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第433話
バスケの試合会場を後にして、拓海君が「今度は美樹さんの好きな事しよう。俺、美樹さんの好きな事とか趣味とか知りたい」
「ん~、俺は服とかアクセサリ-見たりするのが好きだから、ありきたりだけどウインドゥショッピングかな?趣味って言うか、アクセサリ-とか小物を作ったりするのが好きなんだ」
自分の好きな事を知って貰って、今度は相手の好きな事を知るって良い考えだなと思った。
「じゃあ、このままフラフラしませんか?で、良さそうな店あったら見て回ろうよ」
「うん」
また電車で移動して、流行りの店が立ち並ぶ所を2人でブラブラし、小物やアクセサリーを見て俺は凄く楽しかった。
「そろそろ夕飯食べません?」
「そうだね。どこ行く?何食べたいの?」
「ん~そうだなぁ。美樹さん、余り食欲無いんでしょ?だったら、また居酒屋で色々摘んだ方がたくさん食べれるんじゃない?居酒屋行こうよ」
「……いいよ」
俺の事を考えて話してくれる拓海君の優しさを感じてまた居酒屋に2人で行く事になった。
半個室の居酒屋で、隣との仕切りが高いから気にせず話せた。
「「乾杯~」」
今日の1日を振り返って、映画の話しやバスケの試合の話しをして盛り上がりお酒も進む。
拓海君はお酒だけじゃなく、俺が食べられそうなツマミを皿に乗せ ‘食べろ’ と促す。
食べて飲んで楽しい話しをしていく内に、いつも1~2杯でセ-ブしていたお酒が、今日はどんどん飲んでいってしまった。
少し酔ってるかもと自覚はあった気がする。
「拓海く~ん。楽しかったなぁ~♪」
「そう、良かった~。それより大丈夫?いつもより飲んでるけど」
「うん、大丈夫.大丈夫。拓海君も飲んで~」
そう言ってる美樹さんだけど、やはり食欲も無いんだろう、少ししか食べず飲んでばかりいるのが気になった。
やはり今日は変だ。
心ここにあらずって感じでボ-としてたり、それに今もだ、何度か飲んだ事があるけど、こんなに飲む美樹さんは初めてだ。
「飲んでますよ。俺ばっかり食べてるから、ちゃんと食べて下さいよ。ほら」
この間のパンケーキのお返しとばかりに、唐揚げを口元に持っていくとパクッと口に入れ「美味しい~」と可愛いく笑う。
その顔見たさにポテト.焼き鳥.枝豆と口に運ぶ。
「拓海く~ん、そんなに食べられな~い」
「あっ、ごめん.ごめん。つい可愛くって」
「な~に?可愛いって~、俺、全然可愛くな~い」
拗ねてる所がマジ可愛い~し、酔って色っぽくなってるし……。
「ごめん.ごめん」
グビグビ飲む美樹さん、大丈夫か?
「拓海く~んの想い人って、どんな人?」
不意打ちで聞かれ困った。
「え~と、前にも話したけど、年上で男にしておくのが勿体無い位に綺麗な人で、でも会うと可愛い所があって」
「へえ~、そんな人いるんだ~」
あたなたの事ですよ。
「俺も初めは驚きました。こんな人居るんだって」
「ふ~ん、でも、拓海君に想われる人は幸せだね」
「何でですか?」
「だってぇ~、今日も思ったけど~、一緒に楽しもうとするじゃない?それにお互いの事知り合おうとする所も良かった」
もしかして少し脈あり?
「ん~じゃあ、初デートは合格点?」
「うん.うん。合格.合格。俺、凄~く楽しかったから」
「良かった~」
そろそろ聞いても良いかな?美樹さんもかなり飲んでるし話し易いかも。
「ねぇ、美樹さん。何か今日、声掛けてもボ-としてた時あったけど、何かあった?」
俺が聞くと泣きそうな顔になり、グビグビ飲む美樹さんを見て、やはり何かあったんだと思った。
「……俺、男の恋人居るって言ってたじゃない……今、その人の所にアメリカから……知り合いが来て2週間程会ってなくって……」
「うん、それで」
ゆっくりと詰まりながら話す美樹さんの話しを黙って聞いていた。
拓海君にあの人と始め会った時.電話での事.2人をマンション前で見た時の話.ホテルから帰って行った話を掻い摘んで話した。
話しながら泣きそうになるのを飲む事で誤魔化して、話してる内に本当は、誰かに聞いて貰いたかったんだと思った。
「でねぇ…その人と…どんな関係なのか?なぜ、伊織さんの部屋に泊まらせないといけないのか?俺には会わせられない人なのか?とか色々考えたら悩んじゃって…」
一気に今までの事を話した。
それまで黙って聞いていた拓海君が口を開いた。
「飲み過ぎですよ」
「いいもん、今日は飲む~。嫌な事忘れる~」
「まあ、俺が居るから良いけどね。それでさっきの美樹さんの話しですけど、それって話し聞いてるだけだと……美樹さんには酷だけど…昔の恋人なんじゃないの?訳は知らないけど、わざわざたくさん泊まるホテルも有るのに頼ってくるなんて、未練が有るんじゃないの?どうして、美樹さんの恋人も部屋に泊まらせるのか?俺には解んないけど。俺だったら恋人居るから.誤解されたく無いから泊まらせ無いけどね。……それって…焼け木杭に火がついた感じ?」
俺の話しを聞いて堪らなくなったのか?お酒をグビグビ…飲む美樹さんが、何だか可哀想になった、こんな可愛い人を悲しませるそんな男はやめた方がいいと、口から出そうになるのを堪えた。
「……そう…かな?…やっぱり…そうだよね。でも、何か事情があるんじゃないのかって…でも、俺もそうじゃ無いのかと…ずっと思ってたけど…認めるのが怖かった」
「ま、美樹さんの話しだけ聞くとね」
それでもまだ恋人の事を庇う美樹さんが健気に思った
「……もう良い。拓海君に聞いて貰って…少しスッキリした。もうこの話しはやめよう。折角のデ-ト何だから楽しい話ししよう。何か、なぁ~い?」
「じゃあ、大学のダチの話しでも良い?」
「うん」
それから俺は成る可く面白い話しをする様にし、美樹さんもクスクスクス…と笑い.飲み、楽しい時間にする様に心掛けた。
拓海君に今までの話しを聞いて貰って、拓海君の意見に認めたくなかった現実を突きつけられて、それを忘れる為にいつもよりお酒を飲み過ぎてしまった。
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