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第448話

言っちゃた.言っちゃた! 伊織さんのマンションから走って駅に向かって居た。 もう、後戻りは出来ない。 涙が出そうになるのを堪えて、自分の部屋には行かずマコのマンションに行く電車に無意識に飛び乗った。 ドキドキ…ドキドキ…心臓が痛い位に高鳴っていた。 言ってしまった後悔で、いっぱいだったけど……言わずに素知らぬ振りで、伊織さんの側には居られなかった。 これで良いんだ。 伊織さんと別れる事が、俺が浮気した罰だと自分に言い聞かせた。 それでも……伊織さん.伊織さん…側に居て離れたく無いよぉ~と、心の底で思っていた。 これから、どうしよう? 別れても会社で、顔を合わせてしまう。 直行直帰するにも限界がある、やはり…会社を辞めるか?異動届け出すか?だよね。 会社辞めたく無いなぁ~。 少しでも伊織さんの側に居たい、チラっと顔や姿を遠くから見れるだけで良いから…それもダメかな? 伊織さん、素敵な人だから直ぐに良い人出来るだろうな、それを見るのも辛いかも。 マコの部屋に着くまで色々考えてた。 ピンポン…ピンポン… 玄関ドアが開いて、マコが顔を出した。 「どうしたの?ミキ」 「マコ~、マコ.マコ」 マコの顔を見たら、ここまで必死に抑えていた感情が一気に溢れた。 「何.何?兎も角、話し聞くから入って」 「うん」 マコとリビングに行きソファに座り、涙が拭いても拭いても流れてくる。 「ほら、泣いてちゃ解んないよ。ちゃんと話して」 「うん…うっうう…言っちゃた」 「何を?」 「うう~うっ…浮気した事…くっうう…別れるって」 「言っちゃたの?……まあ、ミキの性格上言うとは思ったけどね。でも、伊織さんも悪いんじゃ無いの?ミキを寂しい想いさせて、元彼か解んないけど他の人を構ってたんだから」 「…うぅ…うわぁ~…うぅ…マコ…その人…弟だった」 「はあ?弟?」 マコに、今日伊織さんから紹介してくれた事や生い立ちの事は省いて重度のブラコン.伊織さんの事を学生時代から他の人に盗られたく無いと、嫌がらせをしたり暴言を吐いていたらしいと大まかに話した。 「そうなんだ、腹違いの弟ね。まあ、腹違いと言う事で、大体の家庭の事情が解るけど…。でも、幾らミキを守ろうとしてたとしても寂しい想いや不安な想いさせてたら本末転倒じゃない?まあ、成宮さんの知らない所で、ミキに暴言吐いてたとしてもね。成宮さん、ミキの事大切にし過ぎて傷付けないように守ってるつもりかも知れないけど…ミキだって大人だし…こう言ったら悪いけど……成宮さんに会う前は、色々と修羅場や傷付く事も経験してるんだから。大切にし過ぎて解って無い」 「そこが伊織さんの優しさなんだよ。俺が全て悪い。伊織さんを信じ切れなかったから」 「そんなに責めないで。……でも、本当に別れて良かったの?成宮さん納得した?」 「解んない。浮気しました、別れて下さいって言うのが、精一杯で出て来ちゃったから」 「……それじゃ納得しないよ?きちんと話さないと」 「……解ってる。でも、今日は無理。それだけで、いっぱいいっぱいで伊織さんの顔見れない」 「そうか。じゃあ、ミキの気持ちが落ち着いたら、必ず成宮さんと話し合って。別れるにしても、そんなんじゃあ成宮さんが可哀想だよ。良いね?」 「……うん。会社も一緒だし……辛かったら、辞めようか異動しようかと考えてる」 「それは、ミキが決めて良いよ。僕はミキが決めた事なら何も言わないし、ずっとミキの味方だよ、それだけは、忘れないで」 「うん…うん……うう…マコ、ありがとう」 マコの言葉に、また涙が溢れてマコの小さな体を抱きしめ泣いた。 泣いて…泣いて…泣き疲れた。 さようなら、伊織さん。 きちんと会社では、部下として振る舞うから…この週末で、気持ちを切り替える努力するから…。 今日だけは、伊織さんの笑った顔を思い出して良いですか? 伊織さん.伊織さん……愛してます。 「ただいま~」 「祐さん、お帰り」 「ミキ、来てるのか?玄関に靴があったが」 「しっ。今、寝てるから」 静かにリビングに行き、マコから大まかな話を聞いた 「そんな事があったのか?ミキが浮気ねぇ?信じられないが……伊織、かなりショックだっただろうな」 「うん、成宮さんの事も心配」 「明日、仕事前に電話してみる。ミキも言わなくっても良かったのにな。でも、ミキの性格だと、言わずには居られなかったんだろうな」 「うん、そう思う。祐さん、2人このまま別れるのかな?」 「どうかな?伊織、次第だろ?」 「別れて欲しく無い。ミキ、成宮さんと居る時幸せそうだし……今も別れるって言った事を後悔もしてるみたいで……」 「伊織だって同じだ。今まで本当の意味で、好きになった奴が居ない伊織が、本気でミキを愛してるのは側で見てて解る。誰にも本気にならなかった伊織がな」 「愛し合ってるのに……別れるの辛い」 「その辺も、伊織に聞いてみる」 「祐さん、成宮さんは事の成り行きを何も知らないから…。きちんとミキの口から話させて、2人で話しあって欲しいから…」 「解った。伊織には、俺からは言わないから安心しろ」 「祐さん、お願いね」 「伊織の気持ちを確認するだけだ。本当に世話が焼ける2人だ」 「うん。でも、ミキが頼ってくれた事、僕は嬉しい」 「マコもミキ離れは、いつだろうな?」 「ミキは僕の親友であり理想の人だから……でも僕の1番は祐さんだよ。ミキには、成宮さんが居るから」 「そうだな。その為にも2人の仲を何とかしないとな」 「うん」 「……マコ、そろそろ寝るか?」 「うん。ごめんね。疲れてるのに、こんな話しして」 「いや、大丈夫だが……マコを抱きしめて寝たい」 「いつも布団に勝手に入って来て、寝てるでしょ?」 「まあ、そうだが。そんな話し聞いた所為か?無性に、マコを抱きしめたい」 「ミキを起こさないように、静かに寝室行こう」 「おう」 2人に、俺達の事で心配させていたのは、後になって知った。

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