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第474話

「起きてたか?波瑠」 波瑠って呼んだ瞬間に、ミキの顔が強張ったのが解った。 俺は ‘大丈夫だ’ と言う意味でミキの手を握った。 「珍しい~ね、伊織から電話なんて♪」 「ああ、元気にしてるか?アンディと仲良くしてるか?我儘言って困らせるなよ」 「元気だし、アンディとも仲良しだよ~♪」 「電話掛けたのは、波瑠に言って置こうと思ってな」 「何?」 「俺の優先するべき人は、これからは ‘ミキだ’ って言って置こうと思ってな」 「……何か言われたの?」 「いや、ミキは何も言わないが、何だか様子がおかしかったから俺が問い詰めた。それに空港で波瑠が俺に謝ったのも変だと思ったんだ。始めは俺に迷惑掛けた事かと思ったが、今までも迷惑掛けたとしても謝った事が無かったからな。おかしいとは思った」 「……ごめん」 「別に怒って無いが、ミキは俺の恋人兼家族だからなこれからは波瑠よりミキを優先する。波瑠にはアンディがいるだろ?これからは俺よりアンディに頼れ。もちろん悩みや相談には家族だから聞くし、それは変わらない」 「……うん」 「俺達が家族な事は、何があっても変わらない。これからは波瑠もミキを家族だと思ってくれ」 「……うん。ごめんね。美樹にも謝らないと」 「今、隣に居る。直接言ってくれ」 「……うん」 ミキにスマホを渡すと驚いた顔をして、恐る恐る電話口に出た。 「もしもし、美樹です」 「あっ、美樹?意地悪したり言ったりしてごめんなさい。僕……あの時、伊織しか頼る人が居なかったから……伊織を盗られたり…伊織のスト-カ-だったら、僕が退治してやろうと思って。……ごめん、あの時は伊織を独り占めして、僕だけの事を考えて欲しかったんだ。今まで僕の事を真剣に考えてくれるの伊織だけだったから、それが無くなると不安になって……ごめんね」 あんな事されて恐かった波瑠斗さんが一生懸命に不安だった気持ちを明かし謝ってくる波瑠斗さんが不憫になり、守ってあげたくなる気持ちが生まれた。 伊織さんの手をギュッと握り勇気を貰って話す。 「波瑠斗さん、もう謝らないで。俺も悪い所あったし。伊織さんはあんな風に言ってたけど、今度、波瑠斗さんが困った事や不安な時は俺も伊織さんと一緒に居てあげます。一緒に考えて.一緒に過ごして、波瑠斗さんが1人じゃ無いって不安を解消するようにします」 「……ありがとう美樹。美樹って良い子だね。あの伊織が好きになるのが解った。伊織にも言われたけど……僕とも家族になって」 涙声の波瑠斗さんから ‘家族になって’ って言われて、俺も自然と涙が頬を伝った。 「うん.うん。こちらこそお願いします」 我慢出来なくって、スマホを伊織さんに渡した。 「ま、そう言う事だ。これからはアンディと俺とミキが居る。波瑠は1人じゃないからな。但し、同じ状況なら俺は迷わずミキを優先する。波瑠も大切だが、ミキもそれ以上に大切なんだ、解ってくれ」 「うん、美樹も家族だもんね。僕にはアンディが居るから大丈夫だよ。それに僕達兄弟の縁は切れないしね美樹にも会いたいからアメリカ来る時あったら連絡して」 「ああ、解った。アンディにも宜しくな。じゃあな」 スマホを切り隣のミキの肩を抱く。 俺の肩に頭を乗せ涙を拭き 「伊織さん、ありがとう」 「ああ、俺もきちんとケジメをつけたかったからな。波瑠には悪いがミキを優先にすると言っておきたかった。それに波瑠にもミキを家族と思って欲しい」 「波瑠斗さん……俺の事 ‘僕とも家族になって’って……嬉しかった」 「そうか、良かったな。波瑠にもはっきり言ったし、これで波瑠も俺よりアンディを優先していくだろう。アンディも重度のブラコンに不満だったしな、アンディも喜んでると思う」 「アンディは波瑠斗さんの事大好きなんですね」 「物好きって言うか。波瑠の我儘な所も可愛い~って言うし、波瑠の束縛も好きらしい」 「お似合いなんですね」 「まあな。俺とミキには負けるがな」 クスクスクス……泣くのは治って可愛く笑った。 この笑い顔を絶対忘れない! これからはずっと笑ってるミキを見て居たい! 「俺…伊織さんと出会って本当に良かった。幸せ者です」 ミキの素直な言葉に俺は感激した。 「まだまだ、これからもっと幸せになるんだからな」 「はい。2人で幸せになりましょう」 別れると言う危機も色んな事があったが、前より2人の絆なが深まったと感じた。

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