ってたぞ。その為に休日返上して仕事行ってるんだ」 「…伊織は、アンディの味方なの?…ヒックヒック…僕の事見捨てるの?…グッ…伊織だけは僕の味方で居ると思ってたのに~…ひど…ヒックヒック」 「ばか、俺は波瑠を見捨て無いし、いつでも味方だ。取り敢えず、今はアンディの仕事が無事に終わるのを待つしか無いんだ。それは解るだろ?」 「……うん」 「よし、良い子だ。朝食作ったから食べるか?」 少しは落ち着いた様だ。 「ううん…お腹空かない。暫く1人にして」 「解った、何かあったら書斎かリビングに居る」 客間を後にし、1人で折角作った朝食を食べ、また少し延びた波瑠の滞在に頭が痛くなる思いがした。 その日は、1日部屋に閉じ籠り出て来ない波瑠を気にしつつ、そっとしとく事にし、俺も書斎で仕事をしたりミキと夏休みをどこで過ごすかネット検索し過ごした 次の日も朝食.昼食以外は、部屋で閉篭もる波瑠に声を掛け、夕方に少しでも気晴らしになればと、ドライブに誘い夕飯を食べて帰って来た。 そんな俺の行動に、少し気分が上昇したのか?少しずつ口数も増え笑顔も見せ始めた波瑠に少し安心した。 落ち込む波瑠に気を使い、何だか疲れた休日になった 早くミキとの平穏な生活に戻りたいと思った事は、波瑠には内緒だ。

ともだちにシェアしよう!