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第439話

情熱的なキスに酔いしれ、背中に回そうとした手にハッと我に返った。 そのまま背中をドンドン…叩くけど、キスを止めない拓海君の髪の毛を引っ張って、やっと唇が離れた。 「はぁはぁはぁ…」 「この間の夜にキスなんて何回もしてるのに、今更でしょ?」 「拓海君!」 ガバッと俺を抱きしめて、悲痛な想いを俺の耳元で囁く。 「美樹さんは俺の理想の人だ。この間美樹さんが ‘この世界に何億人も居るのに出会えるのは一握りで、その中で好きな人に出会えるのは嬉しい事だ’ みたいな事を言ってた意味解りました。彼氏と別れて俺を選んで下さい。美樹さんが寂しい時に側に居たのは俺です。俺なら美樹さんに寂しい想いはさせません。ずっと側に居ます…だから俺を選んで」 必死さが伝わる懇願とも思える言葉に、俺はこのまま流されちゃいけない、拓海君の真剣な想いにちゃんと考え無いと。 「……拓海君」 「お願いだ。俺を選んで」 抱きしめていた腕を離させて、拓海君の目を見つめた 「拓海君の気持ち伝わったから……だから1度きちんと考えさせて。ごめん、今日は帰るね」 このままだと拓海君の情熱に流されそうで.負けてしまいそうで、冷静になりたかった。 「約束して下さい、俺の事を真剣に考えてくれるってこのまま逃げたりしないって」 「……逃げないし避けたりもしない。拓海君には感謝もしてるし……それに恋人とかの前に、拓海君の事は好きだよ…それは本当の気持ちだから」 俺の言葉に悲痛な顔から、やっと拓海君らしい顔に戻った。 「解りました。俺の想いは全てとは言いませんけど、伝えたつもりです」 「……うん」 「必ず連絡下さい。急がないとは正直言えません。最後に美樹さん、本当に好きです。俺の理想です。早く俺を選んで下さい」 「……きちんと考える。ごめん、必ず連絡するから、今日は帰るね」 拓海君から離れて、鞄を持ちカラオケル-ムから出た。 カラオケボックスを出て駅に早足で向かう。 どうしてこんな事になったのか? 拓海君の想いに気付きもしないで、のうのうと会っていた。 伊織さんと会えないからって…1人で部屋に居たく無いからって…拓海君を利用してたんだ。 いつも爽やかな拓海君にあんな顔をさせて、俺は……バカだ。 責めて拓海君の気持ちに真剣に応えよう。 拓海君の情熱的な真剣な想いと伊織さんへの罪悪感とで、また考える事が増え頭はいっぱい.いっぱいだった 絡みついた糸がこんがらがった気がした。 ガチャッ。 美樹さんが出て行ったドアを見つめて、俺の気持ちは言ったつもりだ。 全ての気持ちを言えたかどうかは、必死で覚えていない。 あの日から、少し避けていた様な美樹さん。 ‘やっと会える’ と、このまま何も言わずにいたらこのままフェ-ドアウトしてしまうと、会う前から気持ちを伝えるつもりで来た。 年も違うし同じ学生と言う訳では無い、たまたま出会っただけだ、そのくらい美樹さんとは細い繋がりで、いつ切れてもおかしくない。 美樹さんは、あの日の夜の事は覚えて無い.だから忘れて欲しいと、伝えに来たんだろう。 そんな事はさせない! 俺の方は酔って居ても、美樹さんの柔らかい唇.白い肌.可愛い喘ぎ声.色っぽい姿.艶のあるイキ顔と、全て覚えてる。 それだけじゃ無い。 美樹さんの普段から可愛い仕草や庇護欲を唆る放っとけない所がある所も魅力だ。 1番側に居て、もっともっと色んな美樹さんを知りたいその資格が欲しい。 美樹さん、どうか俺を選んで! 膝の上で握りしめた手に力が入った。

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