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第470話
「ここで座って、指示してくれ」
キッチンのシンクの側に椅子を用意し、ミキを座らせる。
「俺は厳しいですよ」
「宜しく、先生」
くっくっくっ……
クスクスクス……
顔を見合わせて笑った。
「始めに野菜を刻んで下さい。えっと人参.玉葱.芋ですね。あっ、皮剥いて下さいよ」
「皮剥くのは、俺だって解る」
ピュ-ラ-を使い人参と芋の皮を剥く。
「伊織さん、芋はちゃんと芽を取って下さいね」
「そうなのか?面倒だな~」
「面倒でも! 毒素が有るんですよ」
「解った」
ピュ-ラ-の角を使い芋の芽を取り除く、玉葱の皮を剥き人参をザクザク…切る。
「伊織さん! 大き過ぎ~」
「煮れば一緒だろ?」
「……まあ、そうですけど。人参は硬いから…ま、いっか~」
そして芋、玉葱とまたもや粗く切り、鶏肉を適当に切り鍋に入れた。
「油入れて炒めて下さい。油が跳ねるから気を付けて」
「ん、解った」
言ってる側からバチバチ…と跳ね、驚いた。
「危ねぇ~」
「んもう、だから気を付けてって言ったのに」
それからもミキの指示に従い、何とかカレ-ル-を入れ煮込む所まで俺1人でやった。
「後は、弱火で煮込んで時々様子見て、掻き回して下さいね」
「解った。久し振りに1人でカレ-作った」
「作った事は、あるんですよね?」
「まあな。でも1人だと、レトルトの方が楽だからな。皮剥いたり切ったりと面倒だし。独身男の食事なんて皆んなそんなもんだろ?だが、今は料理上手な奥さんが居るから助かる」
「そう言って貰うと、作り甲斐が有ります!」
「いつもありがとうな」
ミキの側に行き、顎に手を掛け顔を上げ唇にチュっとキスする。
「……伊織さん」
本格的にキスを仕掛けようとすると、顔を手で押さえられた。
「だめ! 料理中です。鍋から目を離さないで」
「解った.解った。先生の指示に従います」
クスクスクス……
「良い生徒さんです」
キスの代わりに頭を撫でられた。
こんな時間をまた過ごせる幸せを密かに感じていた。
20分程煮込んで、キッチンからソファにミキを運び背後から抱きしめた。
「伊織さんが作ったカレ-楽しみです。後は食べる前に、また煮込んで隠し味で焼肉のタレを適当に入れて下さいね。深味が増して濃くが出でるから」
「へえ~、焼肉のタレで?」
「他にも、コ-ヒ-を入れる人やソ-スや醤油とかケチャップとか人それぞれ隠し味は違いますよ。俺も前はソ-スとか入れてたけど、テレビで焼肉のタレを隠し味にしてたの見て俺も最近はそうしてます」
「各家庭の味が出るんだな~。俺達の家庭のカレ-は焼肉のタレが隠し味だ」
「まあ、何入れても結局カレ-の味ですけどね」
「それを言ったら身も蓋も無い」
「伊織さんのゴロゴロ野菜カレ-楽しみ~♪」
「また、2人で作ろうな。何だか慣れない事したから、疲れた~」
ふふふ…
「お疲れ様。ずっと動いてたからね。洗濯してくれたりカレ-作ったり…俺の膝で寝ても良いですよ」
「膝枕か~、いいな」
ミキの背後から膝に頭を乗せ横になる。
「あ~極楽.極楽」
「やだなぁ~、オヤジ臭いですよぉ~」
「オヤジで結構! ミキの膝枕は最高だ!」
俺の頭を撫で、気持ち良さに眠くなる。
「ふあぁ~、洗濯も乾燥機掛けたしな」
「ありがと」
「いや、シ-ツもドロドロだったし、エプロンも凄え~事になってたしな」
撫でてた手を止め、ピシッと軽く叩かれた。
「余計な事言わないで、恥ずかしい~」
「本当の事だろ?ミキの精液と俺の精…」
全部言う前に、今度は手で口を塞がれた。
「もう、寝て下さい!」
顔を見なくっても、赤くなってるミキの顔が予想がつく。
こんな戯れ合いも楽しい~♪
また、頭を撫でられミキが雑誌を見始め、俺は眠気に襲われ、そのままミキの膝枕で寝てしまった。
いつの間にか静かになって寝てしまった伊織さんの寝顔を見て、この懐の広く心優しい人を失わなくって良かったと心から思った。
「ありがと伊織さん。愛してます」
伊織さんの寝顔にそっと呟いた。
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