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第438話

結局、散々悩んで結論は出なかった。 伊織さんの事は愛してるし、ずっと側に居たい。 でも、自分のしでかした事を考えると……。 そんな日々が続き、金曜日の夜に拓海君から電話があった。 「会って話がしたい」 真正面から向き合う拓海君に逃げてばかりいる自分が恥ずかしい。 俺も拓海君に会って、自分の気持ちを包み隠さず話すつもりになった。 午後に待ち合わせて「2人っきりで話しがしたい」と言う拓海君の後をついて歩きカラオケボックスに今いる 待ち合わせ場所で会った時も歩いてる時も、拓海君はいつもと変わらない態度で接してくるけど、俺の方がどうしても俯き加減になって普段通りに出来なかった 「ごめんね。美樹さん、こんな所で。ここなら誰にも聞かれずゆっくり話し出来るから」 拓海君の気遣いと優しさを感じるけど…顔をまともに見れず俯いていた。 「ううん、大丈夫だよ。気を使わせちゃって、俺こそごめんね」 「……そんな事は良いよ。……それより美樹さん…」 拓海君も俺の態度に不審感を感じたのか?言いづらそうにしていた。 「………何?」 「その…俺とそうなったからって、避けるの止めて下さい」 「………ごめん。……拓海君に対してじゃなく自分に対して…情け無いやらで怒ってるんだ。……俺、拓海君とご飯がてら飲んだ所までは記憶あるんだけど……その後が断片的で……ごめんね、思い出せないんだ。……俺が誘ったんだよね?だって~拓海君…気になってる人がいるし男に興味無いのに……謝って済む事じゃ無いけど……ごめん。出来れば忘れて欲しい」 ‘俺とそうなったからって’ 拓海君の言葉に……決定的だ。 「……美樹さん、謝らないで下さい。……確かに誘ったのは美樹さんからですが、それに応えたのは俺ですそれに本当に嫌なら、俺も拒めば良かったんですからこの事に関してはお互い様です、美樹さんだけが悪いんじゃ無い」 「……でも…俺が誘わなければ……」 「……美樹さん。……俺の気になってる人って……実は……美樹さんです。だから…俺は後悔どころか寧ろ嬉しかったです」 「えっ嘘! ……拓海君の気になってる人って、俺の事?」 拓海君の告白に驚いて顔を見た、そこには拓海君の真剣な顔があった。 俺の腕を掴んで真剣に話す拓海君。 「美樹さん! 嘘で男とそうなれると思ってますか?好きな相手じゃなきゃ勃ちません。美樹さんを放って寂しい想いさせる彼氏なんか別れて俺と付き合いませんか?直ぐに好きになれとは言いません、付き合っていく内に好きになってくれれば良いです。俺……美樹さんに俺の事を好きにさせる自信あります!」 ギュッと掴む腕の力に真剣さを感じた。 「……ありがとう、こんな俺を好きになってくれて…でも、俺には……ごめん。拓海君の気持ちには応えられない。拓海君の事は好きだよ、一緒に居て楽しいし友達みたいな弟みたいに思ってる」 真剣な拓海君の気持ちに、俺も正直に話した。 「俺、諦めません。俺の事嫌いなら…仕方無いと思うけど…少しでも俺の事好きなら可能性が有るって事でしょ?それに美樹さん、俺とそうなって何食わぬ顔で彼氏と付き合っていけます?美樹さんの性格なら無理でしょ?彼氏の方も元彼かなんか知らないけど、ずっと一つの屋根の下で生活してて何も無い訳無いじゃないですか?美樹さんも薄々解ってるんでしょ?あっちはあっちで上手くやってるなら、別れて俺と付き合えば良いじゃん。俺、美樹さんに寂しい想いさせないから絶対!」 拓海君の話す内容に、俺の心の奥に塞いでいた気持ちをはっきり言われ、伊織さんへの信じる気持ちが揺らいだ。 「……そうかも知れないし、そうじゃ無いかも知れない。伊織さんがはっきり言わないし帰国するのは確実らしいから、それまでの期間限定なのかも知れないけど……今は伊織さんの事をどうのこうの言える立場じゃないから」 「じゃあ、美樹さん彼氏とは、どうするつもり何ですか?」 「……拓海君との事があってからずっと悩んでた。……俺、前に ‘浮気する様な人とは付き合えない’ って言った事あるんだ。まさか自分がそうなるなんて……だから自分がされて嫌な事は出来ないし、拓海君が言う様に俺……何食わぬ顔で黙って付き合う事は出来ないと思ってる……けど…別れたく無いのも本当なんだ……狡いんだ俺」 「美樹さんは素直って言うか、正直過ぎるんですよ、そこが良い所なんですけど。そんな気持ちなら黙っていても上手くいくわけ無い! 俺と付き合う事を前向きに考えて下さい! はっきり言ってあの夜の美樹さんが忘れられない!」 腕から両肩に手を置かれ、俺の目を真っ直ぐに見つめ話され、あの日の事を言われ何も応えられなかった。 こんな事を拓海君に言わせて、俺がいけないんだ。 「…………」 「美樹さん!」 不意に顔が重なって唇を奪われた。 閉じていた唇を無理矢理舌が捻じ込まれ、思わず舌の侵入を許した。 逃げる舌を追う様に咥内を貪られ、熱い情熱的なキスに頭がボ-ッとなり始めた。 拓海君の背中に手を回そうと、鈍い動作で腕を上げた

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