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第446話
あ~、やっとミキと久し振りに休日を過ごせる。
何だか会う為だけなんだが、この日まで凄く長く感じた。
もう、部屋に着いてるだろうか?
ミキの手料理も久し振りに食べれる。
待ちに待った金曜日の夜。
少しの残業で済ませて、足取りも軽くウキウキとマンションへの道を歩いていた。
「ミキ?」
玄関から声を掛けるが、返事が無い。
まだ、来ていないのか?
リビングからは明かりが漏れて無い事に気付き、がっかりとしながらリビングへの廊下を歩いて、リビングのドアを開けるとやはり室内は暗かった。
「何か、トラブルか?それともミキの事だから、ス-パ-にでも買物してから来るつもりなのかも知れん」
とりあえず寝室に行き部屋着に着替え、コ-ヒ-を入れソファで寛ぎミキを待つ事にした。
伊織さんのマンションに行くのをなかなか決断出来ず業者さんの所で居座り話しを聞いてみたり、何度も見た作業工程を見て時間を稼いでみたり、デパ-トの中をふらふら歩いて過ごしたり、結局、カフェで時間を潰して少しでも伊織さんのマンションに行く事を引き延ばしていた。
「もう、こんな時間?伊織さん、帰ってるかな?」
これ以上は引き延ばせ無いと決心し、カフェを出て伊織さんが待ってるだろうマンションに行く事にした。
最寄りの駅からの道でもまだ往生際悪く、ゆっくりとした足取りで歩いていた。
「この道も歩くのは、最後かも知れない」
伊織さんに何と話すべきか、決められないまま来てしまった。
伊織さんのマンションの前に着いたけど、なかなかエントランスを入って行く事が出来ず、伊織さんの部屋をずっと暫く外から見ていた。
部屋の前で、暫くチャイムを押すかどうするか躊躇っていた。
もう、ここに来るのも最後だ。
伊織さんの顔を見たら、言えるだろうか?
タイミングを見計らって話す?それとも決心が鈍らない内に直ぐに話す?
ここまで来ても考えが纏まらずにいた。
「考えても仕方ないか?もう話す事は決まってる事だし……」
自分の気持ちを奮い立たせ、チャイムを鳴らした。
ピンポ~ン.ピンポ~ン……
「ったく、律儀な奴だ。合鍵持ってるだろうに」
苦笑し、お姫様を迎えにリビングを出て玄関ドアを開けた。
やはりミキが立っていた。
「お疲れさん。入れ」
「…はい、お邪魔します」
これも律儀に挨拶するミキに苦笑する。
いつまで経っても初々しいなぁ~、性格なんだろうなと思いながら、先にリビングに歩いて行く。
「遅かったな?何かトラブルか?最近、やたらと直行や直帰が多いのも関係あるのか?」
ソファに座り話し掛けると、ミキはリビングのドアの所に俯いて立って居た。
どうした?やはりトラブルか?いつもと違う雰囲気がした。
「いいえ、……トラブルはありません」
何かおかしい?ミキの様子が変だ。
もしかして、久し振りの泊まりで緊張してるのか?ミキなら有り得ると思った。
「ん、どうした?そんな所に立って無いで、こっちに座れ」
「……話しがあります」
いつもと違うミキに嫌な予感がした。
「何だ?言ってみろ」
「…………」
この後に及んで言い出せずにいた、ううん違う、言ったら ‘もう…戻れない’ と、決心が揺らぎそうになった
「どうした?いつもと違うな、何かあったのか?」
俯いていても、俺を心配そうな目で見てる事は声で解った。
こんな優しい伊織さんを裏切ったんだ……顔を見る前に……。
「……伊織さん。………別れて下さい!」
それだけ言って玄関に走った。
’別れて下さい’ と、言う事だけが精一杯だった。
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