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第449話
「ッ、イタッ…ぐぅ…頭…痛ぇ~」
ソファで寝ていた体を起こし、ガンガンする頭に状況が判断できず辺りを見回す。
あっちこっちに散らばってる缶ビ-ル.赤ワインが2本横たわっていた。
「あのまま寝たのか、それにしても、凄え~残骸だ」
少し考えて、取り敢えずスッキリさせる為にシャワ-を浴びる事にした。
浴室に行き洗面台の鏡には、酷い顔の俺が映っていた
「酷い顔だな」
フッと見ると、歯ブラシが2本.ミキの向日葵のヘアピン.ピンクの花が付いたヘアゴムがあった。
「……ミキ」
ミキを思い出す品を手に取り、側に居ない事を実感した。
シャワ-を浴び部屋着に着替え、ズキズキする頭で昨日の残骸を片付けていく。
空の缶ビ-ルやワイン瓶とグラスをキッチンに持っていくと、オレンジのエプロンが畳まれていた。
手に取り、ミキの匂いを嗅ぐ。
「ミキ…ミキ…」
キッチンから部屋を見回すと、そこかしこにミキが残した物で溢れていた。
テ-ブルにはアロマ.アクセサリ-の雑誌、キッチンには色違いのマグカップ.茶碗.箸、玄関には貝殻で作った飾り.寝室にはツ-ショット写真.4人で撮った写真、エンジェルの縫いぐるみ。
「ミキの物で溢れてる…」
コ-ヒ-を入れ、ソファで何もせずにひたすらミキが言った言葉を思い出していた。
‘別れて下さい’ ‘浮気しました’
昨日はショックで何も考えられずにいたが、このままでは解決しないと考えていた。
やはり疑問ばかりが頭に浮かぶ。
「情報が無さすぎる」
逆に、自分の気持ちを確認してみた。
別れるか?
いや、それは無い。
別れる事は、俺には初めから無かった。
じゃあ、浮気を許せるのか?
……これに関しては、ミキを信じてたからショックが大きかった。
浮気……か。
散々、自分が学生時代にやってきたツケが、今になってまわってきたようだ。
カッコつけて ‘付き合うのは構わないが、浮気は公認しろ’ なんて、相手に失礼だったのにも程がある。
幾ら、自分は本気じゃないと言え、相手は本気だったんだろう。
本気の相手に浮気されたら、こんな気持ちなんだな。
昔の自分を殴ってやりたい。
ミキから誘ったんだろうか?いや、それは無いな。
相手から強引にか?
ミキもその気があったのか?いや、もしその気があったとしても、ミキなら俺と別れてきちんとしてからスルだろう。
という事は、何らかの事情があったのか?
だんだんとミキの性格を考えて、自分の疑問に答えを見出してきていた。
どんな事情だ?
こればっかりは、考えても解らない。
やはりミキに直接聞くしか無い。
浮気って言ったよな?浮気って言う事は、本気じゃないって事か?
本気じゃない浮気なら……許せる。
前に、ミキとお互い借りてきたDVDを見た時に、家庭破壊の情事ものだったが、ミキは ‘浮気は許さない、信頼出来ません’ と言ってたが、俺はあの時に ‘1回.2回の浮気なら、今後の長い人生をミキと過ごせるなら許すだろう。そのくらいミキの側に居たい’ そう思ったはずだ。
ミキに浮気なんて出来る訳ないと、余りのショックで忘れていた。
なんだ、良く冷静に考えみれば、答えは俺の中ではとっくに出ていた。
別れない!
1度の浮気なら…本気じゃないなら許せる。
答えが出てスッキリしたが、頭では解ってるが心が.気持ちがまだ追いついていない。
少し時間が必要か?
今日.明日で、気持ちを切り替えてやる。
浮気なんて些細な事より、ミキとの別れが辛い。
ミキの性格上、罪悪感で直ぐには別れを撤回しないだろう。
どうやって説得するかを考えた方が良いのかもしれない。
ミキが何と言っても別れない!
愛してるんだ。
万に一つも無いが……別れたとしても、またミキを取り戻す努力をしてみせる。
ミキは俺の者だ!
誰にも渡さない!
俺の中での答えは出たが、まだ疑問や聞きたい事がある。
1度、ゆっくり話しをしないとな。
♪♪♪♪~♪♪♪♪~
夕方に電話が鳴った。
まさかミキか?まだ気持ちの準備が出来て無いと、ドキドキしながらスマホの画面を見ると祐一からだった
半分はガッガリし、後の半分はホッとした。
「何だ、祐一か」
「何だは無いだろう、一応落ち込んでるんじゃ無いかと思ってな」
「聞いたのか?ミキ、真琴君の所に行ってるのか?」
「ああ、昨日から来てる。たぶん今日も泊まるんだろう。話しはマコから大体聞いた」
「そうか、何だって?俺には原因も解らないし疑問ばかりだ。知ってるなら教えてくれ」
「……悪い。マコからミキが話すまで、伊織には話すなって言われてる。マコがミキに伊織ときちんと話し合わないと伊織が納得しないと、説得してたからな」
「そうか、話し合うつもりはあるんだな。取り敢えずは、安心した」
「で、伊織はどうするだ?別れるのか?マコの話だとミキは罪悪感で伊織と一緒に居られないって言い張ってるらしい。一掃、浮気の事が後々痕を引く様なら、別れた方がお互いの為だぞ」
「別れる訳無いだろう! 言われた時はショックだったが……。俺は1回や2回浮気されても俺の所に戻ってきて、その後の人生を一緒に過ごせる事の方が大事だ。今後、俺の人生でミキ以上愛する人は現れない」
「お前の気持ちは解った。お前ならそう言うと思っただが、今回の件でお前に言っとくぞ。お前はミキを大事にし過ぎだ。ミキは守られるだけの奴じゃ無い。お前と付き合う前にも、それなりの経験もしてるんだからな」
「そんな事解ってる! たが、恋人を大切に思って何が悪い!」
「大切にする事は悪く無いが、お前の場合は度が過ぎるんだって。ミキが傷付いても、お前が癒せば良い話だろ?」
「良く言ってる意味が解ねぇ~」
「ま、今は解らなくってもその内解る。ま、いい。お前が立ち直ってる事と別れないって解って充分だ。ま、後はミキとじっくり話しろ」
「なんやかんや言ってありがとな。真琴君にもありがとうって言ってくれ。俺も昨日よりは少し冷静に慣れたが、ミキの話を冷静に聞くにはまだ時間が必要だが、必ず話し合うから安心しろ。仕事前だろ?わざわざ済まん。仕事頑張れ」
「この時間が割とゆっくり話せるからな。じゃあ、またな」
わざわざ心配して連絡くれた祐一に感謝した。
ミキの相談相手になってる真琴君にも。
俺達は良い友達を持った、2人の為にもミキを取り戻す。
それにしても祐一も変な事を話す。
恋人を大切にして何が悪い?
祐一の意味不明な話しの意味が、後々解る様になるまで少し時間が掛かった。
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