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第443話

「もし、あの状態の波瑠にミキを会わせたら、ミキに攻撃してくるのは目に見えてたしな。ミキも波瑠とどうにか仲良くなろうと気を使うだろうし。俺も波瑠とミキが居たら、どうしてもミキを優先してしまう、そうなれば波瑠は俺を盗られたく無いと、どんな事するか解らん。波瑠の状態が良い時に紹介しようと思ったんだ。その方がミキを俺達の家族として受け入れ易いと考えた。話が長くなったが、そう言う事だ」 クスン…クスン…堪らず泣き声が出た。 「ミキ、泣くな。本当に優しい奥さんだ。もう、重い話しは終わりだ。これから俺のマンションに久し振りに過ごしませんか?奥さん」 重い空気に軽くしようと話す伊織さんに俺は罪悪感と後悔で、このまま知らない振りで一緒に過ごせる事が出来ないと思った。 伊織さんの顔を見れないし、もう無垢のままで伊織さんの胸に飛び込んでいけない。 もう……一緒に居るのは…無理かも。 また涙が出てきた。 黙ってる俺の頭を片手運転しながらポンポンする。 「如何しますか?奥さん」 「……ごめんなさい。この後…マコと会う約束してて」 「……そうか。まあ、今後は、またミキの休日は俺が独占するからな。約束してるなら今回は仕方無い。じゃあ、送る」 「すみません」 「謝るなって」 「……はい」 俺は複雑な想いでマコのマンションまで送って貰った 本当はマコと約束して無かった。 早くマコに会って、何もかも打ち明けてしまいたかった、助けてマコ。 そして心の中で ’ごめんなさい、伊織さん’ と何度も誤った。 伊織さんにマコのマンション前で降ろして貰い、伊織さんの車を見送った。 車の姿が見えなくなると同時に直ぐにマコの部屋に急いだ。 ピンポン♪…ピンポン♪… この時間なら祐さんはもう仕事行ってるはずだと、何度も逸る気持ちでチャイムを押した。 「どなた~?」 「マコ。俺、ミキ」 マコが玄関ドアを開けて顔を見たら、また涙がドォ~と溢れ出てきた。 「何.何?どうしたのミキ?」 「マコ.マコ~」 マコの小さな体に抱き着いた。 「兎も角、部屋に入って」 マコに促されてソファ-に座ってヒクッヒクッ……と泣き出した。 心配そうに見つめるマコ。 「どうしたの?何かあった?成宮さん?」 顔を横に振って話せ無かった。 暫く俺が話せる状態になるまで待ってくれるマコ。 「もう落ち着いた?コ-ヒ-でも飲んで、それからゆっくりで良いから話して」 冷めたコ-ヒ-を飲みポツリポツリ……話し始めた。 初めて波瑠斗さんとの出会い.電話.ホテルでの事.拓海君との出会い.拓海君と会って救われていた事や相談事.一夜の過ちと告白.今日伊織さんから波瑠斗さんが弟と紹介された事.俺の後悔と罪悪感を泣きながら詰まりながら全部話した。 マコは黙って聞いていたけど、拓海君と浮気した事だけは驚いていたが、何も言わず最後まで聞いてくれた 「マコ~、俺どうしたら良いか解んない。俺が伊織さんを信じ切れなかったから……ヒクッヒク…さっきまで伊織さんと一緒だったけど…ンック.ヒック…何も知らない伊織さんと一緒に居るのが心苦しくって…。マコの所に…ヒックヒック…助けてマコ。どうすれば良い?」 「まず確認するね。ミキは成宮さんの事は愛してるの?」 「もちろんだよ! 愛してるに決まってる!」 「うん、解ってる。僕から言わせれば、成宮さんは今のミキの状況を知らないんでしょ?だったら、わざわざ正直に言わなくっても良いんじゃ無い?ミキも成宮さんと別れて、その拓海君って言う子と付き合うつもり無いんでしょ?だったら、ミキもその事は忘れなよ」 「そんな…伊織さんを裏切ったまま知らない振りで付き合う事出来ない。どうしても罪悪感が…。伊織さんと別れて拓海君となんて…」 俺の頭を撫で、マコが解ってるって顔で話す。 「ミキの性格じゃあそんな事無理だって解ってるけど……でもね、全て何でも正直に話せば良いってもんでも無いんだよ。成宮さんを失いたく無いなら、少しは狡くっても良いと思う。その分尽くせば良いんだから…ね」 「でも……俺…一緒に居るのが苦しい」 「今がそうでも時間が解決してくれるよ?」 「俺、伊織さんに顔向け出来ない事をして素知らぬ顔…やっぱり出来ない。別れたく無い……けど……」 「じゃあ、正直に成宮さんに打ち明ける?成宮さんなら好意があってシタ訳じゃ無い、酔った勢いの過ちと許してくれるかも知れないよ?だって、ミキには記憶が無いんでしょ?」 「確かに記憶には無いけど…断片的に人肌の温もりとか…。マコの言う通り、伊織さんなら許してくれるかも知れないけど……俺が無理かも、伊織さんを裏切った自分を許せない!」 「そんなに自分を責めないで。元々、成宮さんがミキを不安にさせて寂しい想いさせたんのが悪いんだから」 「ううん。俺が伊織さんを信じ切れ無かったのが悪い! 伊織さんは何も悪く無い!俺が……」 また涙が溢れ出てきた。 「愛してるのに別れるの?辛いよ?」 「解ってるけど…そのままじゃ居られない。別れてもずっと愛してる。俺に ‘ミキは家族だ’ って言ってくれたのは、伊織さんが初めてだった。離れても、俺はずっと愛し続ける」 「もう、ミキの中では決めてるんだね?成宮さんとも別れて、その拓海君って子とも付き合わないって事でしょ?」 「……うん。ずっと迷ってたけど…1人になる。伊織さんの顔を見ると、やはり離れられなくって言えるか……」 「直ぐに言わなくっても。今日、色々解ってミキも罪悪感に囚われてるんだから。ね、少しだけ冷静になる時間を過ごして、それでも無理なら、ミキの好きな様にしなよ。僕は出来れば成宮さんと別れないで欲しいけど…あの人ならミキを託せると思ってる…でも、どんな形になっても僕は最後までミキの味方だからね」 「うん…うん。マコ、ありがと。マコが親友で良かった。ありがとう」 マコの言葉が嬉しくって、マコに抱き着き泣いた。 俺の苦しい想いも全てをマコに話して、俺は……自分のするべき事を決めつつあった。

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